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ジビエをもっと楽しむために知りたい5つのこと
ジビエをもっと楽しむために知りたい5つのこと
COLUMN

ジビエをもっと楽しむために知りたい5つのこと

食べることは生きる基本。子どもは食育を通して食にまつわる正しい知識を身につけ、生きる力を育みます。では、大人はどうでしょう? 食を取り巻く状況は目まぐるしく変わっています。深刻化している貧困問題や食品ロス。漁業も農業も大きな転換期にあります。

未来の食を考えるには、現状を知ることが大切。野生動物による農作物への被害が深刻化している昨今、駆除した動物の肉を活用するジビエに注目が集まっています。日本ジビエ振興協会代表理事の藤木徳彦さんに伺いました。

Q.ジビエっておいしいの?
A.野生の旨みがたっぷりです

イノシシ

藤木徳彦さんのレストラン「オーベルジュ・エスポワール」で味わえる「鹿児島県出水市産 皮つき猪煮込み 茅野市産パッションフルーツと白ワインソース」

「牡丹(ぼたん)肉」とも呼ばれ、古くから親しまれてきたイノシシ肉。なかでも人気はバラ肉で、厚くついた脂身は強い旨みと甘みを持つ。角煮やシチューなど煮込み料理に最適。高級な部位として知られる肩ロースは、柔らかく滋味深い味わい。秋冬にかけて脂がのってくるので牡丹鍋にするならこちらがオススメ。

厚い脂身がついて柔らかい背ロースは煮ても、焼いても、揚げてもおいしく、使いやすい部位。皮つきの肉も人気がある。皮は煮ると柔らかくプルプルとした食感に、焼くとコリコリした歯ごたえが楽しめる。

シカ

華やかで目にも楽しいオーベルジュ・エスポワールの人気メニュー「長野県富士見町産 鹿肉のポワレ 地元野菜添え ジン香るジビエの赤ワインソース」

シカ肉はさっぱりしていてクセがなく、食べやすい。脂肪分が少ないのも特徴。この旨みを十分に味わえると人気なのがロース。濃い旨みを味わうためにステーキやローストでいただくのがおすすめ。スジが多く硬いスネ肉もシチューなどの煮込み料理にして、じっくり長時間煮込めばプリプリとした食感になる。

肉質としてやや硬めな肩やネックはひき肉にして使用するのがオススメ。ハンバーグにすると歯ごたえのある食感と肉汁が味わえる。柔らかい内モモは、脂身が少なめで使いやすい部位。ステーキにして素材そのものの味を楽しもう。

クマ、野鳥など

藤木さんの料理は、従来のジビエのイメージを払拭する。「長野県高山村産 月の輪熊の軽い煮込み すき焼き仕立て」

ジビエの魅力は多種多様な動物の肉を楽しめること。野生の動物だからこそ、個体ごと、季節ごとに食べているエサも違って、肉の味もバラエティに富んでいる。たとえばクマ肉の特徴は口どけのよい脂。さっぱりとした脂は融点が低く甘みがあり、胃にもたれにくい。

多くの人に親しまれているカモや、あっさりとした赤身肉のハト、さっぱりした白身のキジなどの野鳥もジビエの定番。珍しい種類として、カラスなどの個性的な味わいを持つ肉も人気が出てきている。他にもウサギ、キツネ、タヌキなど、さまざまな動物がジビエとして食されている。

Q.食べるときの注意点は?
A.生食は絶対にやめましょう

家畜の肉と違い、自然のなかで育った動物の肉なので国産ジビエ認証制度を受けた処理加工施設の肉が安心。調理の際はきちんと火を通すことが大切。厚生労働省によると安全な加熱温度は、中心温度が75℃で1分以上。またはこれと同等以上の加熱とされている。同等とは、70℃で3分、65℃で15分など。ジビエは高温で焼くと硬くなってしまうので、低温でじっくり焼くのがポイント。

Q.誰でも狩猟ができるの?
A.資格が必要です

狩猟免許、銃所持の許可が必要。免許試験は各都道府県で毎年複数回実施されている。免許を取得したあとは、出猟したい都道府県ごとに狩猟者登録を行って狩猟税を納め、猟友会などに所属して狩猟期間にハンティングを行う。近年ますます需要が高まる有害鳥獣捕獲は、環境大臣または都道府県知事の許可を受けて捕獲することが認められる。

Q.栄養はあるの?
A.とってもヘルシーな食材です

アスリートも注目する
高タンパクが魅力のシカ肉

野生でのびのびと育ったシカは運動量が多いため、筋肉が発達し脂肪分が少なくなる。牛肉(和牛肉サーロイン、赤肉、生)と比べるとカロリーは約半分、脂質は約1/6。シカ肉を食べることで動物性脂肪の摂りすぎを防ぎ、生活習慣病の予防にもつながる。不足しやすい栄養素のひとつ、鉄分の含有量も、豚肉や鶏肉などに比べて多い。栄養管理が必須のアスリートの食事やダイエット中の食事に適しており、高齢者の介護食としての利用にも期待が高まっている。

シカ肉(ニホンジカ、赤肉、生)可食部100gあたりの成分は、エネルギー119kcal、タンパク質23.9g、鉄分3.9㎎、ビタミンB121.3㎍。(出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」)

イノシシ肉には亜鉛、ビタミンB12など
体にうれしい栄養素がたっぷり

脂肪分が多いイメージがあるイノシシだが、牛肉(和牛肉サーロイン、赤肉、生)に比べてカロリーは低い。中性脂肪を増やす飽和脂肪酸の含有量は牛肉の約半分なので、ダイエット食にも適している。亜鉛やカルシウムも豊富。亜鉛は髪や肌の健康維持に役立ち新陳代謝や免疫力の向上にも効果的とされ、カルシウムは骨や歯を健康にする。豚肉(大型種肉肩ロース、脂身つき、生)と比べるとビタミンB12の含有量が約3倍、鉄分は約4倍。脂身にはコラーゲンが多く含まれている。

イノシシ肉(肉、脂身つき、生)可食部100gあたりの成分は、エネルギー244kcal、タンパク質18.8g、鉄分2.5㎍、ビタミンB121.7㎍。(出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」)

Q.レストラン以外ではどこで食べられるの?
A.レトルト食品や加工食品も発売されています

全国各地で工夫を凝らした加工食品を開発

武将・真田幸村をイメージした「真田カルパス」。信州生まれの幸村になぞらえ、信州産のシカ肉を使用。しっかりした風味があり、食べごたえ十分

カレーやコロッケ、缶詰などジビエを加工したレトルト食品や加工食品は全国で開発されていて、お土産やお取り寄せとしても大人気。忙しいときのメイン料理にも、あともう一品ほしいときにも、簡単にジビエを採り入れられるため、家庭に常備する人も増えている。

「デミグラスソース仕立ての鹿ハンバーグ」はコクのあるソースの絶品ハンバーグ。さっぱりしたシカ肉に、豚の脂を加えてジューシーに

ほかにも大手外食チェーンでのジビエの使用例も増加中。ファストフード店のロッテリアでは数量限定で販売してきた「鹿肉バーガー」が好評で、今秋から通年販売を開始する。多様化するペットフード業界でもヘルシーなシカ肉は注目されている。豊富なタンパク質は運動不足や肥満気味のペットにも適していて、ペットにおいしいエサを与えたい、健康を維持してほしいという飼い主に選ばれている。

PROFILE

藤木徳彦 ふじき・のりひこ
日本ジビエ振興協会代表理事、オーベルジュ・エスポワールのシェフ。ジビエの魅力を全国に発信。著書に『フレンチシェフが巡る ぼくが伝えたい山の幸 里の恵み』(旭屋出版)など。

●情報は、『FRaU SDGs MOOK FOOD』発売時点のものです(2021年10月)。
Photo:Shiho Furumaya Illustration:Teppei Nakao Text:Saki Miyahara
Composition:林愛子

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