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「みまさかの国」岡山県・真庭市は美食と美酒の王国だった!【前編】
「みまさかの国」岡山県・真庭市は美食と美酒の王国だった!【前編】
FEATURE

「みまさかの国」岡山県・真庭市は美食と美酒の王国だった!【前編】

「みまさかの国」って、どこか知っていますか? みまさかは「美作」と書き、岡山県の北部を指します。津山市、真庭市、美作市をはじめとする10市町村からなるこの地域、蒜山(ひるぜん)ほかの素晴らしい自然や伝統文化、多彩なグルメなど非常に豊かな「国」なんですが、「行ったことがない」「何があるのかまったくわからない」という読者がほとんどではないでしょうか。

ハイ、「倉敷や(岡山市の)後楽園は知っているけれど」という人が多く、瀬戸内海沿いの地域ばかり有名だということは、岡山県の皆さんも重々承知。そこでいま、県は北部のPRに躍起なんです。FRaUもそれに乗っかって、美作国を探訪してきました。まず第1回目は、真庭市からレポートします。

このミルク感!ジャージー牛のソフトクリームは必食!

まず訪れたのは県最北部、鳥取県との県境近くにある真庭市の蒜山高原。大山隠岐国立公園の一部でもあり、ジャージー牛の放牧が盛んな地域だ。蒜山酪農農協直営の「ひるぜんジャージーランド」では、上蒜山、中蒜山、下蒜山の3つの山からなる蒜山三座をバックにジャージー牛と馬が混じってのんびり草を食む姿が見られる(冬期を除く)。

ここのレストランで提供される名物チーズフォンデュやローストビーフ丼などもきわめて美味だが、絶対に試すべきは「蒜山ジャージー100% プレミアムソフトクリーム」。ほんのり黄金色のソフトは非常になめらかでミルク感たっぷり!

北海道から沖縄まで、さまざまなアイスを食べてきたFRaUだが、この濃厚さと食感はトップレベルと断言できる。絶対のオススメだ。

次に立ち寄ったのは、「サステナブル」の価値を啓蒙する施設「GREENable HIRUZEN(グリーナブルヒルゼン)」。建築家の隈研吾氏が設計監修し、真庭市の木材でつくったCLT(直交集成板)パビリオン「風の葉」(下写真)がここのランドマークだ。

風の葉は、そもそも東京オリンピックに合わせて2019年、東京・晴海の選手村近くに建てられたが、コロナ禍で五輪が延期されたため、その開催を待たずに、ここ真庭市に移築されたのだとか。その隣にあるサイクリングセンター(下写真)も隈氏の設計だが、かなり風変わりな建物だ。屋根裏、内部の天井から受付カウンターまでが、なんとすべて蒜山産の茅葺(かやぶ)き! こんなところで自転車をレンタルしたら、どこまでもスイスイ走れそうだ。

ヤマブドウのワイン、雄町の日本酒を堪能! 「のれん染め」にも挑戦!!

続いては「ひるぜんワイナリー」へ。なんと、ヨーロッパにはない日本の固有種・ヤマブドウでの難しいワインづくりに35年以上前から挑戦してきたここは、ヤマブドウの酸味と野性味を活かして、5年前のジャパン・ワイン・チャレンジで「山葡萄・ロゼ2017」が金賞を受賞するまでに腕を磨いてきた。同ワイナリーは、いまではカフェやショップも併設する観光名所にもなっている。

ここの名物は、植木啓司社長(下写真)自らがカウンターに立ってサーブしてくれる試飲コーナー(有料)だ。FRaUもいただいてみると……フレッシュな酸味がまず印象的。もともと蒜山で自生していた野生のヤマブドウのなかから、厳選したものを自社の畑に植え替えて栽培、それを醸造してきただけに、歴史を感じる「ここにしかない」個性的な味だ。ジャージー牛のチーズなど乳製品はもちろん、和食にもよく合いそうなさわやかさで、余韻もスッキリしている。

お酒が飲めない人やドライバーには、天然ヤマブドウを搾ったノンアルコールのジュースもあるから、ぜひお試しを!

次に向かったのは蒜山高原から南に車で1時間ほど走ったところにある真庭市勝山。かつての城下町は1985年、岡山県で初めて「町並み保存地区」に指定された。勝山のメインストリートには、白壁、格子窓の伝統的なつくりの民家、商店が100軒以上も建ち並び、それぞれが玄関に趣向を凝らした大きな「のれん」を掲げている。

そのうちの1軒、なまこ壁の立派な蔵ももつ大きな建物が、この地で日本酒をつくり続けて220年の酒蔵、「御前酒蔵元 辻本店」(上写真)だ。1804年創業当時のままの蔵で、地元の酒米・雄町にこだわり、「御前酒」を醸しているのは岡山初の女性杜氏、辻麻衣子さん。その弟である代表取締役の辻総一郎さん(下写真)が、いくつか試飲させてくれた。

御前酒はスッキリ辛口でありながら旨みも十分で、杜氏が目指す方向性どおり、ふくよか、かつなめらか。「貴醸酒」は、いわゆるデザート酒の部類に入る甘い酒だが、しつこい甘さはなく、酸でキレを出した、食中酒でもイケるものだ。これは旨い! その場で4瓶、衝動買いしてしまった。

ベンガラの草木染めでオリジナルハンカチを

のれん街道をさらに歩くと、「ひのき草木染織工房」がある。街道沿いの民家や商店の、のれん製造を一手に引き受けている工房で、絞り染め体験のワークショップも行っている。せっかくなので、FRaUもベンガラ(紅色の酸化鉄顔料)でのハンカチの絞り染めを体験してみた。

指導してくれる染織家・加納容子さん(下写真)の「絞り染めに失敗作はありません。どういうふうに染まっても、それがいい味となります」との言葉に励まされて、真っ白なハンカチ生地を、細かく細かく折りたたみ、中央を輪ゴムとタコ糸で強く縛る。縛ったところには染料が入らないので白いまま残り、他は紅色に染まるのだという。ビー玉なども挟んで縛ったりすると円形の模様ができるというが、面倒なのでこのままベンガラ液にダイブさせて、揉み込む、揉み込む……。

「もう十分でしょう。次はアイロン掛けです」。加納先生に促され、アイロン場へ。そして完成したのが下写真のハンカチだ。うーん、本当は白いラインを入れたかったのだが、それが切れ切れになって、不規則に雨だれが落ちたような柄になってしまった。

「いや、これもいい味出してるわよ。私、こんな柄初めて見た。縛り方がちょっとゆるかった部分に染料が入って、斑点になったのね」。加納先生……! ありがとうございました!

というわけで、駆け足で回ったものの大充実、大満足だった真庭市への旅。次回はおなじ美作の国の、津山市に脚を延ばします。

Photo 土居祐一、FRaU / Text FRaU

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