おいしいコーヒーA to Z② 「キリマンジャロ」「モカ」と「ブレンド」は豆の種類が違う! さあ、自分だけの“ご褒美コーヒー”を見つけよう
産地による農法や、栽培している豆の種類の違いについてお伝えするこのシリーズ。後編では、アラビカ種とロブスタ種の味の違いだけでなく、産地ごとの味わいに迫ります。教えてくれるのは、世界中の農園からコーヒー豆を買いつける商社で、その道ひと筋30年という町田武陽さん。それぞれの特徴を知れば、きっと自分好みの一杯が見つかるはずです。
豆そのものを味わう高品質のアラビカ種、ブレンドの名脇役を担うロブスタ種
長年コーヒー事業の責任者を務めている町田さんは、世界中のコーヒーを日本に紹介してきた。前編で教えてくれたように、コーヒーには大きく分けてアラビカ種とロブスタ種の2種類があるという。
「ブラジルをはじめとする中南米では、高品質のアラビカ種を中心に栽培しています。一方、ベトナムなど東南アジアでは、より育てやすいロブスタ種が主流です。かと思えば同じアフリカでも、エチオピア、ケニア、タンザニアはアラビカ種が多く生産され、その南のウガンダではロブスタ種が主となっています」(町田さん、以下同)
「キリマンジャロ」「グアテマラ」「モカ」など単一の豆の味わいを楽しむコーヒーは、ほとんどアラビカ種だそう。広く一般的に飲まれている「ブレンド」が多く、ロブスタ種とアラビカ種を組み合わせたコーヒーだ。
「香りや酸味が楽しめるアラビカ種とは違って、ロブスタ種は苦みと渋みが強いため、ロブスタ100%のコーヒーというのはほとんどありません。ただし、少量の豆でコーヒーならではの風味を出せるので、インスタントコーヒーや缶コーヒーに多くつかわれています。またロブスタ種は安価なので、ブレンドコーヒーにも必要不可欠。アラビカ種とどう組み合わせて味づくりをするのかが、各社の腕の見せどころといえるでしょう」
世界各国を飛び回り、コーヒーの生産者と向き合いつづけている町田さん。「コロナ禍前は年に数回産地を訪れていました。2022年にやっと海外出張を再開でき、2023年5月にはベトナムへ。成長著しい同地ならではの、旺盛なエネルギーを感じました」
そもそもロブスタ種の生産国として有名だったのは、東南アジアのインドネシア。けれども1990年代半ばから後半にかけて、ベトナムが国をあげてロブスタ種生産をスタートさせた。いまやベトナムは、世界ナンバーワンのロブスタ種生産国だ。
「ロブスタ種の生産において、もうひとつ無視できない存在になってきているのが、アラビカ種生産第1位のブラジルです。近年は、ロブスタ種の生産がかなり伸びてきているんですよね。ロブスタ種の育てやすさが理由のひとつですが、ブラジル国内のコーヒー消費があがっていることも大きいと見ています。ブレンドや加工度の高いインスタントコーヒーなどで、ブラジル国産のロブスタ種が活躍しているのでしょう」
ベトナムのコーヒー農園。拓かれた当初は国営企業の輸出業者が中心だったが、規模が大きくなった近年では外資系の輸出業者も増えている。「国民の平均年齢も若いですし、非常にパワーがある国。実際に訪れてみて、急激にコーヒー生産および輸出が広まった理由がわかった気がしました」
豆の個性を楽しめるアラビカ種では、同じルーツをもつ豆でも、産地ごとにまったく違う味わいをもっている。さらに言えば、同じ農園でも育った場所やその年の気候に応じて、味わいが変わってくるという。まるでワインのような、奥深い世界なのだ。
「まずは、私が5年半駐在し、思い入れの強いコロンビアの豆から。『コロンビアマイルド』と評されるだけあって、まろやかでスッキリした味わいが特徴です。ほどよい酸味もあって、リフレッシュ時の一杯のぴったり。続いてコーヒー大国・ブラジルの豆ですが、こちらは酸味を抑えた重厚な味わい。日本ではコーヒーの酸味が苦手な方が多いので、ブラジルのものは飲みやすいと感じるはずです。『モカ』として知られるエチオピアの豆は軽やかでスッキリした口当たりで、少し酸味を感じる一杯。こちらも日本人好みのコーヒーです。インドネシアの豆は『マンデリン』と呼ばれており、重厚ながら適度な酸味が特徴。華やかな香りで、気分転換にもってこいの一杯です」
豆の種類、焙煎、粉砕、抽出法によって無限に広がるコーヒーの世界
それぞれの産地による豆の個性を知ると、TPOやそのときの気分にフィットする一杯がチョイスできるようになる、と町田さん。
「ふだんづかいはブラジルで、リフレッシュしたいときにはインドネシア……などというスタイルができれば、コーヒーを飲んだときの満足度がアップするでしょう。同じ豆でも焙煎、粉砕、抽出方法によって、味わいはまた変わってきます。そんな違いも、ぜひ楽しんでいただきたいですね」
かつて喫茶店で味わうものだったコーヒーは、カフェやコンビニにまで裾野が広がり、さまざまなフレーバーが楽しめるようになった。
「いろいろな人が、それぞれの楽しみ方でコーヒーを飲む時代になりました。さまざまな産地に思いを馳せながら、ぜひ自分だけのスペシャルな一杯をみつけてみてください」
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