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ごまで、世界をしあわせに。江戸時代創業の老舗、かどやが挑戦するアフリカの農家支援プロジェクト
ごまで、世界をしあわせに。江戸時代創業の老舗、かどやが挑戦するアフリカの農家支援プロジェクト
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ごまで、世界をしあわせに。江戸時代創業の老舗、かどやが挑戦するアフリカの農家支援プロジェクト

世界と社会をよりよくする取り組みを始めた企業を前後編で紹介する『Doing Good Company』。第5回は現在アフリカのごま農家支援プロジェクトに取り組んでいる、安政五年創業(1858年)のかどや製油株式会社の登場です。前編はかどや製油株式会社が考えるサステナビリティとアフリカの農家支援プロジェクトをスタートした経緯について紹介します。

撮影/徳山喜行 インタビュー・文/水谷美紀

ごまで人と地球を幸せにするために

黄色いキャップが目印の「かどやのごま油」で知られる、かどや製油株式会社。江戸時代からごまひと筋に取り組み、ロングセラーのごま油や食品ごま等で日本の食を支えてきました。近年では業界初である特定保健用食品(トクホ)のごま油を発売するなど、新しい時代に沿った提案もおこなっています。
約160年以上もの間、ごまを通じて多くの人を健康で幸せにすることを目指してきたかどや製油株式会社が、今度は未来につながる持続可能な取り組みとして、アフリカのごま生産者を支援するプロジェクトをスタートさせました。そこで、前編では取締役常務執行役員で国内事業と海外事業を管掌する中山裕章さんにインタビューをおこない、かどや製油株式会社(以下「かどや」)のSDGsに対する考えとプロジェクトを始めた経緯についてうかがいました。

――ごまで日本の食卓をずっと支えてきたかどやが、今度はアフリカの農家を支援するプロジェクトを始めたそうですが、どのようなプロジェクトなのでしょうか。

中山:2021年からかどやがサステナビリティの一環として取り組んでいる生産者支援のプロジェクトです。具体的にはごまの輸入元であるタンザニアとナイジェリアの小規模なごま農家を対象に、現地で農業指導をおこなっています。これまで独学で栽培をしていた農家の方々に栽培指導を含めた営農指導をおこなうことで、ごまの収量・品質を改善して安定した供給ができるようにし、すべてのごま農家の方々の収入を上げることを目指しています。

――このプロジェクトを立ち上げた経緯をお聞かせいただけますか。

 中山:一般的にはあまり知られていませんが、現在ごま油や食品ごまなど日本で消費されているごまのほぼ全量が海外からの輸入ごまです。かどやも年間約7万トンものごまを輸入しています。輸入されているごまの主な生産地はアフリカや東南アジア、中南米の国々で、特に日本では約8割をアフリカの国々に頼っています。

実はごまの生産は、非常に非効率で手間がかかります。作業が機械化されにくく、刈り取りなどの工程もほとんど人の手でおこなわれるため、現在、日本国内でごまはほとんど栽培されていません。つまり私たちごまメーカーは、実はアフリカのごま農家の方々によって支えられているのです。この点をもっと突き詰めて何かできることはないかと考え、SDGsの流れに沿って「メーカーである私たちにできる生産者支援とは何か」について社内で検討を重ねた結果、今回のプロジェクトにたどり着きました。

「農家の方々がいてこそ、かどやがある」という想い

――プロジェクトがおこなわれる以前の農家の様子はどのようなものだったのでしょうか。

中山:かどやは東アフリカの国と西アフリカの国からそれぞれごまを輸入していますが、東アフリカにあるタンザニア、西アフリカにあるナイジェリアの農家とも、ほとんど独学で栽培をしており、同じ課題を抱えていました。ごまを栽培している場所の多くは土地が非常に痩せています。そのため他の植物を育てることが難しく、何も育てないよりはと考えてごまを栽培しているような農家もたくさんありましたし、貧しさから途中で離村したり離農したりする人もいます。そのためごま栽培に関する知見やデータが蓄積されず、収益や収量も上がらないという悪循環に陥っていたのです。

ごま農園の風景

――プロジェクトの内容に営農指導を選んだ決め手は何だったのでしょう。

当初、社内でごま農家をどう支援しようと話し合ったとき、農耕機具を援助しよう、灌漑設備を作ろう、あるいは電気を引いたり学校を作ったりしようといった、さまざまなアイデアが出ました。そのなかで最終的に営農指導をおこなうことに決まったのは、まず何より単位面積あたりの収量を向上し、中長期的に農家の収入を増やすことが重要だと考えたからです。さらに、生産地とのコミュニケーションを通じて農家の方々に「自分たちはとても大切なものを作っているんだ」という気持ちを持っていただくことも重要だと思いました。収入が上がり、自分の仕事に誇りを持つことができれば、さらにごま栽培に対するモチベーションが上がるだろうと考えたのです。

農機具を送るなど一時的なサポートをすることももちろん大切ですが、我々は中長期的に農家に寄り添い、課題の解決を一緒におこなうことが必要だと考えており、このように大規模で長期に亘るプログラムを継続しておこなっている会社はありませんでした。それならかどやでやろうということで、このプロジェクトを実施することに決めました。

我々はごまなしでは事業を継続できません。これまで約160年以上ごまひと筋に生きてきましたが、これからの100年、200年先もごまとともに生きていくためには、アフリカの農家の方々にも豊かになっていただき、ごまが継続して安定供給されることが欠かせないと考えています。

アフリカのプロジェクトは、主要調達先のタンザニア及びナイジェリアのごま農家約4000軒を対象とした営農指導を1年スパンでおこないました。ちょうど1年目が終了し、現在2年目に入っています。

目指したのは農家の支援と、教育環境の向上

――現地では子供たちの教育環境も気になったとか。

中山:はい。プロジェクトを立ち上げる以前から何度か現地を視察していて、タンザニアやナイジェリアの農家の方々と話をする機会もありました。そのときに話題になったのが、子どもの教育のことでした。親として子どもに少しでも良い教育をつけさせ、場合によっては農村から旅立って、より良い暮らしを手に入れて欲しいと潜在的には思っている一方で、生活が安定しないと子どもに良い教育を受けさせることができない。多くの農家の方々が、そんな葛藤を抱えていました。

ビジネスパートナーであるごま農家に対して、我々は責任があると思っています。自分たちの事業を未来永劫続けたいからという動機ももちろんありますが、それと同等に、ごまを通してすべての人に幸せになってもらいたいという願いは、日本に暮らす自分たちだけでなく、アフリカの農家の方々の生活が向上し、親も子も幸せになることも意味しています。そこで何ができるか考えた結果、農業支援にたどりついたのです。

ごまの無限の可能性と幅広い取り組みを伝えたい

――プロジェクト以外にも将来的にさまざまな取り組みを計画されているそうですね。

中山:かどやというと、どうしてもごま油だけの会社だと思われがちですが、ごま油以外にも「食品ごま」や「ねりごま」などさまざまな商品を販売しています。また、SNSなどを通じて、お客様とのコミュニケーションも積極的におこなっています。今回のプロジェクトも含めて、かどやのそんな想いや幅広い商品、さまざまな取り組みをもっと多くの人に知っていただくことが、「ごまで、世界をしあわせに」という、当社のミッションにつながると信じています。

今回のプロジェクトも、当社だけの力ではできません。サプライチェーン全体でサポートし、消費者の方々にも共感していただき、ファンになっていただくことで、非常に良い循環が生まれると思います。消費者の方々も、今後もし、かどやのごま油をお使いいただくことがありましたら、「そういえばこのごまはアフリカで作られているんだな」「農家の人が苦労して手で収穫しているんだな」とちょっと考えていただけたら嬉しいです。

かどやは江戸時代に小豆島で創業してから約160年以上、ごまひと筋に歩んできました。これからも愚直な姿勢は変わりません。そして、これまで以上に、ごまの無限の可能性と、持続可能な未来に向けてのさまざまな取り組みをもっとたくさんの方に伝えていきたいと思います。

後編では海外事業本部の鈴木由真さんに、アフリカのごま農家支援プロジェクトの詳細をうかがいます。

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