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世界も認めた満天の星を守る! 自然とともに暮らす西表島の人びと【後編】
世界も認めた満天の星を守る! 自然とともに暮らす西表島の人びと【後編】
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世界も認めた満天の星を守る! 自然とともに暮らす西表島の人びと【後編】

「日本最後の秘境」といわれ、国内外から多くの観光客が訪れる沖縄県・竹富町の西表島。ほぼ全域が国立公園であると同時にユネスコ世界自然遺産であり、日本ではじめて星空保護区にも指定されました。美しい星空を守ることは、そこに生きる動植物を守ることにほかなりません。いっぽうで西表島では、美しい砂浜に打ち寄せられるごみが大きな問題になっています。自然を守りながら生きる、西表島の暮らしに迫ります。

ーー前編はこちらーー

一等星のすべてが見られる圧巻の星空

2018年3月、日本で初めて「星空保護区」となった沖縄県八重山諸島の西表石垣国立公園。アジア全体でも2番目の登録となり、世界屈指の星空環境であることが認められた。西表島は東京23区ほどの大きさをもつ、県内では沖縄本島に次ぐ大きさの島。イリオモテヤマネコなど固有種を含む多くの動植物が生息する、豊かな自然環境で知られている。

この島で長年ツアーガイドを務めている望月さんは、西表島ならではの星空鑑賞ナイトツアーを主宰。その大きな魅力は、「またたかない星」が見られる希有な場所であることだという。

「北緯24〜28度に位置する沖縄は、偏西風やジェット気流の影響をほとんど受けないため、大気の揺らぎがないんです。そのため、星の光がストレートに届きます。さらに北回帰線にほど近いため、星の見え方や位置が日本のほかの場所とは違います。南の空が広いため、日本で唯一南十字星が見える地域でもあるんです。夏は天の川が非常に濃く美しく見えますし、空気が澄んだ冬は息をのむほど美しい満天の星が広がります。ただし冬は、天気に恵まれない日も多いのですが……」(望月さん、以下同)

西表島から見える南十字星。観賞できるのは、5〜6月
月と天の川。「島の人たちはいつも見ているものなので、その貴重さを認識していない方も多いんです。『あれが天の川なの? だから雲みたいに動かないんだね』なんて言われることが結構あります(笑)」(望月さん)

世界の空には88の星座があるが、西表ではそのうち84が見える。さらに、21個の1等星がすべて見えるという。そうした地の利に加え、世界の星空保護区のなかでもかなり「暗い」ことが大きな評価基準になった。

「星空保護区は、人の住んでいない真っ暗な山中などでは認定されません。人が光をコントロールしていることが大切。西表島では余計な街灯はともさず、あっても、なるべく下向きに設置しています。かつて夜通しつけていた学校の灯りなども、いまではすべて消すようになりました」

卵からかえったウミガメの赤ちゃんが海に戻っていけるのは、月の光が海を照らしているからだという。陸に街灯や自動販売機などの明かりがあると、ウミガメの赤ちゃんたちはその光を目指して進んでしまうのだ。

「常夜灯を設置したら近所で飼われている犬が夜ひどく吠えるようになったり、光に照らされた花壇の花が全滅したりと、光が自然に与える影響はとても大きいものです。西表島にいらっしゃる方々には、動物保護のために車の制限速度(40km/h)を守っていただき、ハイビームにするのは必要最小限にしてもらえるとうれしいですね。人間が人工的な光を手に入れてから100年ほどしかたっていません。ですから、まだまだ私たちは光のコントロール法を学ぶ必要があるのでしょう」

美しい自然への脅威に立ち向かう、島民たちの暮らし

世界自然遺産や星空保護区に選ばれたことで、多くの観光客が詰めかけるようになった西表島。以前はひと気がなかった絶景の地や秘境の森に、多くの人が訪れている。自然環境に、まったく影響がないはずはないだろう。そんななか、2021年に設立されたのが「西表財団」。自然環境をモニタリングしながら守り、西表島のエコツーリズムを推進することが大きな目的だ。

森と海をつなぐ川の河口にある、マングローブの古木。豊かな生態系をもつマングローブは「海のゆりかご」とも呼ばれ、酸素を供給して二酸化炭素を吸収・固定する機能に注目が集まっている

「島の豊かな暮らしを未来につなげていくために、島民主体で立ち上げた団体です。目指しているのは、『西表島の豊かな自然と島の伝統的な文化や営みを守り、地域の持続的発展に寄与する』こと。多くの方に西表島の自然や文化を楽しんでいただけるよう、島内外での取り組みが必要だと感じています」(同財団事務局長・徳岡春美さん)

西表島では近年、海岸やマングローブ群生地への漂着ごみが大きな問題となっている。家庭や海岸からのごみだけでなく、山中の産業廃棄物やほかの地域から流れてくる海洋ごみなども、美しい砂浜に流れ着くのだ。

美しい海も西表島の大きな魅力。エメラルドグリーンの海が続く波打ち際から振り返ると、無数の漂着ごみが目に入る、というのが現実だ
漂着ごみを分別したところ、ペットボトルなどプラスチックや発泡スチロールが大部分を占めていた

西表財団や島のツアーガイド、町の小中学校の生徒など多くの島民が、ボランティアでこうしたごみを拾う「ビーチクリーン」活動を行っている。けれども拾っても拾ってもごみは打ち寄せられてくるばかりで、いっこうに「クリーン」な状態がキープできない。さらに、拾ったごみは産業廃棄物扱いになるため、お金を払って業務委託して処分する必要がある。西表島には、産業廃棄物を処理する事業者も施設もないのだ。

そこで島では、漂着ごみを定期的にモニタリングして報告する活動を開始。出どころや原因を調べることで、解決につなげるよう島全体で取り組みを行っている。すぐに解決できる問題ではないが、海洋漂着物処理推進法ができるなど、その行動はちゃんと実を結びはじめている。

西表島の美しい星空や環境は、本来の地球の姿ともいえる。そこに住まう人々には、イリオモテヤマネコをはじめとする動植物や美しい星空を守る生活が、自ずと身についているのだろう。この島を訪ねる機会があれば、あなたも自然や環境に関する考えが、きっと変わるはずだ。

ーー前編はこちらーー

photo:西崎進也(マングローブ、砂浜、漂着ごみ) text:萩原はるな

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