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映像作家・ダンサーの吉開菜央が選ぶ「気候危機を感じ取れる本&映画」
映像作家・ダンサーの吉開菜央が選ぶ「気候危機を感じ取れる本&映画」
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映像作家・ダンサーの吉開菜央が選ぶ「気候危機を感じ取れる本&映画」

難しい専門書でなくても、気候や環境の問題を多角的に学べる手段はたくさんあります。映像作家でダンサーの吉開菜央さんがオススメする本と映画を見てみましょう。

深刻な現状から目を背けず
嘆くよりも、感謝とお返しを

気候危機というとてつもなく大きなテーマが自分ごとに変わるきっかけになった作品のひとつが、映画『チェイシング・コーラル─消えゆくサンゴ礁─』。海水温の上昇によって白化し、次第に死んでいくサンゴの実情を世界に伝えるべく、その変化の過程を映像に収めようと奮闘するクルーたちのドキュメンタリー映像です。

毎日25回、海に潜って同じポジションからサンゴを経時撮影することの大変さはもちろんですが、何より心に残ったのは、撮影クルーのひとりの青年が死んだサンゴを見つけて涙するようす。昨日は生きていたサンゴが、翌日には生気を失っている。

映画の撮影班としては、決定的な映像が撮れた成功の瞬間でもあるんですが、サンゴを、愛する人のようにとらえ、その命が失われていくことを深く悲しんでいる姿には感情移入してしまいます。数字データや情報だけではわからない、命が失われていくことの残酷さと重みが心に突き刺さりました。

そんな深刻な現状に衝撃を受けながらも自分の無力さを感じていた頃に、ひと筋の光を見せてくれた本が『植物と叡智の守り人』。学問としての植物学、そしてネイティブアメリカンとして生まれ、おのずと培ってきた古くからの叡智を身につけた著者が、自然と人間のあり方について持論を綴った手記です。

本書が伝えるのは、人間は本来、地球から与えられるばかりの存在ではなく、お返しができるのだということ。植物は獲りすぎず、次の季節に残す。差し出された分を上手に使う。自然の恵みに感謝をし、手入れやお返しをする。レシプロシティ=相互依存性との言葉で表現されるその哲学こそが、先住民たちの儀式や暮らし方の根幹にあり、実際に、彼らが古くから続けている慣習の中には、資源を守り育てるうえでの科学的な効果が実証されているものもあるのだそう。

環境破壊が進むいま、人間の存在そのものを悪のように感じて罪悪感にさいなまれることもありますが、向き合い方を変えればまた、他の生き物も含めた命のサイクルを円滑に回すひとつのピースになれるはず。ほんの少し、救いをくれる作品です。

『植物と叡智の守り人』
ロビン・ウォール・キマラー/著 三木直子/訳

ニューヨーク州の山岳地帯にある森で暮らす、植物学者であり北アメリカ先住民でもある著者が、自然と人間の関係のありかたを独自の哲学で綴った一冊。築地書館。

『チェイシング・コーラル―消えゆくサンゴ礁―』

ダイバー・科学者・写真家らが結成したチームが、気候変動により死んでいくサンゴ礁を追いかける。監督/ジェフ・オーロースキー。NETFLIXで配信中。

PROFILE

吉開菜央 NAO YOSHIGAI
映像作家・ダンサー。1987年山口県生まれ。生き物ならではの身体的な感覚・情動をもとに映像作品を製作している。近作に、北海道知床・斜里を舞台にした映画『Shari』など。

●情報は、『FRaU SDGs MOOK 話そう、気候危機のこと。』発売時点のものです(2022年10月)。
Illustration:Toru Ogasawara Text:Emi Fukushima Text & Edit:Asuka Ochi

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