100年前から高級リゾート! 箱根の底力を実感する、プライベートヴィラでの“リトリート”
都心から最も近いリゾートとして、人びとに癒やしのひとときを提供してきた箱根。温泉に富士山の絶景、芦ノ湖や大涌谷など、見どころ満載の鉄板観光スポットです。そんな箱根の大自然を五感で感じるべく誕生したのが、「箱根リトリート fore&villa 1/f(フォーレ&ヴィラ ワンバイエフ)」。日常の喧噪から離れた森の中に佇むリゾートで、究極のウェルネスステイを体感してきました。
皇族や文人、財界人が愛した大正ロマンあふれる名旅館「俵石閣」
東海道の要衝として栄えてきた箱根は、国内有数の温泉リゾート。都心だけでなく、日本国内外から多くの観光客が訪れる一大観光スポットだ。富士箱根伊豆国立公園に位置し、四季折々の移ろいを感じられるのも大きな魅力。そんな箱根連山・仙石原の静かな森に佇んでいるのが、37室のホテル棟と18棟の独立コテージからなる「箱根リトリート fore&villa 1/f(以下、箱根リトリート)」だ。
箱根から御殿場に抜ける国道138号線沿いにあるこのリゾートは、北欧をイメージしたデザインが特徴。快適かつモダンなインテリアが好評で、欧米からを中心にインバウンド客も多いという。
チェックインを済ませ、屋外のフリースペース「フリーバード&テラス」へ。深い緑に囲まれた開放的なウッドデッキと、ブックライブラリーを備えたくつろぎのスペースがあり、季節ごとのウェルカムドリンクやフードが用意されていた。暑さの残る時期は手づくりシロップをつかったかき氷、寒い季節にはホットワインなどが登場するという。
夏のかき氷。イチゴ×ラズベリー、マンゴー×パッションフルーツ、抹茶ミルクのほか、リキュールを組み合わせたものなどを用意。写真のグラスホッパー&アイスは、ミントとカカオにミルクを加えたさわやかなかき氷カクテル
緑あふれる敷地内を散策していたら、北欧モダンな建物群とは異なる、日本の伝統的な建物が見えてきた。訊けば、こちらは約100年前に温泉旅館として建てられた数寄屋づくりの「料亭 俵石(ひょうせき)」。そうそうたる要人たちが逗留した優雅な和室で、本格的な懐石料理を味わえるそうだ。
大正3年(1914年)に創業し、財界人や文人が多く利用した箱根の名門旅館「俵山閣(ひょうせきかく)」を改装。当時の客室をそのまま使用、隠れ家的な個室や庭園を望む広間で食事が楽しめる
大広間の美しく磨き込まれたガラス窓から、青々とした庭園の木々が一望できた。逗留した往年のセレブたちも、秋の紅葉や冬の雪景色を愛でたのだろう。聞こえてくるのは、木々が風にそよぐ音や鳥のさえずりのみ。大正時代にタイムスリップした気分になれる、非日常空間が広がっていた。 箱根リトリートの1万5000坪の敷地には、それぞれ趣の異なる18棟のヴィラが点在している。ガラス張りの天井から星空が眺められるヴィラやグランドピアノがある部屋、本格的なキッチンとダイニングルームがある部屋、開放的なテラスつきの部屋など、個性豊かなヴィラぞろいだ。共通点は、広々とした独立型のログハウスであることと、簡易キッチンや暖炉、露天または半露天の温泉が完備されていること。テレビなどは設置されておらず、暖炉の火や温泉の水音、周辺の木々など自然の「ゆらぎ」のなか、心身をリセットできる。
独立したヴィラが点在。敷地内はカートで移動できるが、森の中をのんびり歩いて移動するのも心地いい
温泉スイート「いぶき」。ヴィラはいずれもゆったりとした設計で、インテリアはシンプルかつスタイリッシュ。Wi-Fi完備で、ワーケーションにも最適だ
めったに味わえない「何もしない贅沢」に浸る
専用ダイニングルームとキッチンつきのヴィラ12号棟に滞在すると、地元産の食材を片山和彦料理長が目の前で調理してくれるシェフズテーブルが堪能できる(3日前までに要予約)。
「箱根は山のイメージが強いかもしれませんが、じつは海が目の前という食材の宝庫。こちらにきてからまだ数ヵ月ですが、小田原、熱海、沼津から幅広い魚介が入ることに驚きました。足柄エリアは平坦で畑もあり、やわらかく旨みが濃厚な箱根西麓牛も有名。山海の旬の恵みをつかって、コース料理を提供しています」(片山料理長)
小田原ヒルトンや横浜の老舗店でシェフを務めてきた片山シェフ。デザートの仕上げでは、ライトを消してフランベ! 立ち上る炎にテンションが上がってしまう
フォアグラとトリュフが香る和牛ステーキは、文字通りとろけるようなおいしさ
活きアワビをつかったセビーチェにシマアジとリンゴのミルフィーユ、タラバガニとロブスター入りの濃厚コーンポタージュ、カツオのタタキ風に和牛フィレ肉とフォアグラのステーキと、めくるめく美食の数々が登場。専用バトラーが注いでくれるワインも最高だった。
コース料理でココロもカラダも満たされた後は、静寂に包まれたヴィラでのんびりと過ごす。室内の暖炉に火をつけ、ぼ〜っと眺めていると、あっという間に時間が過ぎていった。これこそめったに味わえない、「何もしない贅沢」だ。
ちなみに“リトリート”とは、日常から離れて心身を癒す過ごし方をさす。箱根リトリートではその名のとおり、部屋つきの半露天風呂で木立を眺めながら温泉に浸かり、ふかふかの羽毛布団で眠りにつくという、最高のリトリート体験が待っていた。
箱根の名湯をたたえた大浴場は、敷地の奥深くに佇む。木々の緑が映り込む露天風呂は、「もう出たくない、ここで暮らしたい!」とつぶやいてしまうほどの心地よさ
「料亭 俵石」での朝ご飯の一部。網代(あじろ)のアジの干物、小田原のかまぼこ、九条ネギの味噌汁、がんもどき、料亭のだし巻き玉子、御殿場(ごてんば)産のコシヒカリと、日本人のDNAに訴えかける鉄板のラインナップ
ぐっすり眠った後は、びっくりするほどにぎやかな鳥のさえずりとともに起床。さわやかな冷気のなか敷地奥の大浴場に歩いていき、貸し切り状態で露天風呂を満喫する。あたたまったところで料亭の純和定食をいただき、食後のほうじ茶でほっこり。これから都内に戻らなければならないなんて、とても信じられない気分だ。
箱根には何度も来たことがあるけれど、ここまで徹底したプライベート空間で過ごしたのははじめて。大自然と良質の温泉、地産地消グルメと、箱根の底力をあますところなく味わえた、得がたいひとときだった。
Photo & Text:萩原はるな