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高知東生「失敗しても終わりじゃない。人生はやり直せる!」
高知東生「失敗しても終わりじゃない。人生はやり直せる!」
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高知東生「失敗しても終わりじゃない。人生はやり直せる!」

薬物依存症を克服するために、治療を受け自助グループに参加している俳優の高知東生さんは、回復するにつれて考え方も価値観も変わったといいます。いきいきとしたその姿は、私たちに驚きと希望を与えてくれます。

身近な病気=依存症には
誰もがかかり得る

アルコール、ギャンブル、薬物などへの依存症は、誰でもなる可能性がある病気。しかし世間の理解が追いついておらず、依存症への偏見や誤解がまだまだ存在する。

俳優の高知東生さんは、自身が薬物依存症になり逮捕された経験から、依存症予防教育アドバイザーの資格を取得。自らの経験や正しい知識を伝えることで、依存症啓発活動を行っている。

「以前の僕は、とにかく根性論や精神論でなんとかなると思っていました。しかし逮捕され、依存症の治療するうち自助グループと出会っていくなかで、考えが大きく変わりました」

笑顔で取材を受ける高知さん。「依存症に向き合う前と後で、顔つきが変わった」と周囲から驚かれるという

そう語る高知さんは2016年に覚醒剤取締法違反と大麻取締法違反で逮捕された。

「事件は連日報道され、バッシングを受けましたし、それまでつき合いのあったほとんどの人と連絡が取れなくなりました。日本中のすべての人が僕を許してくれないように思い込み、外に出ることも怖くなりました」

裁判では有罪の判決が出て、執行猶予4年が言い渡された。

「執行猶予中の4年間はとにかく目立たず、おとなしくしているべきだと思っていました。思えば、自分が心から反省することよりも、反省している姿を世間に見せることに焦点を当てた考え方だった」

回復のために「12ステップ」と呼ばれるプログラムに取り組んでいる。本にはびっしりと書き込みされていた

そんなときに依存症の自助グループと出会う。自助グループとは、同じ依存症を抱えた人たちが集まり体験を共有し支え合う場所だ。

「仲間と出会えた安心とうれしさもありましたが、反面『一緒にしてほしくない』なんて気持ちもありました。それでも自助グループでメンバーの経験を聞くミーティングに参加していたら、他の人の経験談が心に刺さったんです。『こんなふうに感じていたのは僕だけではなかったんだ』と気づかされ、それだけですごく楽になりました」

自助グループでは、医師や専門家が治療をするわけではない。正直さが何より大切とされ、ありのままの自分の感情を分かち合うことで、人生が感情に振り回されないようにする。それから高知さんは、積極的に自助グループに参加し思いを話すようになった。一度話しはじめると、思いがあふれ、言葉が止まらくなったという。

12ステッププログラムは、ペアで話しながら進める

高知さんは、回復し続けるのに大切なことは治療、自助グループで取り組むミーティング、そして「12ステップ」と呼ばれるプログラムの3つだと話す。

「12ステップはアルコール依存症のために開発された回復プログラム。アルコールだけではなく、すべての依存症に効果があります。依存症であることを認めることからはじめ、必ず回復できると信じます。このような行動や思考を身につけていくんです。そのなかで、いままでの生き方や考え方を振り返っていき、認知の歪みにも気づきました。信じていたものがガラガラと崩れていくようで逃げ出したくもなりましたが、本気で生き直したいと思ったから向き合えた。結果的に回復に役立つ重要なプログラムでした」

自伝『生き直す 私は一人ではない』(青志社)では、壮絶な生い立ちや依存症からの回復について書いた。現在は小説を執筆中

自伝の執筆もこのステップのなかでおこなうことを決意した。父は暴力団の組長、母はその愛人だったという家庭環境や、薬物のことなど赤裸々に綴っている。

田中紀子さんとともにYouTubeで依存症に関する情報を発信

心境の変化に自分でも驚いているという高知さんは、回復の支援をし続けてくれたギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんとともに啓発活動をはじめた。全国各地での講演会、YouTubeチャンネル「高知東生とメンタルケアについて語る【たかりこチャンネル】」での配信、Twitterで配信している依存症をわかりやすく伝えるドラマへの出演など、活動は多岐にわたる。

「この社会は、自分に正直に生きることがとても難しい。ありのまま素直に生きることを忘れ、自尊心を失っていく。本来ならば自分が自分の一番の味方であるべきなのに、他者に評価されることが軸になってしまう。そんな生きづらさを抱え、思いを吐き出す場所もなく抱え込んでいたら、孤独になり視野も狭くなりますよね。ストレスを一瞬でも解消してくれるのが、アルコールやギャンブルや薬物だった場合、人は簡単に依存症になってしまいます。出自や性格、健康かどうかは関係なく、誰でも陥る可能性があるんです」

Twitterで配信しているドラマではギャンブル依存症の男を演じた

この社会の構造が、依存症の要因のひとつになっていると高知さんは指摘する。

「日本では人生で一度失敗すると、社会的に終わり。しかしハリウッドでは、依存症になった人が再起することがよくあります。その努力が賞賛されたり、同じ病気の人の励みになったりする。いくつになっても人生は変えられるということを、僕は回復し続けることで示していきたい。まわりの人のため、なにより自分自身のために活動を続けます」

PROFILE

高知東生 たかち・のぼる
1964年高知県生まれ。93年に俳優デビューし、大河ドラマ『元禄繚乱』(NHK)や、ドラマ『課長島耕作』(日本テレビ)などに出演。2016年に覚醒剤と大麻所持の容疑で逮捕。18年からはTwitterで自らの思いを綴り、その弱者に寄り添う姿や、社会問題の捉え方などが話題になった。現在はフリーで活動、Twitterドラマでは俳優にも復帰。講演会や、YouTubeなどで依存症問題の啓発活動に取り組んでいる。

●情報は、FRaU2022年8月号発売時点のものです。
Photo:Masanori Kaneshita Text & Edit:Saki Miyahara
Composition:林愛子

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