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気象予報士・斉田季実治「気象情報は、命と密接につながっています」【前編】
気象予報士・斉田季実治「気象情報は、命と密接につながっています」【前編】
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気象予報士・斉田季実治「気象情報は、命と密接につながっています」【前編】

気象予報士であり、防災士の資格も持つ斉田季実治さん。報道記者時代には数々の自然災害の現場にも立ち会いました。いま伝えたい、命を守るために大切なこととは?

報道記者として災害現場を取材
気象情報の重要さに気づいた

ジャケット、ネクタイ(ユニバーサルランゲージ) シャツ(FIT)

NHKで平日夜9時から放送中の「ニュースウオッチ9」で気象キャスターを務める斉田季実治さん。気象や防災にまつわる講演を行うなど、気象情報を正しく伝える活動に加えて、一人ひとりが知識を深め、自ら行動できる社会づくりに力を注いでいる。

「幼い頃から空を見るのが好きでした。父は転勤が多く、小学校の頃は3回転校を経験。一番長く住んだのは熊本県でしたが、住む所によって雨の降り方が違ったり、季節ごとの現象にも差異があったりして、なんだか面白いぞと。高校時代には自転車で台風の目を追いかけたりしていましたね。危険なので、どうかマネしないでくださいね(笑)」

北海道大学に進学した背景にも、住んだことのない土地の天気への興味があった。が、選んだ学部が水産学部というから面白い。

「大学のパンフレットを見ていたら、水産学部では船に乗れるとあって。座学よりフィールドワークのほうが楽しそうだし、自分に合っているかなと思いました。函館から横浜までの2週間航海という実習があり、すごく楽しかったです。深海の水を採取したり、イカを釣って船の上で食べたり」

長い航海の途中で身にしみたのが、天気の重要性だった。

「私はあまり船酔いしない体質だったのですが、ひとたび海が荒れると続々とダウンする人が出て、風や波の状態によってさまざまな影響が出ることを知りました。陸上にいるよりずっと天気の変化に敏感になって、気象予報というのはすごく大切だなと思ったんです」

空を見上げ、写真を撮るのが趣味であり日課。8月下旬のこの日は「夏のモコモコとした雲と、秋のうろこ雲が混在していますね。『ゆきあいの空』といいます」と教えてくれた

大学3年生の夏、気象予報士の資格試験を受験。気象に関わる仕事を目指すと決めた。

合格率5%ほどという狭き門だったが、猛勉強の末、2度目の挑戦で合格。テレビ局や気象会社などに絞って就職活動を行った。地元の北海道文化放送から内定が出たときは、気象の世界に入っていけると胸躍らせた。

「入社してみたら、配属先はイベントなどの仕事をする事業部。でもいざ働きだしたら、イベントは天気に左右されることが多くて、気象の知識がずいぶん役立ちました。それを見越しての配属だったのかもしれません(笑)」

その後、報道部に異動となり記者に。事件や事故などの現場を取材した。そんななかで忘れられないのが災害現場だった。

「地震や大雨、台風。災害が起こるとすぐにヘリコプターに乗って現場に入りました。実際に目の当たりにする災害現場は、それまで画面越しに見ていたものとはまったく印象が違っていた。以前はどこか遠くで起こっている、自分には関係ないと思っていた災害が、こんなにもひどいものなのかと痛感しました。被害のあった地域で話を聞くと、気象情報のおかげで助かったという方もいる一方で、まったく情報が届いていない方もいて、そのギャップを感じたことも少なくありませんでした。台風が接近しているときに野外コンサートを開催しているなんて現場を目の当たりにしたことも。せっかく情報を出しているのに、なぜそれが十分に活かされないのか、どうしたらいいのか。死亡者が出たときには、とくに考えさせられました」

▼後編につづく

PROFILE

斉田季実治 さいた・きみはる
1975年生まれ。テレビ局の報道記者を経て、気象の専門家の道へ。2006年からNHKで気象キャスターを務め、現在は「ニューウオッチ9」、「明日をまもるナビ」などに出演。著書に『空を見上げてわかること』(PHP研究所)など。

●情報は、『FRaU SDGs MOOK 話そう、気候危機のこと。』発売時点のものです(2022年10月)。
Photo :Yu Inohara Styling:Akane Kitsunai Hair & Make-Up:Rumiko Koike Text & Edit:Yuriko Kobayashi Cooperation:NHK Global Media Services
Composition:林愛子

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