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前川楓「義足ってかっこいい」その魅力を伝えたい
前川楓「義足ってかっこいい」その魅力を伝えたい
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前川楓「義足ってかっこいい」その魅力を伝えたい

美しさとは、限られた人だけが持っているものではありません。美しくあることに年齢、容姿、性別などは、なにも関係ない。美しさには正解も、基準もない。今回は、自分らしさを発信するアスリートの前川楓さんに、“美”について伺いました。

それぞれの価値観を認め合える
世界になるといいなと思います

Instagramで練習や日常のようすを発信中。髪型やネイルも変えるたびに、アップしている。

2021年に開催された東京パラリンピックに出場し、走り幅跳びでダイナミックな跳躍を見せた前川楓さん。カラフルな髪色が印象に残っている人も多いだろう。

「東京パラリンピックは、自国での開催ということでとても気合が入っていました。私のことをはじめて知ってくれた人に、パラ陸上や義足にも興味を持ってほしいと思ったので、目立つように髪を虹色に染めました。美容院で5時間半かかりました」

元気いっぱいに笑う前川さん。彼女は、中学生のときに交通事故にあい右脚を切断する大ケガを負ってしまう。事故から1年経ったあと、義足での生活がはじまった。

手術をすることになったとき、不安が大きかったのでインターネットで情報を集めました。そのとき義足モデルのGIMICOさんをみつけて『かっこいい!』と衝撃を受けたんです。義足生活になったら、それを隠さずに見せて生きていこうと決めました」

練習中の前川さん。試合前に髪色を変えるのは、自分を鼓舞するための大切な習慣。

予期せぬ事故によって人生が大きく変わってしまったが、すぐにSNSでロールモデルを見つけ、同じ境遇の仲間たちとも出会った。彼らが、走ったり、泳いだり、旅行をしたり、いきいきと生活している姿を見て「私もいろんなことに挑戦したい」と自分の境遇を受け入れることができたという。

事故から2年後、陸上競技をはじめることになった。事故にあう前は走ることが好きではなかったが、ブレードと呼ばれる競技用の義足をつけて走る感覚の虜になる。走ることが好きになり、日本代表の選手にも選ばれた。厳しい練習の日々でも、前川さんはおしゃれすることを忘れない。

「以前、2年間ほど髪を染めるのをガマンしていた時期があります。しばらく黒髪で生活をしていたけれど、髪を染めたいという欲求がどんどん出てきたんです。私にとって、好きなときに好きな髪型、髪色にできることがとても大事なんだと気づきました」

大切な大会の前には、髪色を変えたり、ブレードをステッカーでデコレーションしたりすることで気合を入れる。好きな髪型にして、好きなものを身につけ、自分が一番好きな自分でいられるのが、実力を発揮することにつながっているという。

義足の女性がモデルのファッションショー「切断ヴィーナスショー2020」でボルトポーズをとる前川さん。21年11月に発売された越智貴雄写真集「切断ヴィーナス2」(白順社)より。

大会のときだけではなく、普段のコーディネートも義足を見せてファッションを楽しんでいる。今回の撮影も、お気に入りの私服を着てきてくれた。

「スカートをはいて、全身のコーディネートを考えることが楽しいんです。義足は靴下をはく必要はありませんが、今日みたいに靴下を合わせることもあります。古着やアクセサリーを組み合わせて、ストリートっぽいファッションにするのが好きです」

競技のほかにも、アクセサリー制作、絵本の出版などクリエイティブに活動する前川さんは、いつかはユニフォームのデザインにも挑戦してみたいと夢を語ってくれた。義足の女性たちがモデルを務めるファッションショーに参加するなど活躍の幅を広げ、その美しさを発信し続けているが、自分の考え方を押しつけることはしたくないという。

「私は義足を見せることだけが正解だとは思っていません。見せたくない人は、もちろん隠せばいい。髪型もファッションも、シンプルなものが好きな人だっている。みんながそれぞれの価値観を持っていることを理解して、それをお互いに認め合える世界になるといいなと思います」

今後は、神戸で行われる世界パラ陸上競技選手権大会、2024年パリパラリンピックに照準を合わせ、練習にもますます力を入れていく。多才な彼女の今後の活躍が楽しみだ。

PROFILE

前川楓 まえがわ・かえで
1998年三重県生まれ。アスリート。2012年に交通事故にあい、右脚の大腿部を切断。14年から競技生活を開始。16年にリオデジャネイロパラリンピックに出場。21年の東京パラリンピックでは、走り幅跳びで5位に入賞。イベントなどにも参加し、義足の魅力を発信している。絵本作家としてもデビューし、義足の犬を主人公にした『くうちゃん いってらっしゃい』(白順社)を21年12月に発売。
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●情報は、FRaU2022年1月号発売時点のものです。
Photo:Natsumi Kinugasa Text & Edit:Saki Miyahara

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