Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

神々とイルカが棲むパワースポット「壱岐島」でワーケーションをしてみたら【後編】
神々とイルカが棲むパワースポット「壱岐島」でワーケーションをしてみたら【後編】
LIFE STYLE

神々とイルカが棲むパワースポット「壱岐島」でワーケーションをしてみたら【後編】

長崎空港から飛行機で約30分、福岡県の博多港から高速船で約1時間とアクセスのいい壱岐島。島内には神社や小さな祠(ほこら)が1000以上もあり、島全体に神秘的ですがすがしい空気が満ちている。太古の昔から人々が畏(おそ)れ敬ってきた自然と神々のパワーをもらいに、いざ壱岐島でアウトドア・ワーケーション!

▼前編はこちら

島を歩けば神様に出合う。信仰と祈りを感じる旅

ときを経て、自然と一体になったような神社や祠も多い

「パワースポット巡り」が好きな人も多いかもしれないけれど、壱岐島に滞在していると、その言葉がしっくりこなくなる。というのも、島には1000以上の神社や祠が存在していて、ぶらぶらと散歩しているだけで、ガイドブックには載っていない、小さく素朴な祠に出合う。「巡るぞ!」と思わずとも、いつも近くに神様がいる。そんな気持ちになる。

寄八幡神社の鳥居。漁に使うロープでしめ縄がつくってあった

そもそも、なぜ壱岐島にはたくさんの神様が祀られているのか。スマホを取り出して調べる必要がないのもこの島のいいところ。なぜって、訪れた先々の神社で、宮司(ぐうじ)さんたちが丁寧に島の歴史や神話を話してくれるから。 日本最古の歴史書とされる『古事記』の冒頭には、夫婦神である伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)の「国生み神話」が記されている。夫婦神はのちに日本となる8つの島をつくったとされており、5番目につくられたのが伊伎嶋(壱岐島)なのだと教えてくれたのは寄八幡(よりはちまん)神社の宮司さん。

神社ごとの御朱印も個性豊か。宮司さんとの会話も楽しい

御朱印を書きながら、島に伝わる神話なども交えて話してくださった。『古事記』での壱岐島の別名は「天比登都柱(あめのひとつばしら)」ということ、「柱」とは天地を結ぶ交通路という意味で、壱岐島は天と地を繋ぐ架け橋の役割を担っていたことなど、聞けば聞くほどここに暮らした人々と神様の関係を知りたくなる。

スタンプラリーのように御朱印を集めるために神社を巡るのも楽しいけれど、それだけではもったいない。それぞれの神社や祠に刻まれてきた物語を紐解いていくこともまた、神社巡りの楽しみなのだと教えてもらった。

引き潮前後だけ鳥居への参道が現れる小島神社は島全体が神域で枝一本持ち出すことが許されない。海の中、鳥居に続く白っぽい部分が参道になる

寄八幡神社を出る前、宮司さんに「小島神社はお参りしましたか?」と尋ねられた。“壱岐島のモン・サン・ミッシェル”とたとえられる小島神社は、海に浮かぶ島全体が神域で、一日2回の干潮の前後、数時間だけ参道が現れる不思議な場所だ。もちろん壱岐島についてすぐに足を運んだのだが、運悪く参道は海の中だった。

「季節はもちろん、日によっても潮の満ち引きは違いますからね。まさに自然のリズムですよ。チャンスがあればまた行けばいい」と宮司さん。潮の満ち引きを起こすのは月の引力だ。私たちの短い旅のスケジュールに合わせて都合よく参拝しようなんて、浅はかだった。

島の東側、海に突き出るようにしてある竜神崎は島の絶景のひとつ。断崖にたてられた龍蛇神神社は、1985年に出雲神社より龍蛇神を迎えて祀られたといわれているそう。周辺は冬でも足元に鮮やかな緑が広がり、神秘的な雰囲気

春の嵐というのだろうか、風が強く、なかなかすっきりとは晴れない3泊4日の旅だった。博多へ戻るフェリーに乗船するため車を走らせていた最終日の午後、薄曇りだった空が晴れ渡り、島に来て初めて太陽が顔を出した。

「遠回りになるけど、ちょっと寄ってみようか。フェリーにはまだ間に合うし」

小島神社が見える堤防の上に立つと、まさにいま潮が引き、島へと続く参道が海の中から現れるところだった。

苔むした参道が続く熊野神社。足もとには小さなスミレが咲いていた

あるいは人は、こんな瞬間に神様の存在を感じたのかもしれない。人の手や思惑が及ばない“自然”というリズム。ふだん生きているのとは異なる時間の流れに触れたとき、自分のなかにまったく新しい感覚が生まれる。それはときに信仰であったり祈りであったり、この際もう「生きている実感」といってしまってもいい。知らない世界に出合うことで、それまで感じようとすらしなかったものを美しく、尊いと思うこと。壱岐島で過ごした最後の40分間は、そう信じるのに十分な、豊かで荘厳な時間だった。

壱岐島 Local Spots & Foods

チリトリ自由食堂。芦辺漁港の目の前にある食堂。アジ出汁のカシミールカレー「アジミールカレー」など、地元食材やオーナーが釣った魚をつかった料理が自慢。フリーWi-Fiあり。食堂内には空き家などを紹介する情報発信スペースがあり、移住や二拠点生活を考える人のハブ的存在。来島者歓迎の各種ワークショップも。長崎県壱岐市芦辺町芦辺浦62
『魏志倭人伝』に登場する一支国(壱岐国)の王都を再現した原の辻遺跡を散歩して、弥生時代にタイムトリップ!
壱岐島は日本屈指のウニの名産地。老舗の「味よし」をはじめ、多くの店で新鮮な生ウニ丼を味わえる。タレの違いも楽しんで。生ウニのシーズンは4月中旬~10月中旬。
お土産にウニを買うなら昭和30年創業の「壱岐水産」へ。シーズン中なら生ウニ、それ以外の時期でも加工品や「うにめしの素」などが購入可能。
若き釣り師と海女さん夫婦が営む「みなとやゲストハウス」は新鮮な魚介をはじめ豪華な島料理が魅力。ゲスト全員で囲む夕食はいつも賑やか。
潮の干満など月にまつわることや航海安全などの願いを聞き入れてくれるという〈月讀神社〉。
江戸時代から続く勝本集落の朝市は毎朝。島の人々とのおしゃべりも楽しい。
遠浅の白砂ビーチが広がる大浜海水浴場。夏は海水浴も。
「洋食と珈琲の店 トロル」では壱岐牛のハンバーグをぜひ。ハンバーグサンドも美味。

▼リモートワークの基礎知識はこちら

●情報は、FRaU SDGsMOOK WORK発売時点のものです(2021年4月)。

Photo:Kei Taniguchi Edit & Text:Yuriko Kobayashi

Composition:林愛子

【こんな記事も読まれています】

徳島・阿南海岸サステナブル紀行① 日和佐の伊勢海老と海陽町の牡蠣

仕事とバカンスを叶えるワーケーションを初めてやってみた【海辺編】

ウミガメが産卵する屋久島の海を守れ! 環境省レンジャー奮闘記

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!