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寄付とは、寄り添って、つき添うこと。「ドネーション」基礎知識
寄付とは、寄り添って、つき添うこと。「ドネーション」基礎知識
COLUMN

寄付とは、寄り添って、つき添うこと。「ドネーション」基礎知識

ドネーションは、寄付、寄贈、贈与、助成を意味する言葉です。ここでは、活動に共感する団体にお金を渡すこと=ドネーションと捉え、日本における寄付の歴史や、寄付する側の姿勢を学びます。「認定NPO法人日本ファンドレイジング協会」代表理事の鵜尾雅隆さんに伺いました。

Q.クラウドファンディングや
ふるさと納税との違いは?

基本的に同じです
寄付は長期的な支援にも適しています

ドネーション=寄付とは、金銭や財産を贈ること。つまりクラウドファンディングもふるさと納税も寄付の一部なのです。街角の募金箱にお金を投じるのも、古着を途上国に贈ることも寄付です。ですが、ここでは主に非営利団体や公共団体といった社会問題の解決のために活動する組織、団体にお金を贈ることを指して話を進めたいと思います。

こうした団体への寄付と、クラウドファンディングやふるさと納税の違いは、あえていうならば「頻度」ではないでしょうか。クラウドファンディングやふるさと納税が、1回の手続きで一度きりの支援となる傾向があるのに対し、団体・組織への寄付は継続性がある場合が多く、1回きりの寄付のほかに、毎月、毎年といった定期的な送金もできます。寄付とは「寄りそって付きそう」とも考えられる。長期的に支援したい団体を見つけることは、人生を豊かにすることにもつながります。

Q.日本人ひとりあたりの寄付額は?

平均2万7013円
若い世代に意識の高まりが

日本の2016年の個人寄付総額は7756億円※。2010年と比べると約3000億円※も増えています。意識を変えたきっかけは東日本大震災。そして、現在のコロナ禍もあって、社会へ貢献したいという気持ちはさらに高まっています。しかし世界と比べると、日本人の寄付額は決して大きいとはいえません。個人寄付総額が名目GDPに占める割合を比べると、日本の0.14%に対し、韓国は0.50%、イギリスは0.54%、寄付大国であるアメリカでは1.44%にもなっています※。

日本の寄付の未来を考えたとき、ひとつの希望は、若い世代に寄付の意識が芽生えていること。コロナ禍で給付金以外のお金を寄付に回した世代は20代が最も多いという集計結果もあるそうです。
※寄付白書2017より

Q.寄付先の公正・透明性を判断する方法は

活動&決算報告書を確認
法人の種類や認証も

NPO法人は全国に5万1000強。公益社団や公益財団法人を含めるとさらに増えます。そのなかから自分が信頼できると思える寄付先を探すのは大変なこと。「これをクリアしていれば、この団体はOK」とひと言でいえるものでもありません。まず確認したいのは、活動報告書や決算報告書。団体のホームページに報告書がアップされているか、その内容に納得できるかが、一番シンプルな判断方法です。

団体を判断するための基礎知識も大切です。経営管理がしっかりとしていて、3000円以上の寄付者を年平均100人以上集めているNPO法人は「認定NPO法人」を名乗れます。「公益社団」「公益財団法人」を名乗るには、行政庁から認められなくてはなりません。難しいのは、あえて法人格をとらずに活動する素晴らしい団体もあること。法人の種類だけで判断はできませんが、ひとつの基準にはなります。非営利組織評価センターによる「グッドガバナンス認証」や、第三者評価と団体のセルフチェックで認定する「ベーシックガバナンスチェックリスト」も知っておくといいでしょう。活用する団体はまだ少ないですが、これからの広がりが期待されます。

Q.寄付先をなかなか決められません

恋愛のように
自分の心が動くことを大切に

「どこに寄付をすればいいかわからない」という声をよく耳にします。日本人は真面目に考えすぎてしまうのかもしれません。そんな方にお伝えしているのは、「寄付は恋愛に似ています」ということ。どの団体が正解かではなく、どの団体が好きかで判断するのです。「寄付によって誰を笑顔にしたいか」と言い換えることもできます。

寄付をキッカケに団体からのダイレクトメールを受け取るようにすれば、関心のある社会問題について定期的に学べます。団体の取り組みが自分のライフワークにもなり、社会にコミットできるのです。自分のお金が役に立っているという実感、孤独感を払拭するにも有効。寄付は、する側をも幸福にする力があるのです。

Q.伝統的に日本には寄付文化がない?

いいえ、江戸時代の庶民にとって
寄付は当たり前のことでした

ほかの国に比べて、私たちの国にはそもそも寄付の文化がなかったのではと考える方も多いようです。「キリスト教が寄付を広げてきたのだ」と言う人もいます。でも、日本にも古くから寄付の文化はあったのです。

江戸時代には、庶民がお金を出し合って暮らしの基盤をつくっていました。大阪の堺市には商人たちの寄付で建設された石橋がいまも多く残っています。しかし江戸時代が終わると、富国強兵の名のもと、あらゆることを国が中心となって進めるようになります。社会問題の解決を行政が担当するようになったのです。すると国民は、身の回りにある問題にも気づきにくくなります。高度成長期になると、国には多額の税収があったので、「世の中の課題解決は国に任せておけばいい」という意識が国民の間に広がってしまったのだと思います。

Q.税金を納めてもなお、寄付が必要?

社会課題の解決には
行政、企業、NPOの協力が必須

前述のとおり、日本人は「社会課題は国や行政が税金で解決するもの」という意識が強すぎるのかもしれません。世界を見わたすと、行政、民間企業、NPOが手を組んで世の中をよくするというモデルが一般的です。その3つがうまく相互機能しないと、社会課題はいつまでも解決されません。そのために、NPO活動を支える寄付が大切なのです。

NPOに預けたお金が、それ以上の価値を生むこともあります。被災地に1億円で物資を届けるとき、行政ならそこから人件費や運搬費が引かれるかもしれません。ですがNPOなら、ボランティアを集めたり企業と連携して運搬費を無償にできることもある。お金の価値を広げ、さまざまな支援の力を生み出す可能性があるのです。

Q.遺贈寄付とは何ですか

自分の遺産を寄付すること
世界で広がりつつあります

遺贈寄付とは「人生の集大成の貢献」ともいわれる寄付で、個人が亡くなったときに、遺言に従って遺産が寄付されることです。遺産全額である必要や、大金である必要はなく、数万円から遺贈寄付ができます。日本ではまだ一般的ではありませんが、世界的に増えつつある寄付のあり方です。

背景にあるのは高齢化社会。自分がいなくなった世界、子どもや孫世代が生きる世界を、よりよいものにしたいという思いが、こうした寄付につながります。末期ガンの独身女性が動物愛護団体へ遺贈寄付を決め、病室に感謝状が届いたという例もあったそうです。

人生の集大成としての寄付は、寄付先に大きな希望や勇気をもたらします。寄付のあり方はどんどん広がっています。呼び名はさまざまですが、共通するのはお金を贈る側も、受け取る側も幸福を感じられること。共感の連鎖が新たな価値を生むのです。

PROFILE

鵜尾雅隆 うお・まさたか
認定NPO法人日本ファンドレイジング協会代表理事。JICA、外務省経済協力局等を経て、現職。著書に『寄付をしてみよう、と思ったら読む本』(日本経済新聞出版)。

●情報は、FRaU SDGs MOOK Money発売時点のものです(2020年11月)。
Illustration:Tomoko Fujii Text & Edit:Yuka Uchida
Composition:林愛子

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