海と暮らす南紀の人びと③本州最南端の串本町で、名物・干物の朝食&うすかわ饅頭&牧場ソフトクリームを
その土地ならではのサステナブルな人、暮らし、取り組みや伝統産業、風景に会いにいく、体感する旅、それがFRaUの提唱する「S-TRIP(エス・トリップ)」です。今回、取り上げるS-TRIPの目的地は和歌山県。1000年以上前から植林をし、森を育て、伐採した木材で建物を修復してきた高野山。世界で2つだけ「道」が世界遺産に登録されているうちのひとつ、熊野古道。SDGsという言葉が生まれるはるか前からサステナブルな営みがあったこの地から、本州最南端の海沿いのまち、串本町を訪ねました。
アジアで初めて民間ロケットを打ち上げたまちの“うまいもん”
漁港が点在する串本町の人びとに、おすすめの朝メシ処を聞くと、「おざきのひものに行くとええよ」と声をそろえる。

地元の人たちや観光客においしい干物を味わってほしくて、オーナーの尾崎仁一さんが数年前に始めた「朝ごはん」。いまや串本町に“名物”として定着した。味醂干し(みりんぼし)と塩焼きの2種から選べる
朝8時に「おざきのひもの」に到着すると、すでに数名が並んでいた。店内に入りメニューを見ると「朝ごはん600円」とある。さっそく注文。ほどなくして運ばれてきた朝ごはんは、アジの干物の味醂干し(塩焼きもある)にホカホカの白米、味噌汁、さらに目玉焼きと漬物、これで600円は申し訳ないくらい。アツアツの味醂干しの旨みに、寝ぼけた頭も覚醒する。

創業七十余年の干物店。目の前が漁場のため、獲れたての新鮮な魚から品質のいいものを厳選。魚の旨みを最大限に活かすミネラル豊富な塩をつかう
店の代表・尾崎仁一さんは、「ウチは70年以上、ここで干物をつくってるんです。味醂干しのタレは創業当時からの秘伝のタレなんですわ。目の前が漁場やから、獲れたてのええ魚を選んでますよ」と自信満々だ。

毎日こんな朝食を楽しめる地元の人がうらやましい……そんなふうに考えていると、尾崎さんから「次はどこに行くんや?」と尋ねられた。
「甘いものが食べたいので、『うすかわ饅頭 儀平』さんに向かう予定です」と伝えると、「ああ、あそこか」とニンマリ。尾崎さん自身も、古くからなじみで、おすすめの店なんだそう。

おざきのひもの/和歌山近海で獲れた魚のほか、全国から選りすぐった鮮魚を、職人がすべて手開きで1枚ずつ加工する干物店。店頭には多種多様な干物が並ぶ。買ったらその場で自宅に発送できるのも魅力だ
「甘うない饅頭があってもええやないか」

白い皮をまとった「うすかわ饅頭(まんじゅう)」は、串本町の有名な景勝地「橋杭岩(はしぐいわ)」の形をイメージした。代々こだわり続けた“甘さをおさえたあん”をいまも守っている
儀平に着くと、朝9時だというのに地元のおばちゃんたちが集まっていてワイワイ、ガヤガヤ。「ウチは饅頭20個ね」「ウチは30個もらうわ」など、結構な数を注文している。何かあるときは、ここで和菓子を買うのが串本のスタンダードらしい(もちろん1個でも買える)。

「2代目だった祖父・儀助が、『甘(あも)うない饅頭があってもええやないか』と大正時代に考案したのが、酒種(さかだね)生地にこしあんを包んだ薄皮饅頭です。いまでこそ甘さ控えめのお菓子は多いんですけど、100年前は甘ければ甘いほどいいとされた時代。ずいぶん時代を先取りしてたんやなと思います」と工場長の丸山正雄さん。

アジアで初めて民間ロケットを打ち上げた串本町。火を噴くロケットに見立てたアイスキャンディのような棒つき饅頭「そらのかけはし」(1本380円)は丸山さんが開発
うすかわ饅頭のほか、串本町でアジア初の民間小型ロケットが打ち上げられたことを記念し、ロケット饅頭「そらのかけはし」も発売。なんとも愛らしい姿で、星のソムリエ(準)認定の丸山さん渾身の和菓子だ。

うすかわ饅頭 儀平/明治26年創業の串本町を代表する和菓子店。「薄墨色」と表現される淡い色のあんは、じっくり炊いた北海道産小豆に白いんげんを加え、スーッと溶けるような口当たりに仕上げている
串本町のおすすめスポット
その後は、吉野熊野国立公園のシンボル、双島(そうしま)へ。海洋植物や魚類が多く生息する島で、のんびり釣りをするおじいちゃんの姿が印象的だった。夕日がとくに美しいらしいので、夕暮れどきに訪れると心洗われる時間になるだろう。

双島
多様な海洋生物が生息する双島は、磯遊びや釣りの絶好スポット。

パーラー搾乳室や処理プラントをもつ牧場が、そこでつくった牛乳を原料にしたソフトクリームを販売。年中提供。牛乳を加工する現地で食べられるソフトは、実は全国でも珍しい。季節ごとにマンゴー、イチゴなど、さまざまなフレーバーのミックスソフトクリームが登場する。牛乳やカフェオレの直売も行う。
尾鷲牧場直売所
「牛乳屋さんがつくる絶品ソフトクリームがある」と、ことあるごとに地元住民にすすめられた、牧場直営のソフトクリーム店。濃厚ながらサッパリした後味で、ついまた食べたくなる味わい。
●情報は、『FRaU S-TRIP MOOK 1200年前からサステナブル 世界遺産のくに「和歌山」』発売時点のものです(2024年10月)。
Photo:Naoki Shimoda Text:Tokiko Nitta Composition:林愛子
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