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名古屋の街なかでも「太陽光電力で焼いたパン」を!
名古屋の街なかでも「太陽光電力で焼いたパン」を!
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名古屋の街なかでも「太陽光電力で焼いたパン」を!

東海地方をメインとする電気工事業者のフジサービスは、2022年に2軒の「脱炭素パン屋」をオープンしました。この後編では、街なかで開店したため立地的に太陽光発電ができない2軒目「ブーランジェリー・サン(BOULANGERIE SUN)」で、いかにして「再生可能エネルギー由来電力でパンを焼く」ことに成功したかを紹介します。

――前編はこちらーー

あくまで再生可能エネルギーにこだわる

フジサービスの代表・伊藤健太さんは思案していた。2022年4月にオープンした1号店「パン屋サントエフ」には、店舗の屋根にソーラー(太陽光)パネルを設置、その電力でパンを焼き、顧客を増やしてきた。が、12月に開店予定の2店舗目、ブーランジェリー・サンは、名古屋市千種区という街なかのマンション1階に開店する。ソーラーパネルを置くスペースがないのだ。

「それでも、再生可能エネルギー(以下、再エネ)をつかってパンを焼くことにこだわりたい」。そう考えた伊藤さんは、発電時にCO2を排出しない再エネ電源(太陽光発電、水力発電など)に由来する、CO2フリー価値つきの電気を買って、パンを焼く選択をする。

「店舗の電力は100%、中部電力ミライズGreenでんきのCO2フリー価値つき電気でまかなっています。これなら街の中心部でも『脱炭素パン屋』を実現できます。とはいえ、この電力は通常に比べ、1kwあたり2~3円程度電気料金が高くなります。店舗全体で、ふつうより1割近く電気料金が上がると思いますので、一般的な経営者にはなかなか採り入れにくいでしょうね」(伊藤さん)

2022年12月、名古屋市千種区にオープンした2店舗目、ブーランジェリー・サン

あくまで脱炭素にこだわるフジサービスは、おいしいパンを日常的な価格で提供できるように、フィリング(パンの具材、詰め物)につかうあんこやカレー、カスタードクリームなどは基本的に手づくりしている。

「オープンして1ヵ月、ブーランジェリー・サンはかなり好調です。店舗スペースは1号店ほど広くはないのですが、すべてのパンをガラスのショーケースに入れて陳列することで、非日常、高級感を演出。できたてを屋外のテラス席で召し上がっていただけることが、お客様に喜ばれています」(フジサービスベーカリー事業部長・村瀬元紀さん)

すべての商品が再エネ電力由来の電気をつかった溶岩石オーブンで焼きあげられている

フジサービスの「野望」はベーカリー事業にとどまらない。

「近い将来に、いちご狩りができる観光農園をオープンさせたいのです。ベーカリー1号店サントエフの近くに、すでに3000坪程度の土地を確保しています」(伊藤さん)

この広大な土地にソーラーパネルを設置、その下でいちごを育てる営農型発電をおこなおうというのだ。これなら、ひとつの土地で農業と太陽光発電を効率的に両立でき、電力を地域に供給もできる。

「いちごハウスは木造にします。コストはかかりますが、ここに国内の材木を使うことで地産地消に貢献し、積極的に障がい者雇用もおこなおうと考えています。弊社に農業のノウハウはありませんが、2年前、ベーカリー事業参入を決めた段階では、弊社にパン屋経営の経験がある社員も、ましてやパン職人などひとりもいなかった。志を持って活動していけば、想いは必ずお客様に伝わり、何とかなるものですよ」(伊藤さん)

ブーランジェリー・サンの店内。ショーケース内のパンはどれもリーズナブルな価格だ

伊藤さんは2年前、社員数名をベーカリーショップに修業に出し、新店舗の運営を任せるつもりでいた。そんなとき、サントエフでつかうオーブンなどの機材について業者と打ち合わせをしていて、「それなら、ちょうどいい人がいるよ」と、前出の村瀬さんを紹介される。村瀬さんが振り返る。

「私はそのころ、以前勤めていたベーカリーショップを退職したばかりでした。そのタイミングで伊藤と出会い、『脱炭素経営のベーカリーショップをやりたいんだ!』とアツく語られて、ワクワクしてしまったんです。その場で一緒にやっていこうと決意しました」

それが「まちの電気やさん」による「脱炭素パン」づくりのはじまりだったのだ。

フジサービスの「本業」は、東海地方を中心にソーラーパネルの設置や電気の売買などをおこなう電気事業だ

「この先も、さまざまなハードルがあるでしょう。けれども想いを持って活動していれば、村瀬との出会いのような、新しいつながりもできてくるのではないかと期待しています」(伊藤さん)

text:奥津圭介

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