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世界初! 陸上でのサンゴ養殖に成功した沖縄「さんご畑」で、海との共存を学ぶ
世界初! 陸上でのサンゴ養殖に成功した沖縄「さんご畑」で、海との共存を学ぶ
NATURE

世界初! 陸上でのサンゴ養殖に成功した沖縄「さんご畑」で、海との共存を学ぶ

国内外から多くの旅行客が訪れる沖縄県。青く美しいサンゴ礁の海、多様性に富んだ動植物が生きるやんばるの森、沖縄そばやゴーヤチャンプルーなどの沖縄料理、三線(さんしん)や島唄などなど、魅力あふれる観光コンテンツがたくさん揃っている。そんな南の島で推進されているのが「エシカルトラベルオキナワ」。「おきなわ みらいへつなぐ旅」をコンセプトに、人や社会、環境に配慮した優しい観光先進地を目指すプロジェクトです。いち早く同地でのエシカルトラベルを体感すべく、シーズンオフの沖縄へ! まずは、サンゴの養殖で世界的に注目をあつめている、読谷村の金城浩二さんを訪ねました(前編)。

ーー後編はこちらーー

陸上でサンゴを育て、海に還す

沖縄本島の中部に位置する読谷村(よみたんそん)。日本一人口が多い村として知られているここは、多くのダイビングスポットや残波岬、「やちむんの里」など観光スポットもたくさんある。そのひとつ「さんご畑」は、世界中から注目を集めている“陸上のサンゴ礁”。サンゴはじめ海中生物の養殖や移植、海への還元代行をおこなう企業だ。代表の金城さんによると、2005年当初は「陸上に、人工のサンゴ礁なんてつくれるわけがない」と、誰も相手にしてくれなかったという。

「『サンゴを養殖するなんて、バカなんじゃないか』とまで言われました。ただ、沖縄の海のサンゴは激減していて、僕が子どものときの数が100だとしたら、いまは10くらいしか生きていない。昔は『沖縄では、お金がなくても海さえあれば生きていける』といわれたほど豊かだったこの海が食い潰されてしまっているんです。このまま何もしなければ、自分が一番後悔する。そう思って、サンゴを増やすための取り組みをスタートさせました」(金城さん、以下同)

さんご畑では15年ほど前から養殖サンゴの植えつけ体験を実施。植えつけられたサンゴは海に還され、新たなサンゴ礁が形成されていく

サンゴ礁は「たくさんのサンゴによって形成される地形」のことをいう。植物だと思われがちなサンゴだが、じつは動物で、クラゲやイソギンチャクの仲間だ。植物プランクトンである褐虫藻を体内に飼っており、褐虫藻が光合成して得た栄養分を吸収するほか、触手をつかってプランクトンを取り込み生きている。

「取り込んだ養分が余ると、サンゴはそれを海中に排出します。すると、それをもとめてプランクトンが集まり、プランクトンを食べる稚魚が住むようになる。サンゴ礁は、海の中のジャングルみたいな役割を果たしているんです。地球の70%は海に覆われています。サンゴ礁が占めるのはその0.1%だけです。けれどもそこに多種多様な生きものが集まってくる。海洋生物の多くが依存しているサンゴ礁は、生態系を育む場所なんです。つまり、サンゴが死ぬと、海の生態系が崩れてしまうんですよ」

実際、サンゴの減少とともに、漁業においては漁獲量も獲れる魚の種類も大きく減っていると金城さん。

「サンゴはもともと、栄養分がない環境で、自ら栄養分をつくり出しながら生きていく動物。なのに、陸にある畑から土や養分が海に流れてきて富栄養化(=栄養が過多になってしまうこと)すると、サンゴは死んでしまうんです。ただ、サンゴが死んで骨格だけ残ると、そこに50種類ほどの海洋生物が集まり、住みつきます。サンゴは死後もなお、命のゆりかごなんです」

「沖縄はサンゴ礁が隆起してできた島。サンゴがなかったら、この島はできてなかった。沖縄になくてはならない生き物なんです」と金城さん

約20年にわたって、サンゴの養殖を通じて環境問題に向き合ってきた金城さん。自然を保護するためには、自然への考え方が重要だと感じている。

「現代の日本人は、自然と暮らしを分けて考えているんですよね。でも本来は、人間の暮らしぶりを表しているのが自然。人間の関わり方がよければ、自然はキレイに保たれるんです。世界自然遺産に登録されている場所でも、じつは『手つかずの自然』はほとんどなく、人の手が入りながら豊かな自然が保たれてきた。環境を守るには、そのまま放っておくのではなく、適度に手を入れることが重要。養殖したサンゴを海に戻すと『そんなことはすべきではない』という人たちがいるんですが、このまま放っておくとサンゴは減る一方でしょう」

「自然を学ばなければ、守れない」

サンゴの養殖は、まったく未知の世界だったという。当初、金城さんは、無菌状態のラボをつくり、そこで大切に育てたサンゴを海に還すことからスタートした。

「やがて、無菌状態で育てたサンゴを海に戻すと、魚たちにバリバリかじられて死んでしまうことがわかりました。そこでサンゴを養殖している水槽に魚も一緒に入れることにしました。養殖中、魚から適度にかじられたサンゴは、海に還っても不思議と過度にかじられなくなる。最初は海の中につくったカゴの中でサンゴを守っていましたが、いまではそんな必要はなくなりました。『自然を学ばずに、自然を守るのはムリなんだな』と実感しています」

ディズニー映画で世界的な人気者になったカクレクマノミは、サンゴ礁で暮らす生きものの代表格。毒を持つイソギンチャクに暮らし、外敵から身を守っている

美しい海を望む高志保の浜にある金城さんの「さんご畑」。サンゴ礁を模した水族館のような建物も水槽も循環排水設備も、すべて手づくり。いまでは地域の子どもたちから海外の研究者まで、多くの見学者が訪れる

ラボで過保護に育てたサンゴは、荒れた海に入れると死ぬとわかった。それなら、自然環境に耐える力を持つサンゴをつくって植えよう、と一念発起する。

「子育てにも通じるところがありますよね。子どもたちのストレスを排除しながら育ててしまうと、社会に出てから耐えられない。ストレスに勝つ力を育まないとダメなんですよね。無菌で育てたサンゴに比べると、スパルタで育てたサンゴは、成長は遅いし見てくれもよくない。でも、そうしたサンゴを海に植えると、生き物が集まってくるんです。いろんな種類のサンゴを植えるんですが、どの順序で植えるかによって、サンゴ礁のでき方も変わります。きちんと考えながら植えることで、生態系をリセットできるんですよ」

――後編では、サンゴ畑の「中身」に迫りますーー

photo&text:萩原はるな

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