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日比谷公園と街をひと続きに!ロンドン流グリーン戦略【前編】
日比谷公園と街をひと続きに!ロンドン流グリーン戦略【前編】
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日比谷公園と街をひと続きに!ロンドン流グリーン戦略【前編】

帝国ホテルを擁する日本有数のビジネス街、東京都千代田区の内幸町(うちさいわいちょう)一丁目が、日比谷公園とひと続きのグリーンな街に生まれ変わろうとしています。その再開発プロジェクト「TOKYO CROSS PARK構想」で、街づくりを担うのが、ロンドンの建築家集団「PLPアーキテクチャー」(以下、PLP)。なぜ彼らが起用されたのでしょう。同社取締役の相浦みどりさんに伺いました。

ーー後編はこちらーー

帝国ホテル周辺が大きく変わる

日比谷のビジネス街区で、大規模な再開発計画「TOKYO CROSS PARK構想」(以下、クロスパーク)が進行中だ。帝国ホテルや東京電力、NTTなど、このエリアに本社や拠点を構える10の企業が、それぞれの得意分野を掛け合わせて持続可能なスマートシティの共創を目指す。2030年にはオフィスや商業施設、ホテル、サービスアパートメント、賃貸住宅などを備えた3棟の超高層タワーが、2036年には帝国ホテルの新本館が完成予定だ。

このプロジェクトでもっとも特徴的なのは、都心を象徴する緑地・日比谷公園と一体化した街づくりだ。緑と水豊かな広場が新たに整備される街区と日比谷公園とがデッキ状の「道路上空公園」でつながれ、ひと続きのパブリックスペースとなる計画なのだ。

日比谷公園の前に広がる皇居の緑とも一体になって、都心に立体的な緑の空間を形成する(イメージ)

「これまで、銀座からブラブラ歩いてくる人の流れは、ビルに囲まれたビジネス街や、交通量の多い日比谷通りで止まっていました。今後は、開かれた広場のある心地よい街へ入り、そのまま日比谷公園へと歩いていけるウォーカブルな街をつくります」と語るのは、PLPの相浦みどりさん。今回の街づくり、空間デザインを担当する、ロンドンの建築家チームのリーダーだ。

「グリーンを身近に感じられる場づくりによって、人のウェルビーイング(心身の健康)に貢献し、生物多様性など環境にも配慮できる。そんな空間で、この街のユーザーはもちろん、周辺の大手町、丸の内、新橋のビジネス街、行政機関が集まる霞ヶ関、カルチャーの拠点である銀座などから集まるさまざまな分野の人たちが交流し、やがて未来への新しいアイデアが生まれて世界に発信される。そういう街になったらいいですね」(相浦さん、以下同)

銀座側から街区へアクセスすると、2ヘクタールの開放的な広場が迎えてくれる(イメージ)

ロンドンと東京を股にかける日本人リーダー

2019年から相浦さんは拠点のロンドンと東京とを行き来し、100人規模のミーティングを重ねながらプロジェクトを推進してきた。クロスパークの参加企業が提示する「日比谷公園と一体化した街」「この土地に根ざした、日本を代表する10社の強みを活かす街」といった基本方針に沿った街づくりを提案し、実際の空間に落とし込むのがPLPの仕事だ。

PLPの女性リーダー、相浦みどりさん

「建築家というと、カッコいい形のビルをデザインするような仕事を思い浮かべがちですが、それだけの時代ではなくなってきました。未来の人の暮らし方や働き方、急速な気候変動やそれに対する都市の対応などを研究、予測しながら、次世代には、どういう機能を持ったビルや街が求められるのか。それぞれの土地性に合わせて、人にも環境にも適正な実現をするにはどうすればいいのか。そこを考え尽くしたビルづくり、街づくりのストラテジー(戦略)を提案するのが私たちの役割です」

ところで、PLPとは、どんな集団なのだろう。ロンドン本社には世界35ヵ国から45ヵ国語を話す175名の建築家やデザイナー、研究者が集まっているという。もちろん、相浦さんもそのひとりだ。175名のうち約半数は女性やマイノリティという多様性に富んだチームである。

ロンドン本社にて。多様性に富んだPLPのスタッフたち

PLPは、ヨーロッパを中心に中東、アジア、北米30ヵ国で、約550の物件に携わってきた。

同社が大切にしているのは「生命中心」の街づくりだという。

「ヨーロッパには以前から『ヒューマン セントリック(人中心)』という考え方があり、私たちもそれに基づいた街づくりをしてきました。最近はもう一歩進んで、『ライフ セントリック(生命中心)』の街づくりを実践しています。人と環境、双方を含めた生命が活性化する建築や街づくりを実現するため、社内にサステナブルチームを設け、カーボン排出量を検証したり、エネルギー消費削減のための戦略を考えたりしています」

ロンドンで建築の許可を取るためには、そこでつかわれるエネルギーの量や、建築にかかるCO2排出量を計算して提出しなければならないそうだ。

「『どうしてそこに建てるんですか?』という話からはじまるんですよね。建てないという選択が最もCO2を排出しないことは自明の理。それでも建てるのなら、木造がいいのか鉄骨造なのか、ハイブリッドがベストなのか……。建材によってCO2排出量がまったく変わってくるので、そこは真剣に検討します」。

ロンドンで建築許可を取ることの厳しさ

行政はこれらに加え、サーキュラー・エコノミー(循環型経済)や緑地面積などの側面からも検討し、あげく、許可を出さないことも多いらしい。

「そこまで厳しくないと、急激な気候変動などに対応できないという認識なのです。こうしたロンドンの指針は、いまや英国全体に広がっています。また、ヨーロッパには北欧など、さらに厳しい国もあります」

クロスパークにPLPが起用されたのは、こうした厳しい基準に対応してきたことを評価された面もあるだろう。

ーー後半では、PLPのリーダー・相浦みどりさんの内面に迫りますーー

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