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豊かな海の象徴・サンゴ礁を守るために、私たちにもできることがある
豊かな海の象徴・サンゴ礁を守るために、私たちにもできることがある
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豊かな海の象徴・サンゴ礁を守るために、私たちにもできることがある

地球の面積の約7割を占める海。私たちは、そこから多くの恩恵を受け取っています。そんな大切な海はいま、たくさんの深刻な問題をかかえています。沖縄科学技術大学院大学(OIST)の海洋気候変動ユニット技術員の河合恵理奈さんに、気候変動がもたらす海への影響について話を伺いました。

サンゴの白化、海面上昇、酸性化も気候変動の影響

海はすべての生き物の命の源であり、いまもさまざまな命が育まれている。海は私たちの食生活を豊かにしてくれるだけでなく、天候や気温の調節、大気中の二酸化炭素の吸収など、私たち人間が地球で生きていくための環境をつくる役割を担っている。沖縄科学技術大学院大学(OIST)の海洋気候変動ユニットの河合さんによると、持続的な生態系の維持に大きな役割を果たしているを海がいま、気候変動によって、海水温の上昇、サンゴの白化現象、海面上昇、海洋酸性化などの問題に直面しているという。

「海は人間の活動によって排出される二酸化炭素の3分の1を吸収しています。大量の二酸化炭素が海水に溶け込むことで海が酸性化し、多くの海洋生物に影響を与えているのです。この『海洋酸性化』が進むと、海水中の炭酸カルシウム飽和度が減少し、貝類やサンゴなどの骨格形成が難しくなります。また、多様な生物の住処(すみか)となるサンゴや貝類が減少すると、周辺生物も多大な影響を受けます。小魚のエサがなくなり、大型魚も減ってしまうという悪循環が、海の中で静かに進行しているのです。水温の急上昇による影響を受けやすいサンゴ礁の生きものを研究することは、気候変動が生態系や世界経済に与える影響を予測するうえで非常に重要です」(河合さん、以下同)

河合さんが所属する沖縄科学技術大学院大学(OIST)の海洋気候変動ユニットでは、海水の酸性化や気候変動、熱波、乱獲、都市化等の環境の変化に対してサンゴ礁魚類がどのように適応しているかを解明する研究をおこなっている。研究対象はカクレクマノミなど複数の魚種。地元・沖縄本島で採取された、それら魚種の野生のペアから生まれた幼魚たちを飼育。OISTマリン・サイエンス・ステーションに設置された「熱波シミュレーター」と呼ばれる水槽システムを用い、来世紀までには到達すると予測されている海水温や酸性度に設定した、特定の環境で育てている。そうして海の環境変化が魚に与える影響を調査・研究しているのだ。

また、OISTは大学が位置する恩納村と、学びを通じて交流している。2021年からは近くのリゾートホテルと協力して、瀬良垣島周辺でのカクレクマノミの育成と海洋での保全・復元を目的とした「瀬良垣島・クマノミ育成プロジェクト」を実施。これは、クマノミ育成区域周辺のシュノーケリング&ダイビング体験と、SDGsの14番「海の豊かさを守ろう」を学ぶレクチャーを組み合わせたプログラムだ。

「2022年の夏休みには県内の高校生を対象に、沖縄の生態系について学んで科学に興味を持ってもらうためのワークショップを実施しました。こうした活動を通じて、皆さんに海洋環境を守ることの大切さを知っていただければと思います」(河合さん)

子供の頃から海が大好きだったという河合さん。12歳でダイビングのライセンスを取得し、国内外のさまざまな海に潜ってきた。なかでも沖縄の海が大好きで、長年潜り続けている。

「沖縄で人気のダイビングポイントでは、年々サンゴの破壊規模が大きくなっていると感じています。それに危機感を抱いている恩納村は、2018年に“世界一サンゴにやさしい村づくり”を目指して『サンゴの村』を宣言。国際的指針『グリーン・フィンズ』を日本ではじめて導入しました」

恩納村が採り入れた「グリーン・フィンズ」とは

グリーン・フィンズは、UNEP(国連環境計画)とイギリスの財団による珊瑚礁保全の取り組みで、環境に配慮したダイビング、シュノーケリングのガイドラインを定め、それを守っているダイビングショップの認定も行っている。恩納村は、「サンゴの上に立たない」「フィンで海底の砂や沈殿物を巻き上げない」「魚の餌づけをしない」などのグリーン・フィンズのガイドラインを普及させていくことで、「サンゴなど豊かな自然あふれる社会」と、「サステナブルツーリズム」の両方を実現しようとしているのだ。

「私たちがまず、海洋酸性化対策のために取り組まなければならないのは、二酸化炭素の排出量を減らし、化石燃料をつかわない低炭素社会をつくっていくこと。私は、近距離の移動には自転車をつかいますし、買い物する際には、なるべく長くつかえるものを選ぶなどの工夫をしています。こうした、ちょっとずつの積み重ねが大切なんだと思います」

そう、沖縄のみならず、世界中の美しく豊かな海を守るために、私たちにできることはたくさんある。ごみを減らす工夫や移動手段を考えるなど、できる範囲で取り組めるCO2削減を実行してみたい。

取材協力:沖縄科学技術大学院大学(OIST) 取材・文:鈴木博美 写真:佐藤良一

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