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ニューカレドニアのサステナブルをめぐる旅④ 世にも美しい世界自然遺産のラグーンと天然プール
ニューカレドニアのサステナブルをめぐる旅④ 世にも美しい世界自然遺産のラグーンと天然プール
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ニューカレドニアのサステナブルをめぐる旅④ 世にも美しい世界自然遺産のラグーンと天然プール

「天国にいちばん近い島」の呼び名で知られるニューカレドニアは、オーストラリア大陸の東に位置するフランスの海外領土。世界自然遺産に登録されたエメラルドグリーンのラグーンに囲まれた数十の島々からなる、南太平洋屈指のリゾート地です。ニューカレドニアは、サステナブルというワードがポピュラーになる前から、持続可能な伝統文化、自然・野生動物観光に関する取り組みを積極的におこなってきました。2021年には、ナショナル・ジオグラフィック・トラベラーで「世界最高の持続可能なデスティネーション」のひとつに選ばれています。豊かな自然と多様な文化に彩られたニューカレドニアを、トラベルライターの鈴木博美さんがレポート。第4回目は、世界自然遺産の美しいラグーンを越えて、天然のプールがある海の宝石箱「イルデパン」を目指します。

「海の宝石箱」イルデパンへ!

旅の起点となる首都・ヌメアの国内線飛行場からプロペラ機に乗って、南に60km離れた珊瑚礁の島、イルデパンへ。ユネスコの世界自然遺産区域に登録されている海の絶景を、機窓から眺めるのも楽しみのひとつ。すべて自由席なので、ぜひ窓側のプロペラに視界を邪魔されない席に座りたい。窓側の座席は両側に各18席ほどあり、先頭前方から順に座るよう指示される。後方に座りたいなら、遅めに搭乗口に並ぶのがコツだ。

ヌメアを飛び立って間もなく、機窓からは目が覚めるようなコバルトブルーの海とエメラルドグリーンのラグーン(礁湖)が広がる絶景が望める。ニューカレドニアのラグーンは世界最大の規模を誇り、長さ1,600㎞、面積23,400㎢におよぶ。世界遺産に登録されたニューカレドニアのラグーンは6つのエリアに分けられており、そのひとつが本島南部からイルデパン周辺の海域に広がるグランラゴンスッド(Grand Lagon Sud)だ。まるで巨大な地球儀でも見ているような、美しいブルーとグリーンのコントラストに釘づけになっているうちに、機体は高度を下げて着陸態勢に。あっという間の40分だった。

気分は探検隊! ジャングルをかき分け天然プール「ピッシンヌナチュレル」へ

翌朝はピローグで天然のプール「ピッシンヌナチュレル」へ。ピローグはニューカレドニアの伝統的な帆かけ船で、現在も漁などに使用されている。船の先端に座り、冒険者気分で真っ白な三角帆に風を受けエメラルドグリーンのラグーンを渡る。しばらく進むとウミガメを見かけたが、あわてて海に潜っていってしまった。続いて、一頭のイルカが近づいてきた。イルカは群れで行動する性質があるが、迷ってしまったのか、ただ遊んでいるだけなのか。まるで「ようこそ!」とだけ言いにきたように、すぐに通り過ぎていった。イルデパンは、フランス語で「松の島」という意味。その名の通り、両側に見える島には、松に似たナンヨウスギなどのうっそうとした森が広がっていた。

内海の最深部に到着したら船を降り、巨大なシダやガジュマルの気根が垂れ下がる森の中をひたすら進む。倒木をまたいだり、くぐったり。植物を観察しながら熱帯のジャングルをかき分けて歩くこと約40分、海につながる水路が目の前に現れてきた。

水路をざぶざぶと歩くこと20分、最深部の潮だまり「ピッシンヌナチュレル」に到着。ピッシンヌナチュレルとは、フランス語で「天然のプール」を意味する。白い砂浜が広がる透明度が高い浅瀬になっており、晴れた日は太陽の光が砂浜に反射して、目がくらむほど。えもいわれぬ美しさは、まさにパラダイスだ。

一番深いところでも3〜4mほどの天然プールはシュノーケリングにピッタリ。水中ではクマノミをはじめ、きれいな熱帯魚たちが悠々と泳いでいる。ぜひ宿泊先で、シュノーケルセットやタオルをレンタルしてから出かけよう。強い日差しから体を守るために、ラッシュガードを持参するのがおすすめだ。

幻の大陸ジーランディアの欠片と生物多様性

ところで「ジーランディア」と呼ばれる幻の大陸のことをご存知だろうか? 私たちが暮らす地球上には、ユーラシア大陸をはじめ6つ大陸がある。しかし近年の研究より、もうひとつの大陸が存在していたことが明らかになっている。およそ8500万年前、現在のオーストラリアのもとになったゴンドワナ大陸から分離した一塊の陸地がそれ、ジーランディアだ。オーストラリアの半分ほどの大陸だったとされるが、約2500万年前の地殻変動により、現在はそのほとんどが海の中に沈んでいる。

しかし、わずかに残った陸地もある。それが、現在のニューカレドニアとニュージーランド。どちらも海に沈んだ大陸ジーランディアの上に位置するため、ゴンドワナ大陸から分離した際に存在していた植物を祖先とする種や、独自の進化を遂げた植物が多く、ニューカレドニアでは約3200種もの固有種がいるという。

その代表とも言えるのが、ピッシンヌナチュレルにも群生する「ナンヨウスギ」だ。ジュラ紀に生息していた針葉樹の一種であり、生きた化石とも呼ばれている。「天国にいちばん近い島」と形容されるニューカレドニアは、実は太古の植物がまるでタイムカプセルに閉じ込められたような状態で、現在も残っている島なのだ。

ニューカレドニアとニュージーランドは、ともにジーランディアに起源を持つ海洋島だが、ニューカレドニアは亜熱帯域に位置しているため、オーストラリアのグレートバリアリーフと同様に堡礁(ほうしょう、島や陸地に沿って沖合に発達する珊瑚礁)が発達した。この豊かなサンゴ礁域は、多くの海洋生物たちにとっての「ゆりかご」を担うと同時に、イルデパンのような、サンゴの隆起によってできた島を形づくってきた。

ピッシンヌナチュレルの中を水中メガネで覗くと、クマノミの仲間であるレッドアンドブラックアネモネフィッシュが見られる。色合いの美しさから、ダイバーに人気のクマノミだ。ほかにも、サンゴに寄り添うスズメダイの仲間やアカククリと呼ばれる魚の群れ、シャコガイなど、多種多様な生き物たちが暮らしていることが見てとれる。生物多様性に満ちた海の中を手軽に覗けるのも、ピッシンヌナチュレルの大きな魅力だ。

ただいっぽうで、死んだサンゴも見られた。原因のひとつは、地球温暖化にともなう海水温の上昇だといわれている。温かい海にすむサンゴは、1.5℃の地球温暖化によって現在より70~90%が失われてしまう可能性が指摘されており、2℃の温暖化では99%以上が死滅してしまう恐れがあるといわれる。

私たちの何げない日常行動が地球温暖化を加速させ、遠く離れた美しい島の生き物たちの未来を左右しているかもしれない。そのことに私たちは気づくべきだろう。自分ごととして、エネルギーや環境のことを捉えていきたい。

協力:ニューカレドニア観光局、エアカラン

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