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プーケットのジャングルで、稀少な「ギボン」の保護体験を!
プーケットのジャングルで、稀少な「ギボン」の保護体験を!
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プーケットのジャングルで、稀少な「ギボン」の保護体験を!

タイ南部、アンダマン海に面する世界有数のビーチリゾート、プーケット。島の北東部に位置する森の中に、保護施設「ギボン・リハビリテーション・プロジェクト」があります。 ギボンとは、長い手をつかって木から木へ飛び回る、愛らしい顔とフサフサの毛が目印のテナガザルのこと。かわいい子猿はペットとして、または見せ物として捕らえられ、成長すると手にあまるため、虐待を受け、最終的に殺されてしまうケースも少なくないといいます。そんなギボンたちを守ろうと、保護されたギボンを野生に返すプロジェクトがプーケットのジャングルで行われています。トラベルライターの鈴木博美さんが現地を訪ねました。

ギボンと失われた自然を取り戻すために

19世紀初頭まで、プーケット島のほとんどはジャングルで、木々に覆い尽くされていたという。その後、スズの採掘がスタートして人口が増加。やがてリゾート開発が進んでジャングルは開拓され、いまでは手つかずの自然が残っているエリアはわずかになってしまった。

プーケットの中心部から車で約40分、ギボン・リハビリテーション・プロジェクト(以下GRP)は、古い熱帯雨林地帯にあるカオプラテーオ自然保護区内で活動している。訪れると施設の責任者であるタナファット・パヤカポンさんが出迎え、施設について語ってくれた。

ギボン・リハビリテーション・プロジェクト責任者のタナファット・パヤカポンさん

「40年前、このあたりにはクマやゾウ、トラ、テナガザルなどの野生動物が生息していました。しかし熱帯雨林の喪失と、密猟やペット取引などでそれらの数は激減。プーケットに生息していた野生のギボンは絶滅し、現在は世界でも絶滅が危惧されています」

ギボンはワシントン条約により保護が図られているが、いまも違法に取引されているという。

施設内に掲示されている、人間による不当な扱いを受けてきたギボンたち

GRPでは、タイ南部のパンガー県などから持ちこまれ、プーケットでペットや見せものとして飼育されていたギボンを保護し、再び森での生活に戻すためのリハビリ施設として設立された。現在はIUCN(国際自然保護連合)と連携しており、世界的に知られているリハビリテーションセンターになっている。

「ギボンは人間ととても似たDNA配列をもっています。一般的に霊長類の多くは群れで生活をしていますが、ギボンは家族単位で暮らしています。夫婦は生涯同じペアで連れ添うことが多く、家族の結束はとても深い。親子の絆も強く、子どもが巣立つまでには長い年月を要します。私たちは、1992年に世界で最初にギボン専門のリハビリ施設を設立しました。以来、タイで最も知的な野生生物種であるギボンを、プーケットにわずかに残っている熱帯雨林に戻すという大きな使命を背負っています」

売店などで売られている、かわいらしいギボンのぬいぐるみ

「ギボンと自撮り」の残酷な現実

観光客が集まるビーチやエンターテインメント施設には、ギボンにタバコや酒を呑ませて見せ物にしたり、観光客と自撮り写真を撮らせたりして商売をしている人がいる。彼らは生後数週間のギボンを母親から奪って手に入れ、自分たちになつくよう「しつけ」をする。

「密猟者たちはまず、見張り役を務める父親を殺します。それから母親を殺して赤ちゃんだけを奪い、飼い慣らしています。ギボンの赤ちゃんは6〜7年でキバが生え、発情期を迎えて攻撃的になると、『所有者』たちの手に余るようになり、飼育を放棄するならまだしも、殺してしまうケースもあります。私たちから、旅行者の皆さんにお願いがあります。どうかギボンと写真を撮ることで、『所有者』を稼がせないでください」

森に還る日に向けて、施設でリハビリ中のギボン

野生に戻しても半数は生き残れない

ギボンが保護されているエリアでは、縦横高さが各10mほどの大きなケージに、ギボンが1頭ずつ保護されていた。これまで人の手で育てられた50頭以上のギボンが保護され、野生で生きる術を学ぶために数段階のステップを経てきた。最終的には国立公園の狩猟禁止エリアで野生として暮らすために放たれるが、それは簡単なことではないという。

「保護されたギボンの多くは、生涯のほとんどを孤独な飼育下で過ごしてきました。 彼らをリハビリして、安全に野生に放すことができるまでには、およそ5年の年月を要します。 しかも、野生での生存確率は約50%。悲しいことですが、半数は自然界では生き残ることができないのが現実です。ですから野生では生きられないと判断されたギボンはセンターの永住者となり、残りの人生をここで過ごします」

長い手足を上手に使って、元気よくケージ内の木から木へと飛び移っていたギボンをよく見ると、片腕、片脚がもう片方より短い。元「所有者」によって、自由に動き回れないよう切断されたのだという。やがて、ケージの外で自由に動き回っていた別のギボンが近づいてきて、ケージ内のギボンと見つめ合う。「フゥーワッ! フーワッ!」。大声で2頭は鳴きはじめ、あたりは突然騒々しくなった。

「彼(ケージ外のギボン)は施設の卒業生。森のなかから施設にやってきて、ケージのそばに置いてあるリハビリ中のギボンのエサを食べにくるんだ」

旅行者である私たちができること

GRPの収入の大半は、寄付金と「体験プログラム」の売上によるものだ。「保護が必要なギボンは年々増えているのに、スタッフは不足しているのが現状です。ぜひ、住み込みでギボンの世話や管理の手伝いにあたるボランティアとして、施設へお越しください。そして、ボランティアとして保護活動に参加している世界各国の方々と交流を深めてください」とタナファット・パヤカポンさんは話す。

体験プログラムは、欧米人旅行者の間で人気のアクティビティ

ギボンの保護アシスタントを体験できる1時間コースと2時間コースのプログラムも用意されており、旅行者も気軽に参加できる。2時間コースでは観察記録を取って、ギボンの声を識別し理解する方法や、エサの調理、エサやりなどを学べる。誰にとっても、貴重な学びの機会となるはずだ。

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