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早生広葉樹「センダン」が、ニッポン家具業界の救世主になる!?
早生広葉樹「センダン」が、ニッポン家具業界の救世主になる!?
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早生広葉樹「センダン」が、ニッポン家具業界の救世主になる!?

通信販売ブランドdinos(以下、ディノス)から2022年7月25日に発売された、国産早生広葉樹「センダン」を使ったサステナブルな家具が早くも話題です。針葉樹のスギやヒノキに比べると、約1/3の年月で伐採が可能。地域産業活性化への貢献が見込まれるだけでなく、CO2の吸収能力が高いため、CO2削減にも寄与するといいます。まだまだ認知度が低いセンダンの木についてレポートします。

植えてから伐採までが驚異的に短い!

センダンとは、センダン科センダン属に分類される落葉樹で、枝を四方に広げて成長し、大きなものだと樹高20~30mにもなる大木。現在は自生木しかなく供給量が不安定なため、センダンの家具はほとんど流通していないという。センダンを使った家具を企画・担当したDINOS CORPORATIONの大谷光政さんは次のように語る。

「センダンの家具自体、見たことがない方がほとんどだと思います。業務用や注文住宅の一点モノの家具はここ最近見かけるようになりましたが、センダンの量産家具をカタログやウェブで多くのお客様の目に触れる形で販売するのは、今回ディノスがはじめてとなります。私は職業柄、3~4年前からセンダンの存在を知っていましたが、当初はそれほど興味もなく、ましてやセンダンで家具をつくろうという発想はまったくありませんでした。

もともとは家具の名産地として有名な福岡県大川市の協同組合福岡・大川家具工業会がセンダンという木に注目し、家具づくりに使えないかと考えたことに端を発しています。家具に生かすだけでなく、植樹を行い活用も進めているので、「うえる」林業家、「つくる」家具メーカー、「つなげる」住宅メーカー、「つかう」お客様でうまく循環させようという取り組みです。

九州の山にはスギやヒノキがたくさん植えられていますが、伐採した土地にまたスギやヒノキを植えると、次の伐採は40~60年後。伐採と活用を次の世代に託さなければなりません。センダンは成長が早く、植樹してから15~20年で伐採できる。もちろん手入れや管理は必要ですが、材料として使いやすいまっすぐな木を育てられます。植えた世代が伐採、活用まで一貫してできるため、国産の材料で家具を製作でき、植樹した地元の林業家、製材所、住宅メーカー、家具メーカーなど、地域の産業が活性化するというメリットもあります」

西日本に多く生息しているというセンダン

針葉樹は材質が軟らかく、傷つきやすかったり加工しにくかったりするため、家具向きではないとされている。一方、広葉樹は硬くて加工がしやすいため、家具に使われる材木のほとんどが広葉樹だ。

針葉樹が材木として使えるようになり、伐採できるまでに要する年月は40~60年。広葉樹は100~200年かかるという。そうでなくともゆっくり成長する広葉樹にあって、15~20年というセンダンの成長スピードは驚異的といえる。

センダン家具は時間の経過とともにアメ色を帯びていくことも特徴で、他の天然木家具や畳の色が変化していくのと同様、自然素材ならではの魅力をもつ。

このたび新発売されたブックラックの棚板の厚さは20㎜の無垢板でできているため、フラッシュの棚板(化粧棚板)に比べてたわみにくく、強度は棚板耐荷重約20㎏。板の端を斜めに面取りするテーパー加工を施し、ウッディーな温かみに角度の工夫でスタイリッシュさを加えている。

センダン家具は天然木ならではの風合いを楽しめ、使うほどに味わいが増す

地域の製材所、協同組合と手を携えて

ディノスがセンダン家具づくりをはじめたキッカケは、2年前のある商品づくりにあるという。

「日本は戦後、焼け野原となった土地にまた家を建てるため、国の政策で植林を進めてきました。主に住宅建材として使われるスギやヒノキなど針葉樹を植えたのですが、戦後70年以上たち、建材として立派な木が行き場を失うという問題がおこりました。弊社も、丸太の末口(先側、すなわち細いほうの切り口)の直径が約40cm以上の日田杉大径木があまり使われていないという現状を知った2020年、これらを家具に転用しようとしました」

日田杉の小径木(丸太の末口が直径約14cm未満)は柱などの構造材として需要があるが、大径木は需要が少なかった。小径木は丸太の端を落とせば、角材としてそのまま柱などに使える。一方の大径木は、太い柱は取れるがその需要自体が少なく、かといって、わざわざ小径木のサイズに分割するには手間がかかって割高になる。ディノスは、その大径木をあえて家具につかうことにしたのだ。

「その際にコラボした製材所がウエキ産業でした。この出合いがセンダン家具づくりの契機になったのです。ウエキ産業は、九州の木材市場でセンダンを積極的に買いつけ、福岡県大川市の家具メーカーに供給している企業です」(大谷さん、以下同)

センダンの丸太。自生木のため曲がったものが多く、長くて真っすぐな材料を取るのは難しい

大谷さんらがセンダンを使おうと考えたのは、ウエキ産業との縁だけではなかった。大きく分けて以下の3つの理由があった。

① センダンが15~20年で伐採、活用できる国産広葉樹であること。

② 林業家や家具メーカーのあらたな仕事ができ、地域の活性化につながること。

③ CO2削減など未来に向けた環境づくりにも役立つこと。

「福岡・大川家具工業会が先行して取り組んでいた、センダンのサステナブルなサイクルに共感できたことも大きいです。センダンを植樹し活用することで、国産の原材料が手に入るだけでなく、地域の産業が活性化する。同じ地域で植樹、伐採、加工、製造を行えば、輸送コストやCO2も削減できます。

日本の木材の自給率は、建材も含めて30~40%といわれ、日本で流通する家具の大部分がベトナムや中国で製造されています。国内にも家具メーカーは何十社もありますし、商品も製造されていますが、原材料は北米、ヨーロッパ、中国、ロシア、東南アジアからの輸入に頼っているのが現状なのです。

センダンを植樹することで、輸入材への依存を少しでも減らせます。いまは自生木しかないので規格やサイズがバラバラで加工しにくいという難点もありますが、今後、経験の蓄積によって克服できるはずです」

ディノスならではの強み「カタログ」を活かす

ディノスは、福岡・大川家具工業会がサステナブルのキーワードとしている「うえる・つくる・つなげる」に、自分たちの得意分野を加えて取り組んでいる。

「『つたえる』というディノスならではの強みを生かして、サステナブルのサイクルを構築したいと考えています。福岡県内で展示会を開いたり、家具を製造したり、設置したりするのもセンダンの普及に貢献してはいますが、その規模には限界があります。私たちディノスにはカタログやウェブという媒体がある。それを介せば、世の中にもっとセンダンを広めて認知度を高めることができますし、それこそが私たちの役割だと感じています。

15年先なのか20年後なのかはわかりません。いつか、センダン家具がディノスの媒体だけでなく、一般に流通するような世の中になればいいですね」

センダン植樹プロジェクトのようす

福岡・大川家具工業会による植樹プロジェクトは現在、福岡のほか、熊本、宮崎、鳥取の各県でも進められている。センダンは、日本の家具業界の救世主になっていくのかもしれない。

photo: DINOS CORPORATION  text:阿部真奈美

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