徳島・阿南海岸サステナブル紀行④美波町の古民家パン店&海陽町のローカルスーパー3代目
SDGs先進県として、さまざまな取り組みを進めている徳島県。その南部、国定公園にもなっている阿南海岸沿いに、美波町から牟岐(むぎ)町を経て海陽町を訪ねました。そこで出会った人びとは、身近にあるものを守ることで、町を循環させつづけていました。
直感に導かれて移住、当地で愛される存在に
直感的にその土地に魅了され、移住を選び、地域の交流の場となる店の経営をはじめた人たちがいる。2021年4月に美波町にオープンした自家製パンとワインの店「ミルアン」の店主・ボーデ紀子さん。夫の両親がヨット旅の途中で立ち寄った美波町の風景に惚れこんで先に移住し、東京で働いていた紀子さんと夫も彼らに誘われ、2016年にこの地に移った。当初は義両親の民宿を手伝っていたが、夢だった自分の店を開くことを決意。
「この場所だからチャレンジできたのかもしれません。町の人が、私のパンをおいしいって食べてくれるのはうれしいですね」
店に飾られた古いランプや欄間、フランス人で彫刻家の義父が外壁に施したモチーフは、彼女の雰囲気にとても合っている。
「美波町日和佐の街並みが大好きなんです。そのよさを少しでも残していきたい」
海陽町には、絶対行くべきローカルスーパーがあると聞きつけた。「ショッピング大黒」。3代目社長の岩崎致弘さんの経歴が、とてもおもしろいのだ。長年働いた音楽業界を離れ、夫婦で全国をキャンピングカーで旅する暮らしのなかで、訪れた海陽町に惹かれて2017年に移住を決意。山奥での自給自足生活中に、後継者を探していた2代目と出会い、意気投合してすぐに事業承継した。
一見ふつうのスーパーだが、希少なオーガニックワインや、独自に仕入れる自然食品の数々など、ユニークなセレクトに驚く。
「朝獲れの地魚も自然食品もセレクトする。買い物って、選ぶ幅があると楽しいじゃないですか」と岩崎さん。つくり手の想いを届けるため、お手製のチラシには商品のストーリーをつづる。今日も店先ではお客さんとの会話が絶えない。「食べることで伝わるメッセージの力は世代も国も超えられる。食をキッカケに互いの環境や地域を知り、心から笑い合う世の中なんて、“最幸”ですね」
●情報は、FRaU S-TRIP 2021年12月号発売時点のものです。
Photo:Ko Tsuchiya Text:Mana Soda. Composition:林愛子
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