学生インターンを派遣して、未収穫問題の解決に挑む!
家庭や事業者で発生するフードロスと並んで、食料に関する社会問題である地方農家の「未収穫問題」。少子高齢化による働き手減少ほか、理由はさまざまです。社会貢献型ショッピングサイトを運営する株式会社クラダシでは、この問題解決のためにも活動しています。前回に引き続き、代表の関藤竜也さんにお話を伺いました。
後継者に悩む農家と学生をつなぐ取り組み
「未収穫問題」とは、農家の人手不足や収穫機器が高額で買えないために、収穫時期の作物が田畑に放置されてしまうこと。せっかくのおいしい農作物がそのまま腐敗してしまい、フードロスにつながっているのだ。
そこでクラダシでは、フードロス問題に加えて、地方農家の未収穫問題を解消するための取り組みを行っている。
同社が取り組んでいるのが、社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ(クラチャレ)」。人手不足に悩む地方農家へ学生を派遣し、収穫のお手伝いをする。学生たちの交通費や宿泊費などは、クラダシが設立した社会貢献活動のための「クラダシ基金」から捻出される。収穫された産物はKURADASHIで販売し、その一部をクラダシ基金に還元する。サーキュラーエコノミー(循環経済)を実現しているのだ。
「クラチャレをはじめたきっかけは、取り引きのある企業や自治体からの相談でした」と関藤さん。「かねてから、地方の人口減少と高齢化問題が気になっていたところ、取引先から種子島のサトウキビの未収穫問題について相談されたのです。せっかくサトウキビができているのに、収穫できないまま残ってしまうのはもったいない。しかしサトウキビの収穫は重労働で、収穫機は高価なため取り入れることは難しいとのことでした。
さらには、若い方たちが農家を継ぎたがらないという現状もある。そこで若い学生さんたちを地方の農家さんのもとへ派遣し、お手伝いをしてもらうことを思いつきました。自治体の方たちとの意見交換や、その地域の魅力発信にも力を貸してもらっています」
クラチャレは2021年末までに11回行われており、鹿児島県種子島のサトウキビ、香川県小豆島のオリーブ、高知県北川村のゆず、鹿児島県西之表市のネギや安納芋、北海道仁木町のさくらんぼ、京都府京丹波町の黒枝豆の収穫などをサポートしてきた。
「学生の募集はおもにWantedlyという求人サイトを通して行なっています。基本的には大学生と大学院生を募集していますが、家族単位で募集をしたことも。参加者からは、忘れられない体験になった、またすぐにでも行きたいという声が多く、私たちもうれしくなります。
移住支援を行っている自治体は増えつつありますが、実際に住んで働くようになった方のなかには、地域のコミュニティに溶けこむのが難しく、ミスマッチを感じる人たちが多いようです。クラチャレでは、農業体験をしながら地元の方たちと一緒に生活します。移住前のお試しとしても、活用いただけるでしょう」
今後もさまざまな自治体と協力してクラチャレの機会を増やし、実際にその地域に移住して農家に転身する人たちが現れることを期待しているという。
生活に取り入れるだけで“一歩”を踏み出せる
KURADASHIによるフードロス削減量は、2022年3月時点で2万1641t。経済効果は、67億876万円にのぼるという。また、サイト上での販売だけではなく、フードバンク支援にも力を入れている。フードバンクは、食品関連事業者から提供された食品、食材を全国の福祉施設やこども食堂、炊き出しを行う団体などに送る事業者。KURADASHIでは、食品提供を行いたい事業者とフードバンク団体をマッチングしている。
「KURADASHI利用者の皆さまのお話を聞いていて、日本人らしいなと思うのが、『社会貢献をするならきちんとやらなければ。片手間では失礼だ』と考えている方が多いことです。けれども、決して構える必要はありません。
たとえばお子さんのPTAの会合にKURADASHIで購入したおせんべいを持って行ったり、会社の来客用としてKURADASHIで購入したドリンクを用意したり……。それだけでも社会貢献につながりますし、家族やまわりの方と、フードロス問題について会話するきっかけになると思います」
ext:荒井風野
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