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SHELLY×太田啓子が語る、性教育のこれから【前編】
SHELLY×太田啓子が語る、性教育のこれから【前編】
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SHELLY×太田啓子が語る、性教育のこれから【前編】

社会的、文化的に形成された、ジェンダーという概念。心理的な自己認識や置かれた環境によって一人ひとりが抱く問題意識は違います。今回は、「これからの性教育」のテーマを軸に、タレントのSHELLYさんと弁護士の太田啓子さんに語り合ってもらいました。

大人がジェンダーに対する意識を
変えることが最初の一歩

左・太田啓子。右・SHELLY/シャツ(エンフォルド)、ピアス(ヴァンドーム青山)、サンダル(ダイアナ)、パンツ(スタイリスト私物)

YouTubeや雑誌などを通して積極的に性教育の大切さを発信しているSHELLYさんと、弁護士として多くの離婚や性被害などの事件と対峙してきた太田啓子さん。それぞれ親としても子育てに奮闘しているふたりが、日々感じている「男の子らしさ」「女の子らしさ」の危険性とは? これからの性教育の大切さや、子どもたちに生きやすい未来を贈るため、いま大人がすべきことも語ってもらった。

SHELLY さっそくですが、太田先生がジェンダー問題を意識し始めたのは、何がきっかけでしたか?

太田 私は離婚事件を扱うことが多く、家庭内の性差別やDVも目の当たりにしてきたんです。やがて自分がふたりの男子の母になり、彼らを女性と対等な関係を築ける子に育てたいと思うようになりました。でも、子育てが始まると、男子が日常的に受け取るジェンダーバイアスの多さに驚きました。「ケンカに負けたらやり返してこい」「男は泣くな」と、男の子だからという理由で粗雑に扱われる。それがやがて、強い男性をよしとするマッチョな価値観につながり、その先に女性を抑圧する現在の性差別があるのだと思います。

SHELLY 男の子だからという子育てが、男性に、感情を豊かに感じさせない社会につながっていますよね。「寂しいとか、疲れたとか、辛いとか言うのは弱いやつ」と言われて育つから、感情を押し殺した大人になっていく。逆も同じで、女性が活躍する時代だと言われても「大声を出しちゃダメ」「目立つことはしないで」と育てられた女の子がCEOになるわけがない。まだまだ日本はジェンダー問題に向き合えていないなと感じます。

太田 とくにまわりの発言で感じますよね。「男子はやんちゃで、言うことを聞かないよ」とか、「女の子だから、お手伝いしてくれるでしょう?」って、多くの人が言うじゃないですか。世の中の男の子だから、女の子だからという決めつけが、いまだ強いなと実感します。

SHELLY 本来は、お人形さん遊びが好きな男の子がいても、トラックのおもちゃで遊ぶ女の子がいてもいい。私は仕事で性教育の講演をすることも多く、参加者から「うちは男の子なんですけど、どう教えるといいですか?」って聞かれるんです。でも大切なのは自分の体も、相手の体もよく知ること。性教育に男女差はないんです。それに、生まれてきた体が女の子か男の子かというだけで、今後どういうジェンダーを持ち、どんな相手と恋愛をするのかはわからない。私たち大人がジェンダーに対する意識を変えることが最初の一歩だと感じます。

太田 私も子育てをしながら、自分のジェンダーバイアスに気づくことが多々あります。そのときは「ごめん、ママのさっきの話、間違っていました。もう1回言います」とやり直しますね。

SHELLY 私もそうです。私たち親世代はいまとは違った価値観の世の中で育ってきているので、自分でも気づけていないジェンダーバイアスはやっぱりあります。謝ることを含め、子どもをひとりの人間として見ることは大事にしたいですよね。

太田 私は、家の中での性差別には気をつけているつもりですが、子どもって親以外の身近な大人や、テレビやアニメといったコンテンツからも影響を受けるじゃないですか。SHELLYさんは、おふたりのお嬢さんに何かコンテンツを見せるとき、気をつけていることはあります?

SHELLY そこはもうコントロールしきれないので、一緒に見ながら説明するようにしています。

太田 私も同じです。「テレビではこう言っているけど、本当はこうだよね」と会話をして。最近は、上の子が非対称な言葉に敏感になり始めたんですよ。テレビから女優という表現が聞こえると、不自然に感じるみたいで。そのときは、「よく気がついたね!」と絶賛するようにしています。

SHELLY 不思議ですもんね。女流作家という言葉はあるのに男流作家はないとか、同じ仕事なのに男性は医師で女性は女医だとか。あと、少女マンガも難しいんです。どうしても、ゆがんだ恋愛観が垣間見えるので。

太田 たとえば壁ドンはデートDVになりかねないのに、トキメキとして描かれますしね。私が腑に落ちないのはお風呂をのぞくシーン。罪深いのが「のぞきに行こうぜ」じゃなく、偶然見えてしまったときに「ラッキースケベ」と表現するんですよ。故意ではないことを免責するみたいな言葉ですよね。

SHELLY 相手にまずは「ゴメンね」を伝えるべきなのに。

太田 そういった性暴力やセクハラになり得るものを、ギャグ的に描くことがなくなっていくといいですよね。

SHELLY そうですね。あとコンテンツの話でいうと、なるべく幅広いジャンルの絵本を読ませています。『王子と騎士』では、王子様が結婚相手を探して、いろんなお姫様と会うんですよ。でも、結局王子様は自分のピンチを救ってくれた騎士と恋に落ちて、結婚するんです。私は大人の脳で読んでしまうので、この後の展開で周囲に反対されるのかなと想像していたのですが、純粋に「王子が素敵なパートナーに出会えた!」と、みんなが祝福して終わり。ただ、娘たちが不思議そうに「男の子同士は結婚できないんでしょ?」と聞くんです。「結婚できるよ」と言えない日本の制度や、「できる国もあるよ」と注釈を入れる現状に心をすり減らすことは多いですね。

太田 私も、息子には「いまの社会は未完成で、完全じゃないんだよ。だから、よくなるようにお母さんもがんばるし、あなたも大人になったら一緒に変えてね」と話しています。子どものリテラシーを育てることが、健全な未来につながっていくと思っています。

▼中編につづく

PROFILE

SHELLY
1984年生まれ、神奈川県出身。2人の娘の母であり、MCやナビゲーターなど幅広く活躍。現在は『ヒルナンデス!』の金曜レギュラー、『今夜くらべてみました』のMCなどを務める。YouTubeで性教育チャンネル『SHELLYのお風呂場』を開設。

太田啓子 Keiko Ota
弁護士。離婚・相続等の家事事件、セクハラ・性被害などを担当する。2019年に『DAYS JAPAN』広河隆一元編集長のセクハラ・パワハラ事件に関する検証委員会の委員に。2人の息子の母。共著『日本のフェミニズム since1886 性の戦い編』(河出書房新社)。

●情報は、FRaU2021年8月号発売時点のものです。
Photo:Norio Kidera Styling:Kanako Sasada Hair & Make-Up:Junko Takahashi  Text:Akiko Miyaura  Edit:Yuka Uchida
Composition:林愛子

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