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健康にも環境にも理想的な「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」献立リスト
健康にも環境にも理想的な「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」献立リスト
LIFE STYLE

健康にも環境にも理想的な「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」献立リスト

気候危機というグローバルな問題に、いま私たちは何をすべきなのでしょう。今回は、人間の健康にも地球環境にも理想的な食のガイドライン「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」に注目し、料理家の山戸ユカさんにお話しを伺いました。

▼プラネタリー・ヘルス・ダイエットの基礎知識はこちら

一日3食の献立は、こんなふうに

人間の健康にも地球環境にも理想的な食のガイドライン、プラネタリー・ヘルス・ダイエットを参考に、料理家の山戸ユカさんが考案したワンプレートランチ。環境に負荷を与えすぎず、栄養バランスも保てる量の肉や乳製品、たっぷりの野菜や豆、フルーツで構成した彩りも美しいひと皿

日本ではまだ耳慣れない「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」という言葉。地球環境と私たち自身の健康をヘルシーに保つための食生活の指針を提唱したものだ。今回、この考え方を参考に献立の提案をしてくれたのは料理家の山戸ユカさん。15年以上前から料理教室や雑誌などで玄米菜食のレシピを提案してきた。

最近は地球環境のことを考えてヴィーガンになる人も増えてきたが、山戸さんが玄米菜食を始めたきっかけは身土不二(しんどふじ)という食の考え方に触れたこと。身土不二は仏教の教えで「身と土、二つにあらず」、つまり人間の体と人間が暮らす土地は一体で、切っても切れない関係にあるという意味。それが明治期の食養運動のなかで、「人間が足で歩ける身近なところで育ったものを食べ、生活するのがよい」という食の思想へ発展した。

「いまは世界中でつくられたものを季節問わず食べられる時代ですが、少し前の食生活は身土不二そのもの。ビニールハウスも輸送網も、便利なものがないなかでは季節ごとに近所でとれる作物や、自分で育てたものを食べるしか方法がなかったわけです。でも考えてみたら、それってすごく理にかなっている。わざわざ遠くから季節外れの作物を運んでくるより、近くで手に入る旬のものを食べたほうが楽だし安いし、きっと環境にもいい。それで実践してみようと思ったんです」

玄米、野菜たっぷり味噌汁、アジの干物、青菜のおひたし、納豆、切り干し大根とワカメの煮物、梅干し、漬物

食生活を変えてしばらくすると、体が軽く感じ、肌や髪の調子もよくなった気がした。何より旬の作物はおいしく、食卓から季節の変化を感じ、豊かな心持ちになれた。山戸さんは東京から山梨県北杜市に移り住み、2013年に玄米菜食を中心としたレストラン「DILL eat, life.」をオープン。地元の有機農家らがつくる旬の食材をつかい、その土地と季節を感じられる料理を提供している。

「今回、プラネタリー・ヘルス・ダイエットの考え方を学んで、身土不二に通ずる部分が多いなと感じました。過剰な畜産やそれに付随する穀物生産などは、近代化に伴う食生活の変化に対応しておこなわれてきたもの。でも専門家らが言うとおり、栄養学的な観点から見れば、赤身肉はそこまで大量に摂取する必要はないですし、事実、かつて日本人はほとんど赤身肉を食べない生活をしてきました。山に暮らす人は豆、海に暮らす人は魚といったふうに、その土地土地でとれるものからタンパク質を摂ってきたわけです」

肉は主役ではなく、名脇役
ムリなく変える食習慣のコツ

キドニービーンズとナスの全粒粉パスタ、野菜スープ、季節のサラダ+ヨーグルトドレッシング

プラネタリー・ヘルス・ダイエットでは一日に摂取する食品の理想的な割合が数値として提唱されているが、忠実に守ることにこだわりすぎると、どうしても辛くなってくる。まずは割合を参考にしつつ、緩やかにルールを決めてみてはと山戸さん。

「3食のうち、動物性タンパク質をメインにするのは1食。必ず季節の野菜やフルーツを添える。豆腐や納豆などの豆類を積極的に摂る。砂糖で甘みをつけるのではなく、素材の甘みを生かす。お米は玄米に、パスタは全粒粉に変える。今回はこれらのことを頭に入れつつ、いまの時期に、できるだけ地域でとれるもので料理してみました。これが正解というわけではなく、山梨県に暮らす私が8月につくったらこんな感じ、ということ。皆さんも自分なりの献立を考えてみてください」

玄米、高野豆腐と季節野菜の中華風炒め、オクラとクリームチーズの春巻き、野菜の味噌風味ポタージュ、キュウリとワカメの酢の物、プラム

提唱されている理想的な割合では野菜中心の献立になる。肉が少ないと物足りない……という人に、こんなアドバイスを送る。

「野菜だけの料理は味けないとよく聞きますが、すこやかに育てられた野菜は、そのままでも十分おいしい。じっくり煮たり、炒めたり、ひと手間加えるとよりおいしくなりますが、その最適な方法は野菜によって違います。野菜本来の味を知って、調理法による味の変化を体感することで、野菜料理のコツがだんだんわかってきます。どうしても旨みをプラスしたい場合は、少しだけひき肉を加えるなど、ちょい足しを。これまで肉中心の食生活を送ってきた人にとって、肉は主役。でも今後は野菜を引き立てる名脇役だと思ってみては? 肉をゼロにする必要はありません。これまでとは少し役割を変えてみる。それだけで、食習慣は大きく、すこやかに変わるはずです」

PROFILE

山戸ユカ やまと・ゆか
料理家。山梨県北杜市で夫と「DILL eat, life.」を営む。無添加トレイルフード「The Small Twist Trailfoods」も展開。著書に『DILL EAT, LIFE. COOKING CLASS 野菜を美味しく調理するコツと、12か月の献立レシピ』(グラフィック社)など。

●情報は、『FRaU SDGs MOOK 話そう、気候危機のこと。』発売時点のものです(2022年10月)。
Cooking:Yuka Yamato Illustration:Satoshi Ogawa Photo:Tetsuya Ito Text & Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子

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