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“ごみ清掃芸人”マシンガンズ滝沢がたどり着いた「ごみはウソつかない! 生ごみの汁をしぼることが、世界を救う第一歩!!」
“ごみ清掃芸人”マシンガンズ滝沢がたどり着いた「ごみはウソつかない! 生ごみの汁をしぼることが、世界を救う第一歩!!」
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“ごみ清掃芸人”マシンガンズ滝沢がたどり着いた「ごみはウソつかない! 生ごみの汁をしぼることが、世界を救う第一歩!!」

2025年で5回目となった「FRaU 共創カンファレンス」で12月19日、「FRaU SDGs AWARD 2025-2026」の表彰式もおこなわれ、シルバー賞を受賞した“ごみ清掃芸⼈”マシンガンズの滝沢秀⼀さん(49歳)がステージに登場しました。そこでは、「ごみは資源の宝庫。ごみと“もったいない”を考えるセミナー」と題した滝沢さんの講演も! 大そうじのシーズン、示唆(しさ)に富み、いますぐ役立つセミナーの内容をお届けします。

ごみ=人の心。ひとが“ごみ”と思えば、すべてがごみになる

「1998年に(お笑いコンビ)マシンガンズを結成、2012年、ごみ清掃員になった滝沢です。早いもので、お笑い芸人を28年間、ごみ清掃員を14年間も続けています。ダブルワークを長年実践しているということで、こうやって、全国で講演会なんかもしているんですね〜。ごみを減らそう、なくそうと、『滝沢ごみクラブ』なんていう活動もおこなっています。そんなボクが、清掃員生活14年間で導きだした答えはズバリ、『ごみはウソつかない!』。たとえば、『発泡酒 売り上げNo.1!』なんていう広告がありますけど、ボクらが資源回収をしていて、その発泡酒の缶が集積所に出されているのをまったく見かけなかったりすると、それは誇大広告なんじゃないかと思えるわけです」

講演でこう話し始めた滝沢さんは、相方・西堀亮さん(51歳)とともにマシンガンズとして2023年の漫才トーナメント「THE SECOND」で準優勝を勝ち取るなど大活躍しつつ、2012年の妻の妊娠をキッカケに、ごみ清掃の仕事を始めたベテラン清掃員でもある。ごみは、それを出す人の日常をぎゅっと凝縮させた“生活の縮図”だというのが滝沢さんの持論。ごみを見れば、嗜好品やその摂取量から、出した人の年齢層、ライフスタイル、性格までわかってしまうという。

「ボクよりちょっと上の世代の方が吸う銘柄のタバコの空き箱と一緒に、胃薬の空き箱なんかが捨ててあると、『50代以上の方で、飲み会や外食が多くて、胃の具合もよくないのかな』と推測できます。二日酔い対策のドリンク瓶が7〜8本捨ててあれば、『この人は今週、毎晩飲み会に行っているんだな。ということは、忘年会や新年会シーズンは夜、家にいないタイプだな』とわかっちゃう。これ、空き巣なんかに見られたら危ないですよね〜。ごみの分別の仕方で、『この人はルールを厳格に守るタイプ』『ちょっとルーズな人』なんてこともわかるから恐ろしいんです」(滝沢さん、以下同)

共創カンファレンスには、日ごろFRaUを支え、協力してくれる企業関係者など120人以上が参加した

私たちが何げなく集積所に出しているごみも、ちょっと気づかいをすれば、ごみ清掃員に大いに感謝されるのだという。

「たとえば資源回収の日、空き缶や瓶を洗わずに出されると、ボクたちがハチに追いかけられることになったりするんです! ひと缶、ひと瓶に残っている液体はちょっとだけ、1滴ずつだとしても、それが1000本分集まれば1000滴、結構な液体の量になる。それもビール、コーラ、エナジードリンクと種類はさまざまで、それが混ざると、ものすごいニオイになりますからね〜。それを花の蜜のニオイと間違えて、ハチが寄ってくるわけです」

そして可燃ごみ、なかでも生ごみについては、清掃員泣かせのものがあるという。

「生ごみからは汁が出たりしますが、それをしぼらないで、そのままごみ収集袋に入れる人が結構いるんです。キムチの汁も困りますけど、鍋に余った味噌汁を、そのまま袋に入れて出す人、実際にいますから(といいつつスライドで画像を見せる。場内からは悲鳴が!)。生ごみって80%が水分なんですよ。みんながひと手間、ごみの汁をギュッとしぼってくれれば、ニオイもおさえられるし、重量が軽くなって収集車のガソリン代も節約できるし、処理場で燃やす際のコストも下げられる。つまり生ごみの汁を減らせば、ごみの処分にかかる自治体の費用が減って、われわれが払う税金も減るし、CO2排出量も減らせるんですよ!」

いまやベテランごみ清掃員の滝沢さんだが、それでも、いつも驚くのが毎日出されるごみの量。とくに大掃除シーズンの年末は、すさまじい量のごみになるそうだ。

「みなさんカン違いしていますが、ごみって“燃やせばなくなる”わけじゃないんです。燃やしたごみの1/40量は灰になって残る。灰は処分場に埋めるんですが、たとえば、東京の『中央防波堤内側埋立処分場』はあと50年分しか容量がないんです! これが、地方になると、あと20年分くらいしかない。だからこそ、ごみを減らして、出さないことが大切なんです! そのために、みんなが何をすればいいか? リサイクルできる雜紙(ざつがみ)や缶、瓶などの資源を、しっかり分別して出すことが重要。ボクたちごみ清掃関係者は、そもそも『資源ごみ』って言葉はつかわないです。プラスチックも紙も、ごみではなく『資源』なんです!」

滝沢さんの著書『ゴミ清掃員の日常』シリーズは累計10万部を超えている。最新刊『まんがで読める ごみってなんだろう?』含め、まんがは滝沢さんの奥さんによるものだ

滝沢さんの夢は、日本じゅうのごみを減らすこと。そうすることで、環境問題や都市衛生、治安などの社会問題も解決に向かうという。

「在日外国人とのトラブルって、ごみ問題であることも多いんですよね。母国にはごみを分別して出すというルールがなく、集積所を単なる“ごみ捨て場”と思っている人もいる。だから日本のルールを理解しないままごみを放置してしまう。そういう人たちには、決まりをしっかり教えてあげることが大切だと思います」

滝沢さんは「FRaU SDGs AWARD」シルバー賞を受賞、FRaU編集長の舩川輝樹、FRaU WEB編集長の新町真弓から賞状が贈られた

ただ、ごみが大幅に減れば、滝沢さんの作業も減り、ひいては清掃員などの雇用も減少してしまうのではないか? そんな疑問に対し、滝沢さんは「鹿児島県大崎町の取り組みに注目してみてください」と切り出した。大崎町では、住民と企業、行政が協働することで、焼却炉に頼らない廃棄物処理システムを実現している。

「大崎町では、ごみを徹底的に分別して資源とし、埋め立てるごみを減量しました。ごみ処理事業の経費が減ったため、そのお金を教育費に充てているんです。たとえば、奨学金をつかって町外の学校に進学した子どもたちが、卒業後10年以内に大崎町に戻ってきたら、奨学金返済を補助する制度をつくったんですね。若い人がまちにUターンしてくれれば過疎化対策にもなるという素晴らしい取り組みです。そして過疎、高齢化が進むまちや村には、ごみを分別して集積所まで運ぶのが難しいお年寄りがたくさんおられる。それを清掃員が代行する“ふれあい回収”が広がれば、代行者の雇用も生まれて高齢者の孤立も防げる。一挙両得なんじゃないかと思うわけです」

授賞式後の懇親会での一枚。FRaU SDGs AWARDゴールド賞を受賞した『わたくし96歳 #戦争反対』の著者・森田富美子さん(写真中央)と娘の京子さん(同右)とともに

「Respect(リスペクト)のRを加えて4Rにしたいなあと。14年間ごみを扱ってきて思うのが、ごみ問題の根底にはリスペクトのなさがあるんじゃないかと。清掃時にふと、ごみ袋を持ち上げたら、そこからストンと包丁が落ちてきたことがあるんです。これを出した人は、それを回収する人がいるってことを考えていないんだなあと悲しくなりました。食品ロスの問題もそう。可燃ごみの集積所には、魚の干物、マスクメロン、まだ封を切られていない立派なハム、お米5㎏とか、食品がバンバン捨てられている。それら食べものの向こうには、ヒザや腰の痛みに耐えながら田んぼや畑を守っている高齢者のみなさんがいるかもしれない。寒い海で必死に魚を獲ってくれた漁師さんがいるのかもしれない。そういう、見えない生産者に対するリスペクトがあれば、簡単に捨てたりできないと思うんです。逆に、そういう想像力を持てる人こそ成熟した大人なんです。最初からごみとして生まれてきた生産物は、ひとつもありません。未来のためにできることをやることは、子どもたちへのリスペクトにもなりますよね」

Text:萩原はるな Photo:神谷美

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