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悲劇の絶滅種や絶滅危惧種も。一生分の鳥が見られる(!?)国立科学博物館「鳥」展へ
悲劇の絶滅種や絶滅危惧種も。一生分の鳥が見られる(!?)国立科学博物館「鳥」展へ
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悲劇の絶滅種や絶滅危惧種も。一生分の鳥が見られる(!?)国立科学博物館「鳥」展へ

雪の妖精「シマエナガ」に上野公園で会える!? 国立科学博物館(東京・上野)で、特別展「鳥」が開催されています(2025年2月24日まで)。身近なカワイイ小鳥から、めったに見られない珍しい鳥、すでに絶滅してしまった悲劇の鳥まで、600点以上もの標本が迎えてくれる会場へ行ってきました。

レッドリストの14%。鳥類は環境の影響を受けやすい

世界には約1万1000種もの鳥がいて、日本ではそのうち約700種(※)が記録されているが、なかには過去に1~2回の観察例しかないなんて鳥もいるため、全部を見るのはとてもムリだ。ちなみに400種ほどの鳥の観察経験があれば、バードウォッチャーとしてベテランとされる。

そんななか、600点以上もの世界の鳥類標本を見られる夢の催しが国立科学博物館で開催されている。通称“鳥展”こと、特別展「鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」がそれだ。会場入口では、いきなり人気者のシマエナガに迎えられてホッコリ(トップの写真の右下に写っているが、ド迫力のクジャクに比べ小さすぎて気づかないかも!?)。

会場に入ってしばらくは、絶滅した鳥や、絶滅が危ぶまれる種の展示が続く。現在、国際自然保護連合がレッドリストに指定している生き物は約3万種。環境の影響を受けやすい鳥類は、そのうち14%を占めているという。これ以上絶滅種を増やさないために、鳥とともに生きていく未来へ思いをめぐらせたい。

※2024年に発行された日本鳥類目録改訂第8版の掲載種は690種

日本で絶滅してしまった大きなキツツキ「キタタキ」

すでに絶滅した15種・亜種を代表する標本が、かつて対馬(長崎県)に生息していた大型のキツツキ「キタタキ」だ。解説によると、国内では1920年以降生息が確認されていない。

キツツキ類は文字どおり、木をつついて穴を開け巣をつくったり、虫を捕らえたりする鳥。大型のキツツキが生きていくには、体に見合った穴を開けられる大きな木と、十分にエサを確保できる広い森が必要だ。キタタキ絶滅の一因も、森林伐採の影響とされる。

姫路科学館所蔵のキタタキ標本。現在も北海道や東北に生息する「クマゲラ」と同じ、クマゲラ属の大型キツツキだった

ちなみに会場内には、キツツキ類の古巣がいろんな生き物に利用されていることを解説するパネルもあった。自分で穴が開けられない小鳥やリス、モモンガが巣としてリユースするほか、ヒナが育つ際に生じるゴミを食べる虫も生息しているのだとか。

森を守ることはキツツキを守ることにつながるが、キツツキを守ることは多様な生物の住む豊かな森を守ることにもなるのだ。

国内絶滅を経て復活へ! 「トキ」と「コウノトリ」

キタタキの隣では、国内で一度は絶滅してしまったものの、復活しつつある鳥が紹介されていた。日本の特別天然記念物であり、世界的にも稀少な「トキ」と「コウノトリ」だ。日本産のトキは2003年に絶滅、コウノトリは1971年に野生絶滅した歴史がある。

左からコウノトリ、トキ(いずれも国立科学博物館所蔵)、右端はキタタキの標本

その後、外国産ペアの人工繁殖など、飼育下で数を増やす取り組みが進められた。かつての生息地に野生復帰させようと、トキは2008年から佐渡(新潟県)で、コウノトリは2005年から豊岡(兵庫県)で、継続的な放鳥がおこなわれている。野外でも自然にヒナが生まれるようになり、トキは500羽、コウノトリは400羽を超えるまでに回復した。

この復活劇には、地域の人々主体の保護活動が欠かせなかった。せっかく放鳥しても、エサをとり、子育てできる環境がなければ、繁殖していけないからだ。生息に適した里山、水田、湿地の保全活動は広がりを見せ、現在は別の地域での放鳥も計画されるように。すでに国内5ヵ所で放鳥されているコウノトリは、2024年には野田(千葉県)でもヒナが巣立った。

現在進行形で絶滅に向かっている日本の鳥たち

鳥展では、現在、絶滅に向かっている日本の鳥も展示されていた。南アルプスや北アルプスなどの高地に分布する「ライチョウ」は、「地球温暖化の影響を最も強く受けている日本の鳥」(特別展「鳥」公式図録より)。温暖化によって、生息に適した環境の標高が上がっているのだが、現在より高いところにはもう“逃げ場”がないという。40年前と比べ、個体数は4割も減ってしまった。

左からライチョウ(姫路科学館所蔵)、「オガサワラカワラヒワ」「ヤンバルクイナ」(国立科学博物館所蔵)の標本

沖縄島の固有種ヤンバルクイナと、小笠原諸島の固有種オガサワラカワラヒワは、どちらも島特有の環境で命をつないできた鳥だ。減少の要因のひとつに、マングース、ノネコ、クマネズミといった外来種の影響が挙げられている。島に本来いなかった捕食者であるため、その脅威に対抗できていないのだ。

不幸中の幸いは、人々が激減していることに気づき、絶滅する前に保護活動をスタートできたこと。減少の要因は複合的なものだが、人間の活動が大きく影響していることは疑いようがない。この鳥たちの未来は、私たちにかかっている。

これ以上絶滅種を増やさないために

国立科学博物館のある上野恩賜公園では、たくさんの野鳥が見られる。この日、取材前後の小1時間で、18種もの野鳥を観察した。国立科学博物館の屋上でも、「スズメ」や「ハクセキレイ」といったカワイイ小鳥を間近に見られた。

取材終了後、国立科学博物館の屋上で出会ったハクセキレイ。事故にでも遭ったのか左の足指をすべて失っていたが、たくましく生きていた

最近、スズメが絶滅危惧種に相当するペースで減っているとの報道を耳にして、驚いた方もいるのではないだろうか。そこらにふつうにいるスズメが絶滅するとは、にわかに想像しにくいが、トキやコウノトリも、かつてはあたりまえに見られていたのだという。

こうした身近な鳥に関心を向けることが、ひいては絶滅を防ぐことになるのだ。

――後編では、鳥に興味がわく展示を紹介しますーー

text:櫛田理子 photo:吉村冬彦

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