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町工場&商店街に「稼ぐ力」を!大田区の「SDGs副業プロジェクト」
町工場&商店街に「稼ぐ力」を!大田区の「SDGs副業プロジェクト」
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町工場&商店街に「稼ぐ力」を!大田区の「SDGs副業プロジェクト」

羽田空港を擁し、古くからの町工場や商店街がひしめく東京・大田区。そんな自治体が進める「大田区SDGs副業」第2期プロジェクトが、この9月にスタートしました。コロナ禍以降、区内の商店街、町工場の「稼ぐ力」は停滞、区としても何とか支援しようと努力しましたが、いかんせん手が足りません。そこで──大田区がスタートさせたのは、太田区役所の外に人材を求める試み。大田区に思い入れがあり、ビジネスやデジタルに知見のある副業・兼業者を全国的に募集したのです。結果、第1期プロジェクトにはのべ440名もの応募があったといいます。プロジェクトの現場で奮闘する人たちに、取り組みの内容や成果を聞いてみました。

「大田区で副業しませんか」

大田区は23区でもっとも面積が広く、人口は政令指定都市並みの74万人、4200もの町工場と140の商店街がある巨大な自治体だ。この大田区で2021年秋、あるプロジェクトが立ち上がった。「大田区SDGs副業」プロジェクト。コロナ禍を経て苦境に陥った区内の商店街や一部の町工場などの課題解決のために「力になりたい」という思いをもつ、さまざまな分野のエキスパートを「大田区で副業・兼業しませんか」と、全国から幅広く募集したのだ。そして区とともにこのプロジェクトを進めているのが「ONE X」。日本を代表する大企業50社の若手中堅社員の有志が集う「ONE JAPAN」から生まれた一般社団法人だ。

第1期プロジェクトの成果のひとつ、蒲田東口商店街の「フラッグ広告」。以前は、このスペースを自治体などに無料貸ししかしていなかったが、プロジェクトの一環で有償化、今年2月には、こんな広告で商店街がオレンジ色に染め上げられた
 

「私は大田区在住で、コロナ禍によって自宅近くの飲食店や、近所の町工場が廃業していく姿を目の当たりにしていました。何か自分にできることはないか、大好きな大田区に還元できないか、と考えていたのです」

とは、ONE Xの共同代表理事・濱本隆太さん。

「まずは大田区の町工場、商店街を訪ね、現場の課題を拾い上げることからはじめました。そこで明確になった課題をビジネス視点で解決する方法を大田区に提案しました。結果、役所のみなさんと大田区SDGs副業プロジェクトをスタートすることになったのです」(濱本さん)

「上から目線」ではダメ!

濱本さんと同じく共同代表理事を務める太谷成秀さんも語る。

「自治体が外部の副業人材を活用するという取り組みは長野県塩尻市が先駆けで、2016年から実践されています。私は塩尻市の取り組みに参画していましたので、大田区では、それをブラッシュアップさせて進めていこうということになりました」(清水さん)

2021年9月からの第1期プロジェクトには、延べ約440人が応募。ONE Xが実施してきた過去の近しいプロジェクトでも、ダントツの応募数だった。応募者の多くは大田区在住か勤務、または近隣地域に住んでいる、区に縁があって、区を愛している方が多かったという。

商店街のアーケードには広告スペースがあるが、以前はほとんどつかわれておらず、まさに「遊休資産」となっていた
 

第1期応募者を面接したのは、大田区産業経済部の職員とONE X。応募者を書類選考で絞り、面接を進めた。面接では「地域の役に立ちたい」という思いとともに、「商店街や町工場のみなさんと目線の高さを同じにして協働できる人かどうか」を重視したという。     

応募者のなかには、さまざまな企業のコンサルタントとして実績があったり、マーケティングや新規事業開発、セールス営業として優秀な成績を残していたりと、申し分のない経歴の方もいた。しかし今回の案件では、町工場や商店街のみなさんに対して『アドバイスをしてやる』『言ったとおりにやれ』という上から目線で接するような人ではむずかしい。あえて経歴や実績だけを見るのではなく、大田区への想いや人柄を重視して、最終的に採用者が決められたという。

大田区SDGs副業を推進するONE Xの拠点、天空橋駅直結の商業施設「HI City」

成果を上げた2つのプロジェクト

そして立ち上げたのが「稼ぐ力の向上」のための2つのプロジェクト。蒲田東口商店街での「商店街遊休資産活用」プロジェクトと、コロナ過で売り上げが落ちてしまった町工場のための「取引先拡大の仕組みをデザインする」プロジェクトだ。

前者は2022年2月に形になり、商店街に一定の利益をもたらしたばかりでなく、区内の他の商店街のモデルケースにもなった。後者は「SmaFAQプロジェクト」という、より広範な試みに形を変えている。次回はこれらプロジェクトについて、詳しく紹介することにしよう。

text:奥津圭介

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