海と暮らす南紀の人びと④“マグロのまち”那智勝浦町で、旧旅館&長屋を再生した工房&喫茶店を訪ねる
その土地ならではのサステナブルな人、暮らし、取り組みや伝統産業、風景に会いにいく、体感する旅、それがFRaUの提唱する「S-TRIP(エス・トリップ)」です。今回、取り上げるS-TRIPの目的地は和歌山県。1000年以上前から植林をし、森を育て、伐採した木材で建物を修復してきた高野山。世界で2つだけ「道」が世界遺産に登録されているうちのひとつ、熊野古道。SDGsという言葉が生まれるはるか前からサステナブルな営みがあったこの地から、紀伊半島南端部の海沿いの町「那智勝浦町」をご紹介します。
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自然との距離感がちょうどいい
移住者が半数を占めるまち

ゆかし潟/入り江が海と切り離された海跡湖(かいせきこ)。緑多い静かな湖畔は絶好の散歩コース。東牟婁郡那智勝浦町湯川
那智勝浦には淡水と海水が混ざる周囲2.2kmの汽水湖「ゆかし潟」がある。かつて、詩人・佐藤春夫も愛した場所だ。文豪たちが好んだ湖畔沿いをそぞろ歩くと、近くに熊野詣(くまのもうで)の湯垢離場(ゆごりば)として栄えた湯川温泉を発見。歩いて汗をかいたら、ひとっ風呂浴びるのもいい。

茨城県つくば市から移住した古橋治人さんが、老舗旅館を譲り受けて工房兼ショップ「manufact jam」に改装した
ゆかし潟から徒歩7分の場所に佇む「manufact jam」は、木工作家の古橋治人さん(下写真)の工房兼ショップだ。廃業して30年経った大きな旅館を一級建築士の資格も持つ古橋さん自身が改装した。
「以前は茨城のつくば市に住んでいたんです。でも、もっと人が少ない自然のなかでものづくりがしたくて、縁もゆかりもない那智勝浦に来ました」

「定期的な展示会をいっさいやめたことで、自分のペースや季節の流れに沿ったものづくりができるようになった」と古橋さん
この地にすぐ順応し、庭で畑を耕したり、自然を満喫するなどしている古橋さん。こちらに来てから動物の解体技術を習得。店頭にはさまざまな動物の骨が並んでいた。木工以外の技術が、この地でどんどん身についたという。
和歌山はかつて「紀伊国(きいのくに)」と呼ばれていた。木の国が転じたものとされている。昔から木が多く、いまも県土の75%以上が森林だ。とくに県南部は温暖多雨で、木々がよく成長する。
「ここでは都会とは見える階層が違う。これからは木以外の素材も扱いたい」と古橋さん。彼も環境によって新たな生き方に導かれたひとりなのだ。

manufact jam/古橋さんが手がけるキャンドルホルダーやカトラリーに加え、全国からセレクトした生活用品が並ぶ。店の奥にはニワトリが行き来する、のどかな工房。東牟婁郡那智勝浦町湯川1085 http://manufact-jam.com
自然や環境に感謝して
生活を営む人に出会える

IRODORI/フェアトレードのコーヒーやハーブ、スパイスなど、必要な食材を必要な分だけ量り売りする。週に一度、地元農家から有機野菜をパッケージフリーで仕入れ希望者のみに予約販売。東牟婁郡那智勝浦町天満868-7 https://irodori.day
対して、生まれも育ちも和歌山という中村美奈子さん(上写真)は、那智勝浦をもっと盛り上げたいと2022年にショップ、宿、喫茶店の複合施設「IRODORI」をオープン。

取り壊されそうだった古い長屋一棟を買い上げ、自身の手で改装した。当時、近くで建物の解体があると聞くと、たびたび覗きにいっては、つかえそうな家具や建具を譲ってもらっていたとか。

店主でもある中村さんがブレンドしたオリジナルハーブティーは飲みやすいのが特徴。お悩み別にさまざまな種類を用意するが、女性ホルモンのバランスを整えるものが一番人気とか
出産を機に食や環境を学び、県外のフェアトレード商品も知ってもらいたいと国内外のサステナブルな商品をセレクト。

中村さんが長年収集してきたインテリアが並ぶ喫茶スペース。ショップで販売する調味料をつかった、体にやさしい食事も楽しめる
まちを歩けば、自然や環境に感謝して生活を営む人に出会える。那智勝浦はそんなところなのだ。
地元で揚がったマグロをレアカツに!家族経営の和食バー「bodai」

口に含むとサクッとした衣と半レアのマグロの風味を楽しめる看板メニュー「生まぐろ中とろカツ」。朝仕入れた紀州勝浦産のマグロを高温で揚げることで独特の食感が生まれる。

店主・谷亮(たに・あきら)さん(写真右端)と、その親族で運営。和気あいあいとした厨房のやりとりに客の心もなごむ。

他店では見られない稀少な梅酒も豊富に揃える。梅酒好きにはたまらない。
bodai(母大)
生マグロの水揚げ量が日本一の那智勝浦で、とくにおいしいマグロを食べたいなら「紀伊勝浦」駅前にある、この創作和食バーへ。毎朝入荷する生マグロや近海の新鮮な魚介、地場産野菜をつかった旬の和食が楽しめる。東牟婁郡那智勝浦町築地5-1-3 Instagram:@bodaibodaibodai
●情報は、『FRaU S-TRIP MOOK 1200年前からサステナブル 世界遺産のくに「和歌山」』発売時点のものです(2024年10月)。
Photo:Naoki Shimoda Text:Tokiko Nitta
Composition:林愛子
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