宇垣美里がオススメする「ジェンダー問題に立ち向かう本」
社会問題に対して、さまざまな方法で姿勢を表明しているフリーアナウンサーの宇垣美里さんがジェンダー問題を考える、勉強する、身近に感じる本をご紹介。誰もが関係する大切な性別にまつわる問題について、多角的に読み解ける2冊です。
日常で覚える違和感を
可視化させてくれる小説
私は、昔から性別や年齢、生まれた場所など自分が選んだものではないことで道を阻まれることがすごく嫌でした。「女の子なんだから、おとなしくしなさい」といった決めつけにも常に疑問を持っていました。モヤモヤすることに直面することは多々ありましたが、読書をすることでその違和感を客観的に認識することができるようになった気がします。先人たちが言葉にしてくれたものを読むことで、私も言葉を持てるようになりました。それは大きな武器になります。そのためにも、やはり読書は必要だと思います。
そんな読書経験の代表的な作品が『侍女の物語』。この本では、地獄のような世界を描いています。フィクションですが、実は現実社会と地続きではないでしょうか。違和感を見て見ぬ振りをすることで、望まない社会になってしまうかもしれない。そんな恐ろしい結末を見せてくれる物語です。
『パワー』は、ある日突然女性が特別な力を持ち、男女のパワーバランスが逆になる話。男女の地位が逆転したからといって平和になるわけではなく、ゾッとするような社会になっていきます。男女どちらかが優位であることがいいわけではないという痛烈なメッセージ。逆説的にいまの社会の問題が浮かび上がってきます。
侍女の物語
マーガレット・アトウッド/著、斎藤英治/訳
舞台は近未来の独裁国家。主人公の侍女は、司令官の子どもを産むという役目を負わされている。男性絶対優位の社会で監視と処刑に怯える日々を過ごしながらも、ある日、この生活からの脱出を試みる。ハヤカワepi文庫刊。
パワー
ナオミ・オルダーマン/著、安原和見/訳
ある日、女性だけが手から電流を発せる力を授かった。女性たちのなかには、その力をつかい復讐に燃える者や、男性に対し暴力をふるう者も現れる。そして女性が男性を支配する社会が構築されていく。河出書房新社刊。
PROFILE
宇垣美里 うがき・みさと
フリーアナウンサー。2014年TBSに入社。19年4月からフリーに。はっきりと自分の意志を表明する姿勢から“宇垣総裁”とも呼ばれる。読書家として知られ、書評や映画のコラムも数多く手がける。著書に『宇垣美里のコスメ愛 BEAUTY BOOK』(小学館)。
●情報は、FRaU2021年1月号発売時点のものです。
Photo:Toru Oshima Illustration:Adrian Hogan Text & Edit:Saki Miyahara
Composition:林愛子
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