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なぜいまウケている? “無人の古着ショップ”
なぜいまウケている? “無人の古着ショップ”
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なぜいまウケている? “無人の古着ショップ”

コロナ禍の影響で「リアル店舗での買い物がしにくくなってしまった」という声も聞かれるなか、都内にオープンした“無人の古着店”が注目を集めています。店員がいないからこその気軽さ、そして状態がよく、つかい回しのきくリユース品が安く買えるとあって、若者から高齢者まで幅広い世代が店を訪れています。今回はオープンしたばかりの吉祥寺店にお邪魔しました。

コロナ禍が生んだ、新しいショッピングスタイル

入り口の看板に目を留め、「へえ、無人の古着屋だって」と店内に入る2人連れ。吉祥寺駅から徒歩4分、井の頭公園へと向かう道沿いにある『SELFURUGI(セルフルギ)』吉祥寺店には老若男女問わず、さまざまな客がフラリと入っていく。

コンクリート打ちっぱなしの壁にはポップなイラストが描かれるなど、オシャレな雰囲気

無人の古着店SELFURUGIは2021年12月、東京・池袋に1号店をオープンした。開店1ヵ月で黒字化に成功、22年5月にはザ・ビッグ昭島(イオンモール、同・昭島市)に2号店を出店。吉祥寺店は9月2日にオープンしたばかりの3号店で、こちらは年間365日、24時間営業だ。運営する合同会社AEVNDの南雲宏樹代表に話を聞いた。

無人の古着店を経営するAVEND代表、南雲宏樹さん

「2020年1月に私の長男が生まれたのですが、その頃から新型コロナウイルスの感染が広がり、4月には緊急事態宣言が出るなど、子どもを連れての外出が非常に難しくなりました。買いものというのは日頃のストレス解消につながる側面もありますから、『非接触で、自分のペースで気軽に買い物ができるような店舗があれば』と考え、無人古着店のアイデアを膨らませていきました。

古着に着目したのは自分たちで仕入れができ、またある程度、売れそうな商品を選別できたから。実は私自身、これまで古着とはあまり縁がなかったのですが、そんな自分だからこそ、古着に親しみのない消費者にも受け入れられるような店舗づくりができるのではないかと思いました」(南雲さん、以下同)

吉祥寺店の店頭には、一着500円のラックが常設されている

店舗にスタッフを置かない理由は、オペレーションコストをできるだけ下げるという狙いから。

「オペレーションコストがかかってしまうと、今後、店舗を増やしていくことも難しくなります。ですから、無人で運営するのがいいだろうという判断しました。現在、スタッフが品出しや売り上げの回収などで店舗に滞在する時間は、週5~8時間と最低限にしています」

店はガラス張りで、店の奥まで見通せるのがポイントだ。

「無人という時点ですでに入りやすいかと思いますが、店内が見えると、より安心ですよね。どの店舗も明るくこぎれいなしつらえにして、入りにくさを解消しています。また周囲からの視認性が高いので、万引きなど犯罪防止にもつながっているかな、と思います」

豊富なラインナップから、自分好みのアイテムを探し出すのが楽しい

品揃えは各店舗の所在エリアを考慮しており、3店でガラリと異なるという。

「1号の池袋店はメンズとレディース&キッズが半々で、ブランド商品の比率が高く、価格帯は3000~5000円が中心。CHUMSのようなカジュアル系のバッグも500円で置いています。2号の昭島店は高齢者の利用率が高く、コストに対する意識もよりシビアな方が多いので、ノーブランドでデザイン性が高い、価格帯500~1000円の商品が9割、ブランド品は1割です。吉祥寺店は店舗が狭く服を置けるスペースが限られていることもあり、3000円台のメンズのブランド系トップスが主力商品です。最近はメンズを着用される女性も多いので、女性の購入者も多いですね。そのほか、レディースのワンピースも少し置いています」

バーコードが入った黄色のタグをセルフレジにかざして、お会計

さっそくラックをチェックしてみると、コム・デ・ギャルソン、ポール・スミス、アニエス・ベーなどのTシャツや襟つきシャツを発見。いずれもシンプルなデザインで、普段づかいしやすそうだ。

「一般的な古着はアメリカやタイから大量に仕入れることが多いのですが、ウチはバイヤーがひとつ一つの商品を確認し、キレイで状態のいいものを仕入れています。古着になじみのない方は『古着といえばヴィンテージのジーンズ』などと、マニアックな商品を想像されるようですが、当店は古着好きはもちろん、古着を買ったことがないお客さまにも来ていただきたいと考えているので、ワードローブに採り入れやすいシンプルなデザイン、スタンダードな形のアイテムを揃えるようにしています」

店内には、利用者がコメントを寄せるコミュニケーションボードが設置されている。「ここから運営のヒントをもらうことも多い」と南雲さん
 

SELFURUGIを通じ、より多くの人に古着に目を向けてもらえば、と南雲さん。

「いま、アパレルの二次流通がものすごいスピードで成長しています。フリマアプリの盛り上がりなどもあり、以前に比べて、人々の『古着を買うことへの抵抗感』が薄れていることを感じます。服の製造プロセスではCO2が多く排出されるなど、環境負荷が問題になっています。そういった点でも、リユース品の社会貢献度は非常に高い。

ですから、古着のマーケットは今後の成長性が高いと思っています。いままで古着に関心がなかった方が、SELFURUGIで古着と出合い、古着を楽しむという選択肢をもつキッカケになればうれしいです」

photo、text/木下千寿

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