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「沖縄ではムリ!」なカカオ栽培を5年で成功させた“異色の移住者”
「沖縄ではムリ!」なカカオ栽培を5年で成功させた“異色の移住者”
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「沖縄ではムリ!」なカカオ栽培を5年で成功させた“異色の移住者”

「沖縄でカカオ栽培は不可能」。そんな常識を覆した人がいます。「OKINAWA CACAO」では、地域の特産品を使ったチョコレートづくりとカカオ栽培に挑んでいます。やんばるの恵みが詰まったオリジナルチョコレートを通じた地域づくりについて話を伺いました。

チョコレートを、やんばるの“誇り”に

那覇空港から車で北へ2時間弱。「やんばる」と呼ばれる沖縄本島の北部に位置する大宜味村(おおぎみそん)は、緑濃く深い山々と美(ちゅ)ら海に面する、のんびりとした農村だ。シークヮーサーの生産量は県内一を誇り、やんばるの自然に惹かれ、陶芸や木工などをする工芸作家たちも多く移住している。そんなのどかな村の、さらに奥まった場所に、オシャレなチョコレートショップ「OKINAWA CACAO」がある。

風光明媚な「長寿の里」、大宜味村に位置。リノベーションされたオシャレな外観が目をひく

店に入ると、カカオの芳しい香りに気分が高揚する。カウンターにはシナモンの一種のカラキ、シークヮーサー、月桃、泡盛といった”やんばる”らしいフレーバーや、季節のドライフルーツのチョコレートが並んでいる。

オーナーの川合径さんは、2016年にチョコレートの原材料となるカカオに可能性を求めて大宜味村に移住し、カカオ栽培と研究、チョコレート製造及び6次産業化事業に取り組む会社「ローカルランドスケープ」を設立した。その主な目的は、地域の特産品を活かしたチョコレートづくりを通じて地域の誇りを育てることだ。

店内ではドリンク類も提供。2階でゆっくり過ごせる

川合さんの経歴はおもしろい。地域づくりや産業創出に携わりたいという想いから、大学は農学部を選び、卒業後はビジネススキルを身につけるために、時代の先端に立つ半導体商社に入社。営業職を続けながらビジネススクールに通った。その後、縁あって起業家育成などを行う企業へ転職し、そこで出会った人々から刺激を受けて自らも起業を決意する。その際に選んだのが、「沖縄」と「カカオ」。沖縄でカカオを栽培し、地元の素材と組み合わせたチョコレートを商品化することに可能性を感じた。

「チョコレートは世界共通の言葉で、さまざまなスタイルがあります。沖縄にはサトウキビがあるし、フレーバーもたくさんある。原材料からすべてを明確に伝えていくことで、この地域の魅力を伝えられると考えました。他の誰が事業化する前に、自分が始めなければという思いで、知人を頼って大宜味村田嘉里(たかざと)集落に拠点を置きました」(川合さん、以下同)

カカオ栽培もチョコレートづくりも未経験だった川合さんは、専門家のアドバイスを受けつつ、独学で両方を始めたという。

ローカルランドスケープ代表の川合径さん

あきらめないでやり続ける。それが大切

カカオ栽培に適した地帯「カカオベルト」は、南北緯20度に位置するといわれる。沖縄は北緯26度。カカオは越冬できないことから、「温暖な沖縄とはいえ、四季のある日本でのカカオ栽培はムリだ」と専門家たちから言われた。しかし川合さんがあきらめることはなかった。

「それなら、植物の生命をサポートできる環境を整えればいい。マンゴーのようにビニールハウスで栽培すれば、必ず育つ。沖縄なら亜熱帯気候という特性があることから、無加温ハウスでも栽培は可能なはずだと考えました」

種から育てたカカオは太い木に成長し、実である「カカオポッド」をたわわに実らせている

2016年春からのカカオ栽培は、種まきからはじまった。海外からカカオの実を仕入れ、ビニールハウスと露地に2000鉢分以上の種をまいた。無農薬で栽培し、害虫、台風、強風対策など沖縄でのカカオ栽培を実現するためのトライ&エラーを繰り返して5年。カカオはようやく実をならせた。

昨年は100個を超えるカカオが実り、10kgの収穫に成功。販売までにはもうしばらく時間が必要だが、県産素材でチョコレートがつくれるメドは立った。今後一定量のカカオが収穫できれば、正真正銘、沖縄県産素材100%のチョコレートを販売できるようになる。

川合さんの信条は、何ごとも継続すること。チャレンジして成長すること。「地域に根ざす取り組みと、大切にしたいことを大切にする行動が大切」だという。

工房では、カカオ豆からチョコレートになるまで一貫して製造する「Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)」でつくられている

広がる沖縄カカオの輪

そんな川合さんのアツい想いに共感し、沖縄に移住してきたスタッフもいる。店長の駒井美咲さんは、大学で機械工学を専攻し、大学院では人間工学を学んだという根っからのリケジョ。大学時代にカカオに関わる人と環境のサステナビリティに興味を持ち、いつかカカオにつながる仕事がしたいと考えていた。モノづくりも好きだったことから農業用機械メーカーの開発部門で職を得たが、オキナワカカオの存在を知り、転職を決意した。

「地域の食材と組み合わせてチョコレートをつくることで付加価値が生まれる。お客様にも生産者にも価値ある商品づくりに取り組むという面で、モノづくりに通ずるものがあると思います」(駒井さん)

川合さんがひとりで始めた沖縄カカオの「輪」は、確実に広がっている。現地を訪れた際には、ぜひ「沖縄生まれ沖縄育ちのチョコレート」をチェックしてほしい。

photo:佐藤良一 text:鈴木博美

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