鈴木優香が旅する、太平洋の“東京島” vol.5【神津島】
海を変えるためにできること。身近な海について知ることもそのひとつ。ビルに囲まれた東京の海。でもその少しだけ先に、青く澄み渡り、イルカが遊ぶ海があることを知っていますか? 自分が暮らす街とつながっている「私たちの海」に直接触れたくて、デザイナーで山岳収集家の鈴木優香さんが伊豆諸島の島々を旅しました。
伊豆諸島は太平洋に位置する東京都の島嶼部(とうしょぶ)で、無人島を含めるとその数は100以上。人が定住しているのは大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島の9島。今回は東海汽船のフェリーを乗り継いで旅ができる5島を紹介します。最後は神津島(こうづしま)へ!
水の神様がすむ島「神津島」
私たちの「東京の海」
「神津島」とは、なんていい名だろう。昔は「神集島」と書いたそうで、かつてこの島に伊豆諸島の神々が集まり、生命の源である「水」の分配について話し合ったという神話が由来になったと聞いた。実際、神津島は水が豊かで、あちこちに湧き水がある。名産の焼酎づくりに加え、最近では湧き水を使ったビールづくりがはじまったりと、島は常に「水の恵み」とともにある。
もうひとつ、水の神様を感じた場所がある。島北端の赤崎遊歩道は、岩場に囲まれた入り江で、遊歩道に設置された飛び込み台からはひっきりなしに子どもたちが海にダイブしている。鈴木さんもマネして飛び込むと、数秒で海面に浮かんできて、身振り手振りでこちらに何か叫んでいる。
「すごいです、海の中が……水族館!」
水中メガネをつけて潜ってみると、その興奮ぶりもうなづけるものだった。鮮やかな熱帯魚の群れ、海面近くには小さなイカの家族が舞って、本当に水族館の水槽にお邪魔したような感覚になる。
「これが本来の海の姿なんですね」
海から上がって、しみじみと言った鈴木さんの言葉が忘れられない。
東京に暮らす私たちが「キレイな海を守ろう」と口にするとき、どんな海を想像するだろう。地中海、カリブ海? もちろんそれでもいいけれど、1週間の旅を終えたいまなら、迷いなく答えることができる。
「キレイな海ってどんな海?」
それは船で数時間で訪れることができる海。私たちの一番身近にある、「東京の海」なんだ。
KOUZUSHIMA memo
船/東京・竹芝客船ターミナルから大型客船で約9時間55分、ジェット船で約3時間5分 飛行機/東京・調布飛行場発着の航空便(新中央航空)で約45分 車/島の外周は約22km。赤崎遊歩道へは車があると便利。村営バスを利用する手も。神津島レンタカーなど数社あり レンタサイクル/神津島オートサービスにはマウンテンバイクも
宿泊施設/民宿のほか、みんなの別荘 ファミリアなどのB&Bも グルメ/地元産の明日葉を使ったクラフトビールをつくるHyuga breweryはおつまみも豊富。海のおともには藤屋ベーカリーの惣菜パンを ショッピング/BBQするなら地元産の食材が揃うスーパーまるはんへ
神津島観光協会☎04992-8-0321
PROFILE
鈴木優香/Yuka Suzuki
デザイナー。山岳収集家。1986年千葉県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。アウトドアブランドの商品企画部勤務を経て、デザイナーとして独立。現在は山で撮影した風景をハンカチに仕立てていくプロジェクト「MOUNTAIN COLLECTOR」を手がける。
●情報は、FRaU SDGs MOOK OCEAN発売時点のものです(2019年10月)。
※掲載の内容が変更になる場合がありますので、おでかけ前にご確認ください。伊豆諸島へ向かう大型客船、ジェット船は季節や天候などによってかかる時間が変わりますが、ここでは夏季の一般的な所要時間を掲載しています。詳しい運航状況や時間については東海汽船のHPなどをご覧ください。
Photo:Mina Soma Text & Edit:Yuriko Kobayashi Model:Yuka Suzuki(MOUNTAIN COLLECTOR)
Composition:林愛子