SHELLY×太田啓子が語り尽くす、世にも大事な性教育【中編】
社会的、文化的に形成された、ジェンダーという概念。心理的な自己認識や置かれた環境によって一人ひとりが抱く問題意識は違います。今回は、「これからの性教育」のテーマを軸に、タレントのSHELLYさんと弁護士の太田啓子さんに語り合ってもらいました。
被害者にならないと同時に
加害者にもならない教育を
SHELLY ジェンダー問題の解決を考えると、性教育は切り離せないもの。男女関係なく、男の子もピルや緊急避妊薬のことを知るべきだし、女の子もむきむき体操(包皮翻転)を知るべきだと思います。自分の選ぶパートナーが異性だろうが同性だろうが、まずは同じ社会に生きる者同士として学んで、理解し合うことが大切ですよね。
太田 いまの大人は、性教育を受けずに育っているから意識が薄いですよね。
SHELLY 私も性教育を受けられなかったひとりですが、自分が学ばなかったから子どもに教えられないでは、あまりに無責任だと思うんです。だから、親も学ばないとなって。
太田 本来、性教育は学校で教わるのがいちばんですが、今日、明日に制度が変わるものでもない。今は家庭で責任を持って教えるしかないですよね。私は本の力を借りることもあって。息子の前で性教育の本を開いて「ママも知らなかったことが知れて勉強になったわ。面白いよ」と置いておくんです。すると後日ちゃんと読んで、わからないことは聞いてくるようになりました。
SHELLY 素晴らしい! わが家は2~3歳からプライベートゾーンの話をしています。お風呂場で「水着で隠れる場所は、あなただけのもの。人に見せたり、触らせたりしちゃダメだよ。逆に人に見せて、触らせてってお願いするのもダメ」と。もし誰かに触られたら、すぐ報告するように教えるのも大切ですよね。子どもが性的な被害についてウソをつかないことは、心理学的にもいわれているんですよ。だから、子どもがSOSを出したときは、大人は「本当に?」とは絶対に言わないでほしい。一度疑うと、二度と伝えてくれなくなるんですよ。大人も咄嗟に対応するのは難しいので、私は「教えてくれてありがとう。あなたは悪くない」って言うと決めています。
太田 これって、決して女の子だけの話ではないですよね。男の子も、性被害の対象になりうる。
SHELLY 性被害を受けた子どもの男女比は、ほぼ等しいんですよね。
太田 うちは息子ですが、外でトイレに行く際は、ほぼ必ず誰かがつき添うようにしています。
SHELLY そうなんですよね。被害に遭わないようにする行動は大切。でも、性被害に関してはレイプされない生き方じゃなく、レイプしないことをもっと教えるべきだと感じます。そこも男女は関係ない。だって、女の子が被害者とは限らないじゃないですか。だから、うちでは娘が性的加害者にならないように「人に『やめて』を2回言わせたらダメ」というのを大事なルールとして教えています。あと、英語の「Boundary(バウンダリー)」の考え方って日本に必要だけれど、うまく表せる日本語が見当たらなくて。
太田 私は「自分がされてイヤなことはやめなさい」じゃなく、「相手がイヤだと言うことをしないように」とバウンダリーの考え方を教えています。相手を尊重しなさいって。
SHELLY 大事! バウンダリーは他者との境界線を自分で決めることで、自分の心を守ることにつながるんですよね。同時に相手のバウンダリーを尊重することも大事だなと思います。
PROFILE
SHELLY
1984年生まれ、神奈川県出身。2人の娘の母であり、MCやナビゲーターなど幅広く活躍。現在は『ヒルナンデス!』の金曜レギュラー、『今夜くらべてみました』のMCなどを務める。YouTubeで性教育チャンネル『SHELLYのお風呂場』を開設。
太田啓子 Keiko Ota
弁護士。離婚・相続等の家事事件、セクハラ・性被害などを担当する。2019年に『DAYS JAPAN』広河隆一元編集長のセクハラ・パワハラ事件に関する検証委員会の委員に。2人の息子の母。共著『日本のフェミニズム since1886 性の戦い編』(河出書房新社)。
●情報は、FRaU2021年8月号発売時点のものです。
Photo:Norio Kidera Styling:Kanako Sasada Hair & Make-Up:Junko Takahashi Text:Akiko Miyaura Edit:Yuka Uchida
Composition:林愛子