保護犬を元気にして里親のもとに! ロスカボスのツリーハウス・ホテル「Acre Resort」の試み
メキシコ西部、全長1250kmに広がるバハ・カリフォルニア半島。その最南端にあるリゾート、ロスカボスは、北米大陸のなかでもサステナブルな取り組みに積極的なSDGs先進エリアです。今回、ライター・仁田ときこさんと写真家・かくたみほさんが“世界で一番幸せな犬と人のホテル”と称される「Acre Resort」を訪れました。
ヒトと動物が共存するハッピーなツリーハウス
快適なツリーハウスに宿泊できると、世界中から観光客が訪れるAcre Resort。広大な25エーカーの敷地には美しい砂漠の多肉植物が生い茂り、土地の特徴を活かした素晴らしいロケーションを満喫できる。そして何より注目すべきは、動物保護の面で画期的かつハッピーなアイデアを発揮していることだ。
ホテルの敷地には、ハーブや野菜を育てる畑があり、その隣には、犬たちがのどかに過ごすエリアが広がる。ここではロスカボスの街の保護犬を引き取り、ホテルのおだやかな環境でしばらく育て、すっかり元気にしてからメキシコ国内やアメリカ、カナダの里親へ譲渡するという活動をおこなっている。
ホテルで保護中の犬たちは、どの子も毛並みが美しく、驚くほど人なつっこい。スタッフがケージに近づくと、うれしそうに駆け寄ってはしゃぐ。犬たちがここでいかに大切に育てられているかが伝わってくる。こんなようすを見たホテルの宿泊客が、「犬を譲ってほしい。里親になりたい」と申し出るケースも多いそう。
この素晴らしい仕組みは、2017年に6匹の子犬がホテル内に捨てられていたことから始まったという。手入れが行き届いた日当たりのよい清潔な空間で、どの保護犬ものびのび過ごしており、宿泊客はもちろん、ホテルのレストランやバーの客も、犬たちと触れ合える(あくまで犬たちにストレスのない範囲で)。
私たちが目撃したのは、ホテルを訪れていた子どもたちが保護犬と戯れるようすだった。ある女の子は、子犬をヒザに乗せてやさしくなでながら、「あなたはとてもいい子」と、繰り返し繰り返し語りかけていた。こうしたふれあいは、人間の子どもにとってもドッグセラピーのような、よい効果があるのではないだろうか。
さらに素晴らしいのは、ホテルが「@acredogs」という専用のInstagramに、里親募集中の子犬の情報を常にポストしていること。譲渡された犬たちのその後も、このインスタで見られるのだ。
ホテルのオンラインサイトで商品を買うと、売り上げの10%が犬の医療費や維持費として寄付される。「保護犬の譲渡会は世界中で開催されていますが、リゾートホテルで保護犬が暮らし、それを譲渡している例は、ほかにないと思います」(ホテルのスタッフ)。
このリゾートでは、保護犬のほかにも、たくさんの動物が飼育されている。目の見えないラクダがのんびり昼寝をしている姿は、とくに印象的だった。このラクダは観光地で長年、客を乗せ続けたため背中を傷め、年老いて盲目になっていた。そこをホテルの関係者に発見され、引き取られたそう。「長年多くの人を相手に働いたのだから、老後は幸せに過ごしてほしいですね」と、前出のスタッフは言う。
ほかにヤギやロバ、ウサギ、クジャクが思い思いにエサを食べたり、歩き回ったり、のんびり過ごしている。ここはまさに、動物と人が共存する世界でも稀なホテルなのだ。
協力:ロスカボス観光局(https://www.instagram.com/visitloscabos_jp) text:仁田ときこ photo:かくたみほ
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