世界のサステナブルな情報を紹介するfrom the WORLD。ブラジルからはサンパウロ在住の石原桂さんが、前編に引き続きアマゾンの熱帯雨林を守るためのアグロフォレストリー農法を紹介。後編では実際にアグロフォレストリー農法でコーヒーやカカオの栽培に取り組む様子をリポートします。

前編はこちら

チョコレート、と聞くだけでなんとも幸せな気持ちになる人も多いはず！あのほろ苦い甘さの口どけと広がる香り、老若男女、甘いものが苦手な人でもチョコレートは格別の存在です。最近ではカカオポリフェノールに注目が集まり、チョコレートは嗜好品としてだけではなく、健康効果にも期待が高まっています。最近の高濃度カカオチョコブームや、カカオ本来のフルーティで豊かな味わいを楽しむBean to Barなど、チョコレートの魅力は尽きません。その原材料であるカカオの多くは西アフリカ、東南アジア、アマゾンの熱帯雨林が主な産地です。

森林を守りながら、自然の風味を生かすチョコレートづくり

アマゾン熱帯雨林の約45％の森林が集中しているブラジル・アマゾナス州にあるマニコレ市で、カカオをアグロフォレストリー農法で栽培し、チョコレートを製造する取り組みがなされています。カカオ栽培は強い日差しを遮る木かげと受粉を助ける虫を必要とし、さらに土の水分量が高いほうが望ましく、まさに熱帯雨林に適した作物。またカカオの木は落ち葉がたくさん出るので、他の木々や農作物の腐葉土のもとにもなるのです。

現地では森林を守りながら農家の安定した収入源となるカカオをめざして、収穫後の工程で最も大切な発酵の技術を高めるために、農家と地元の製造工房が共同で研究を重ねています。

アマゾンの森林を切り土地を開墾することなく、むしろ森林に守られながら実をつけるカカオの自然な味わいを想像したら、きっとチョコレートの印象がまたガラリと変わってくるかもしれません。本来カカオは大規模な工場で大量生産される、チョコレート製品の規格に合わせた工業型農作物ではないはずです。カカオが熱帯雨林の果実のひとつだと実感できる、サステナブルで美味しいチョコレートを選ぶことも、わたしたちの世界と社会をよくしていくちょっとしたアクションにつながる気がします。

一杯のコーヒーが森林再生につながるしくみ

日本では世界中のコーヒーを気軽に味わえるカフェスタンドや、おうちで本格的なコーヒーが楽しめる道具類が増え、コーヒーは日本人の暮らしに欠かせない飲み物ですね。
ブラジルの代表的な輸出品目でもあるコーヒーの主な産地はミナスジェライス地方が有名ですが、アマゾン熱帯雨林でもアグロフォレストリー農法でのコーヒー栽培がスタートしています。

低木で栽培するコーヒーは、高い木を生かしたアグロフォレストリー農法にもってこいの農作物。そこで長年にわたり森林伐採に頭を痛めてきたアマゾナス州アプイー市では、2012年から地域全体でアグロフォレストリー農法を実践し、アマゾンに自生する苗木を植えながらコーヒーを栽培、収穫したコーヒー豆を共同で乾燥加工して国内外に出荷しています。この取り組みで10年後には200ヘクタールの開墾地が森林になると見込まれています。

森の番人が生み出すコーヒー

またブラジルを代表するコーヒー製造メーカー、3Corações社が2018年からロンドニア州の先住民たち（主にSurui族）と、アグロフォレストリー農法でのコーヒー栽培を始めました。コーヒーの専門家が集結し、栽培から指導をおこなったコーヒー豆は収穫後、最高の技術で加工選別され、マイクロロット先住民コーヒーとしてスペシャルティさながらの品質を生み出しています。

もともとは森の番人であるアマゾン先住民の知恵と力を借り、美味しいコーヒーを世に送り続けてきたノウハウを生かしながら森林の再生をはかるサステナブルな試みは、まさに最強のタッグといえます。アマゾンの森をつくるコーヒーと想像をふくらますだけで、より味わい深い一杯になりそうです。

取材協力
・Fazenda RobertoGomes de Lima
・Amamos Amazon
●公式ショップ
・Grupo 3 Corações “Projeto Tribos”
●公式サイト

石原桂

ブラジル・サンパウロ郊外在住。日本移民100周年のお祝いムードに沸く2008年に渡伯。翻訳業の傍ら、コーヒー、スパイス、アマゾンハーブ、ヴィンテージ食器、キッチン用品などの品々を扱い、日本へ発信中。

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