事実を正確にとらえることが
問題解決のための大きなステップ

現代のビジネス書のほとんどは、気候危機をはじめ、さまざまな社会問題を扱っていますが、私が興味を持っているのは、起きていること自体より、それがどう経済とつながって、私たちが生きている社会とどんな関係があるのかということです。

『地球の未来のため僕が決断したこと』は、環境問題についてのまとめ本といっても過言ではない内容で、こういう問題があるけれど、それに対応すれば雇用がなくなってしまうよね、という現実が、データを交えて提示されています。私自身、社会問題を発信するうえで、より多くの人に届けたいときには、主観ではなく、数字で語るようにしているので、フラットに現実を見られるグラフなどに興味を惹かれました。

映画『THE TRUE COST』には、途上国が大量生産の代償を受けているというファストファッションの裏側が描かれていて、ロンドン留学時代、社会問題に興味を持って発信を始めるきっかけになりました。途上国の人たちが低賃金で働かされている現実は、なんとなく誰もが頭ではわかっていることと思いますが、映像を見て、事実を知らないってこんなにも怖いことなのかと思いました。いまでも服を買おうとすると、その裏側で起きている、このドキュメンタリーのシーンが脳裏に浮かび上がります。ファッションが好きな人にはもちろん、服を着るすべての人にかかわりがある映画です。真実を知ることは一番簡単なステップであり、大きなアクションだと思います。

『地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる』
ビル・ゲイツ／著　山田文／訳

気候危機に何ができるか。世界の最先端をリードするアメリカの実業家が、10年にわたり専門家と考えたブレイクスルーの方法論、進むべき道とは。早川書房。

『ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償』

大量生産・大量消費が問題視されるファッション業界の裏側。途上国での人権侵害や環境汚染の現状を描く。監督／アンドリュー・モーガン。UNITED PEOPLE。

PROFILE

長谷川ミラ　MILA HASEGAWA
モデル。1997年生まれ。雑誌、テレビ、ラジオを通し、社会問題などについて発信。J-WAVE「STARTLINE」ナビゲーター。ビジネス誌「Forbes Japan 30 UNDER 30 2022」受賞。

●情報は、『FRaU SDGs MOOK 話そう、気候危機のこと。』発売時点のものです（2022年10月）。
Illustration：Toru Ogasawara　Text：Emi Fukushima　Text & Edit：Asuka Ochi
Composition：林愛子