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クラファンは現代のお布施!?  ホームレスになって気づいたこと【前編】
クラファンは現代のお布施!?  ホームレスになって気づいたこと【前編】
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クラファンは現代のお布施!? ホームレスになって気づいたこと【前編】

数々のクラウドファンディング企画を成功させてきた元芸人のホームレス小谷さんと、世の中の事象を仏教の視点で説く僧侶の稲田ズイキさん。ふたりの対話からクラファンの楽しさを紐解きます!

▼クラウドファンディングの基礎知識はこちら

「小谷さんの人生は『徳』積み放題」
「人ってこんなに優しいんか!と痛感します」

ホームレス小谷 僕、お坊さんと会う機会がメッチャ多いんですよ。

稲田ズイキ 引き寄せてるんだと思います。50円で雇ってもらって呼ばれた場所でなんでもやるという小谷さんの活動は、仏教的な世界観とかなり近いから。まずもって、ホームレスというのが釈迦の生き方と一緒ですからね。

ホームレス小谷 そうなんですか!

稲田ズイキ 釈迦は一国の王子として生まれたのですが、この世の苦しみをなんとかしたいと出家して、その後も「遊行」といって旅をしながら修行したんです。つまり小谷さんも修行している。

ホームレス小谷 キングコングの西野さんにオモロイからやってみろと言われてホームレスになっただけで、そんなイメージはまったくもってなかったです(笑)。

左:ホームレス小谷、右:稲田ズイキ

稲田ズイキ 仏教では自分の欲をどれだけ手放せるかが主題なのですが、小谷さんの生活はまさにそうですよね。自分で何をしようということではなく、他人に請われてどこへでも出かけていく。それがまさに仏教っぽいんです。

ホームレス小谷 自分では、そんなつもりはホンマになかった。食わしてくれる人がその都度出てくるからやれてるだけで、そうでなかったらこんなん、続かないですよ。で、いろんなとこに行っていろんな人に会ってるうちに、いろんなことが気にならなくなってきて、ちっちゃいことには悩まんくなってしまった。

稲田ズイキ 僕ね、自覚なく仏教的な行動をしている人のことを「野生のブッダ」って呼んでるんですよ。欲を手放す生活を通して心を自然と満たしていくって、やってることが完全に釈迦じゃないですか(笑)。

ホームレス小谷 !! 僕、釈迦の流れ、完全に踏んでますやん(笑)。

稲田ズイキ はい、釈迦の系譜っす(笑)。常に移動していたら、物もそんなに持てないじゃないですか。

ホームレス小谷 そう。僕、海外に行くときもリュックひとつなんですよ。必要があれば、そのへんの人に買ってもらえばいいしね。お金も物も持ってないけど、結構どうにかなるもんです。しかも僕、人にしてもらったことは絶対忘れないから。

稲田ズイキ 自分の欲望で手に入れる物よりも、他者の優しさがこもっている物のほうが心に残りますよね。自分は他人に助けられて生きていると気づくことで、自己中心的な感情は抑えられます。それが仏教でいうところの「徳」。小谷さんの生活って徳積み放題じゃないですか!

ホームレス小谷 たしかに何かしてもらったときには、人はこんなに優しいんか!ってつくづく思いますもんね。しかも思い出がいっぱいできて、めっちゃ楽しい。

煩悩を抑制し、徳を積む
クラファンは楽しい修行!?

稲田ズイキ 僕は、クラウドファンディングは現代のお布施だと思ってるんです。

ホームレス小谷 その感覚は、メチャメチャわかりますね。

稲田ズイキ お布施で一番大事なのは、見返りを求めないこと。その人のことをただ思う。ひいてはそれが自分のためにもなる。自分と相手の幸せをイコールで結びつけるのをよしとするんです。

ホームレス小谷 たしかに僕も、見返りは求められていない。僕にしていることは喜捨(きしゃ=もとは仏教用語で、僧や貧しい人などに寄付すること)だって、ある人から言われたことがあります。なぜか、小谷に寿司をおごることで自分の小さな罪を帳消しにしたろっていう謎のルールができてるみたいで(笑)。僕からしたらラッキーでしかないんやけど。

稲田ズイキ 贖罪(しょくざい)は仏教にはない考え方ですね。仏教では、お布施は自分の徳を積む修行です。自己中心的な思いで汚れている心を、他者を思う行為でキレイにして、苦しみのない状態、つまり仏に近づいていくということ。だから本来は「払わせてくれてありがとう」とお布施する側が感謝するものなんです。

ホームレス小谷 わかる~。僕、おごってくださいって自分から言うたことはなくて。一緒に楽しく飲み食いしてたら、いいよ、いいよって、みんな気持ちよくお金を出してくれる。以前、店を出たときに、おごってくれた人が一銭も出してない僕に「ごちそうさまでした」って言ってきたこともあったし(笑)。

稲田ズイキ それはすごい! 仏教では、物それ自体に善悪があるとは考えないんですね。だから、お金自体はよいものでも悪いものでもないんですが、お金があることで自分の欲望が刺激され、さらにお金が欲しくなってしまう。でも現実には欲しいだけお金が手に入るわけではないから、そのギャップに苦しむことになる。なので、煩悩を抑える訓練としてお布施をすることで、煩悩とうまくつき合っていけるようになるというわけです。

ホームレス小谷 身の丈に合わないほどお金を持ちすぎるのはよくないってことですね。実際、僕はホームレスになって、それに気づけたような気がします。これいる、これいらんって、はっきりわかるようになったから。

稲田ズイキ ホームレスっていわばミニマムな生活だから、自分らしいお金のサイズが見つかりやすいんだと思います。

▼後編につづく

PROFILE

稲田ズイキ いなだ・ずいき
1992年京都府生まれ。月仲山称名寺副住職。同志社大学法学部卒業後、広告代理店入社。2018年より独立し、作家・編集者として活動。初著書は『世界が仏教であふれだす』。

ホームレス小谷 ほーむれす・こたに
1983年兵庫県生まれ。お笑い芸人を経て2013年からキングコング西野亮廣の勧めでホームレスになるも、食事にもお金にも困らず楽しく暮らす。企画した約30のクラファンはすべて成功。

●情報は、FRaU SDGs MOOK Money発売時点のものです(2020年11月)。
Photo:TADA(YUKAI) Text:Mick Nomura (Photopicnic) Edit:Yuka Uchida
Composition:林愛子

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