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【戦後80年】「平和って何だろう?」哲学者・永井玲衣と学生6人が哲学対話 vol.2
【戦後80年】「平和って何だろう?」哲学者・永井玲衣と学生6人が哲学対話 vol.2
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【戦後80年】「平和って何だろう?」哲学者・永井玲衣と学生6人が哲学対話 vol.2

哲学対話とは日常のふとした疑問について対話し、考える場。ゴールは答えを出すことではなく、自分の言葉で話すこと。相手の話を聞くことで考えを深め、新しい価値観に出合うこと。哲学者の永井玲衣さんと6人の学生が、平和について対話しました。

▼vol.1はこちら

知れば知るほど、つらくなる。目をつむりたくなるけど

うまく言葉にできなくても、沈黙があっても誰も急かさない。やさしい対話の場

レイ たしかに、平和と感じることと、事実平和であることは違う。うわ~、まさにそうだっていま、衝撃を受けてて。平和って状態として考えるのであれば、ものすごい規模の大きいものでないといけないけれども、たとえばいま、私はみんなの話を聞いていて、なんて平和なんだ!と思う。それは奪えないなとも思うんですよね。知識が増えるほど平和から遠のくっていうのも、すごく興味深いなと。でも同時に知識とか世界に対する複雑さが見えていけばいくほど、平和の複層性を感じられる気もしたんです。単に遠のくんじゃなくて。でもだからこそ「平和をつくる」ってすごく難しいよね。今日、みんなと平和のイメージを共有してみたら、それぞれに違った平和があったわけじゃない? それをつくっていこうって、すごいすり合わせが必要な気がして。どうしていったらいいんだろうなって……。

ハヅキ 知れば知るほど平和を感じられなくなるのは「たしかに」と思うし、ウクライナのニュースとかを見ると落ち込む。つらい報道を見て、自ら不幸になりにいってるなって思うこともあるけど、やっぱ知らないといけないなって。自分が幸せならいいやって思うこともあるけど、知っていくことが大事だと思う。それは自らの平和を生み出すことにもつながるんじゃないかって。

トモヨ 私もその感覚よくわかって、そう信じてやってきてるというか……。戦争のこともそうですし、身近にLGBTQの話題もたくさんあって、そういうのを自分で知りにいったりとかして、あ、ぜんぜん見えてなかった、苦しんでいる人たちがいるんだっていうのを知って、心がぎゅうってなるんですけど。私はお話を聞くことしかできないかもしれないんですけど、それで心が軽くなったって言ってくれる人がいたので、これでよかったんだって思うときもあって。でもそれで平和に近づいたかっていうとそうじゃない。一歩一歩すぎるみたいな感じがすごいあって、これっていつまで続けなきゃいけないんだろうって。自ら不幸せな状況を見て、それを打開していくって心身共に疲れるし。私がやりたいのって、こんな絶望的なことなんだったっけ?って思います。

アリメ 目をつむれば自分は平和でいられるかもしれないけど、それでいいのだろうかっていう自分もいます。大人になるにつれて、自分のためだけに生きていいのかなって考えるようになるのかなとも思っていて。平和をつくるためには知らないといけない。そう思って深くニュースを掘ったりするように心がけてはいるんですけど……。

ケビン LGBTQのことも、知っていくうちに情報がどんどん入ってきて、よくわからなくなってきたっていうか。平和についても、いろんな平和の見方? 情報が増えてきて。たとえば福祉に携わっているトキさんには福祉の観点からの平和があるだろうし、自分はスポーツやってるので、そこから見た平和とか。ウクライナの人たちの平和、広島の人たちが考える平和。今日ここにいる7人でさえ、すり合わせできるかどうかわからないのに、世界中の人が平和を共有するのってすごく難しくて、それって可能なのかなって。どう平和をつくっていくのか考えるのは苦しくて、目をつむりたくなる、正直。でも、やっぱり考えたくて……。

それぞれが持つ「平和」のイメージから対話は始まった

ハヅキ 話が戻っちゃうかもしれないんですけど、戦争がないところを目指したいって私はやっぱり思っていて。戦争の目的が幸福だったり、貧困からの脱却だったりとか、それ自体は仕方ないかもしれないけど、手段が武力なのはどうしても違う。そこでやっぱり話し合いたいって私は思うんですけど、じゃあ話し合ったらわかってくれるのかっていう不安もやっぱりあって。私は母とふたりで住んでるんですけど、家事をどっちがやるかってなって、お互いやりたくないってなったときに、わかり合っていかないといけないじゃないですか。じゃあそこで腕相撲で決めていいのかって、それだと力がある私が勝っちゃうから。

一同 腕相撲(笑)。ある意味平和だけどね。

▼vol.3につづく

●情報は、FRaU2023年8月号発売時点のものです。

Photo:Saki Yagi Text & Edit:Yuriko Kobayashi Composition:林愛子

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