ドイツのサステナブルをめぐる旅⑤ ポルシェ、ベンツとワイナリーの美しき街シュトゥットガルト
環境先進国であり、SDGs達成度ランキング2021でも世界6位にランクインしているドイツ。トラベルライターの鈴木博美さんが、そんなドイツのサステナブルを巡ってレポートします。今回訪れたのは、ドイツ南西部に位置するシュトゥットガルト。ポルシェやメルセデス・ベンツなど世界的自動車メーカーが本社を置く工業都市として知られています。
地形を活かしたワインの町
ポルシェやメルセデス・ベンツの本社があると同時に、古くからブドウなど農業が盛んで、国内有数の優れたワイナリーが点在しているシュトゥットガルト。丘の下はインダストリアル、丘の斜面にはぶどう畑という珍しい景観はこの街ならでは。そんな農業と工業の調和共存への道を創り出したのが「風の道」だという。
シュトゥットガルトのワインづくりの歴史は、紀元 8世紀まで遡る。この地域に初めてワイン用のブドウ栽培を導入し、中世までに修道院や貴族が中心となって地域の重要な産業に発展した。19世紀にこの地を治めたヴィルヘルム1世によりワインづくりが推進されると、ワイン生産がいっそう盛んになった。現在では、年間350万リットル以上のワインが生産されている。
一方、市街地がある盆地では産業と都市の発展で大気汚染の滞留が深刻化。そこで大気の流れをつくり空気を浄化するために、町の中に”風の通り道”をつくったという。市街地を取り囲む丘陵から市街地へ風が流れ込むように都市整備計画を実施して「風の道」をつくり出した結果,丘陵地帯からの冷気流によって大気汚染物質は市街地から吹き飛ばされ、夏季の気温上昇も緩和されているという。
昨年創立 50 周年を迎えた家族経営のディール・ワイナリーの当主、3代目のトーマスさんは、情熱にあふれる若手のワインメーカー。機械エンジニアリング会社を退職し家業を継いだ。
トーマスさんは大学を卒業した後、ボルドー、ニュージーランド、南アフリカのワイナリーで学んだ経験をもつ。現在は、新しいワインブランドやノンアルコールのフレーバーワイン開発など、新しい試みに挑んでいる。
これから夏の季節におすすめのワインは辛口の白、ピノ・ブラン。今年はロゼもおすすめだという。ぶどう畑にはハイキングルートがあるので、散歩しながら途中で立ち寄ってみるといいだろう。
シュトゥットガルト中央駅から10kmほどのところにあるワイン博物館「The Stuttgart Museum of Viniculture」に立ち寄ってみた。この地域での 2000年以上のワイン栽培の歴史やワインに関するトリビアを詳しく紹介しているほか、100年以上前の美しいワイン樽やローマ時代の道具など貴重な品々が展示されている。バーカウンターではこの地域で生産されたワインの試飲が楽しめ、もちろん購入もできる。
風の道で街の呼吸を取り戻したシュトゥットガルト。洗練された都会と田舎町の両方を一度に楽しめる素敵な街だ。
text:鈴木博美
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