Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

誰もが、気兼ねなく、どこでも行ける! 「次世代モビリティ」がつくる未来【後編】
誰もが、気兼ねなく、どこでも行ける! 「次世代モビリティ」がつくる未来【後編】
TOPIC

誰もが、気兼ねなく、どこでも行ける! 「次世代モビリティ」がつくる未来【後編】

東京・お台場の日本科学未来館(以下、未来館)など、臨海副都心で開催中の「未来を乗りにおいでよ。次世代モビリティのまち体験」イベント(東京都とDIC協議会が主催)。1月26日には小池百合子知事も参加、4つの次世代モビリティのうちの2つを興味津々で体験していました。

ーー前編はこちらーー

“走るベンチ”で、ゆったり観光

前編でお伝えしたとおり、小池知事が未来館の浅川智恵子館長と並んで試乗、絶賛していたのが、“走るベンチ”ともいうべき「PARTNER MOBILITY ONE」(以下、PMO)だ。

久留米工業大学インテリジェントモビリティ研究所、バーソルクロステクノロジー、Le DESINEの3者が共同開発したこの小型自動運転モビリティは、公園などで見かける何の変哲もないベンチに車輪がついただけ……のような形。だが、その内部には電子地図などの最新テクノロジーが詰め込まれていて、あらかじめプログラミングしておけば、GPSなどで自らの位置を把握し、目的地までゆっくり連れていってくれる。

筆者が取材した日はPMOの後を、車イス型のモビリティ「PiiMo(ピーモ)」3台がついていく「PARTNER MOBILITY ONE with PiiMo」なる試乗イベントが開かれていた(下写真)。ピーモは、パナソニックなどが開発し、実証実験を進めている「追従型ロボティックモビリティ」で、先導車に自動的に隊列をなしてついていく、安全かつ効率よくグループの移動をサポートするモビリティなのだ。

高齢者や足の不自由な人などが集団で移動する際に便利なPMOと、車イス型の追従型モビリティ、ピーモの隊列

最大でPMOに3人、追従するピーモ3台にそれぞれ1人ずつの計6人で試乗できる。筆者はPMOに乗ってみた。ベンチ型のコイツは方向転換が苦手なのかと思っていたら……いやいや、やたらとスムーズ。走行スピードも緩やかで、景色を見ながら同乗者とゆったり、ゆっくり話もできる。

「足が不自由なため『まわりに迷惑をかけたくない』と観光に出かけるのも躊躇してしまう高齢の方などが、大切な方々と『桜が咲いてるね』『いい景色だね』など会話を楽しみながら移動できるように、という想いで開発しました」(Le DESINE代表の東大輔さん)

PMOはこの1月30日から、佐賀県・吉野ケ里歴史公園での運行サービスがスタートしている。同公園の西口から遊具エリアまで片道10分ほどの道のりを、今日もゆったり、ゆっくり走っているのかもしれない。

PMOの進行方向側にはLiDAR(ライダー)などのセンサーが取りつけられており、それが歩行者や障害物を感知すると停車する。そして不確定要素がなくなったところで再発車するまでが自動。安全を最重要視した設計だ

小池知事も絶賛!「AIスーツケース」

そして以前、未来館の記事でも紹介した「AIスーツケース」。見た目は旅行用のスーツケースでしかないが、ケース内にはさまざまなセンサーやAI、モーターなどが搭載されていて、視覚に障害のある人を目的地まで安全に誘導してくれる。

まずは、未来館内で小池知事がこのケースに“導かれる”体験をした。

「ちょっとドキドキでしたが『導かれている』という感じがありました。『ボタンを押してください』とか(ケースが)しゃべってくれたんですよ! これなら安心して(目的地に)行けると思います」(小池知事)

未来館前のスペースで、全盲の浅川館長を誘導するAIスーツケース

AIスーツケース開発の中心となったのは、未来館の浅川智恵子館長(上写真)だ。彼女は小学生のときの事故がもとで、中学2年生で視力を失った。体育大学に進むという夢が絶たれたため理系にシフト。その後は日本IBMに入社し、世界初の実用的WEB音声読み上げソフトを開発するなど活躍してきた。現在も館長とIBMフェローを兼ねる、バリバリの科学者だ。

「あるとき出張していて、白杖とスーツケースを持って歩いていると両手がふさがってとても不自由で、『スーツケースが自動で動いて道案内をしてくれたら、どんなに楽だろう』と思いました。そこから、アメリカのカーネギーメロン大学の研究室とともに、AIスーツケースの開発をスタートさせたのです」(浅川館長)

イベントに登場したケースは、以前に取材した「屋内用」より車輪がだいぶ大きくなっている。今回、初めて屋外で運行するにあたり、アップデートされたのだろう。持ち手の部分をギュッと握ると、ケースが動き出す。あとは事前にプログラムされた地図に従って、ユーザーを目的地まで安全に誘導してくれるのだ。曲がるときには、その直前に持ち手の左右につけられたバイブレーションが震えて、ユーザーにどちらの方向に曲がるのかまで伝える。持ち手近くのボタンを押せば、速度調整も可能だ。

AIスーツケースに搭載すべく開発中の、「歩行者の行動予測による衝突危険性の通知」。前から歩いてきた人が避けてくれたときには通知せず、気づかずに直進してくると予測したときにブザーが鳴る

「いま、日本には『全盲の人は白杖を持つか、盲導犬と一緒でなければ道路を通行できない』という法律があります(道路交通法第14条第1項)。将来的には、このAIスーツケースをつかうことで、目の不自由な方が街を歩けるようにしていきたいですね」(浅川館長)

今回の体験イベントで紹介された4つの次世代モビリティは、「エネルギー問題を視野に入れながら都市の魅力を向上させるもの」と「障害者や高齢者などの社会的弱者に目を向けたもの」の2タイプで、いずれも「誰ひとり取り残さない社会」を目指している。小池知事は言う。

「東京を持続可能な都市に高めていくためには、年齢、障害の有無にかかわらず、誰もが安心して自由に移動できることが大切。そのために東京都は、都市が抱える課題の解決に向け、多様かつ新たな技術の導入を進めているのです!」

ーー前編はこちらーー

photo:松井雄希、text:奥津圭介

【こんな記事も読まれています】

世界遺産・熊野古道「千年の道を歩いて感じる永遠の旅」【前編】

オランダ発!プラごみリサイクル機の設計図を誰でもシェアできるサイト

中身は開けてのお楽しみ!食品ロスを減らす「お菓子の不定期便」

海への想いをつなぐ湘南発の地域通貨「ビーチマネー」

大阪の老舗が開発!クールな「男性用ミシン」に込められたアツい想い

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!