はじめまして。フランス・ニース在住のライター・コーディネイターの川人わかなです。これから隔月で南仏を中心にフランスのサステナブル事情、環境に対する考えや取り組み、社会に良いことをお伝えします。さて、もう少しで夏休みですね。フランス人といえばバカンス、バカンスといえばフランス人というように、休暇のために生きていると言っても過言ではないのがフランス人です。しかし、元々バカンス大国だったわけではありません。1982年に25日間の有休が保証されるようになり、年間5週間（！）の休暇が可能となりました。しかも企業側には従業員に休暇を取得させる義務があるため、有休の消化率はほぼ100％だとか。日本人からすると長期休暇は羨ましい限りで、私も渡仏当時は5週間も凄い！ と思っていたのですが、どうやらそんなに単純な話ではないようで…。この長い休みを限られた予算でいかに楽しく過ごすのかには色々な工夫がありました。

フランス人のバカンスは文字通り何もしない

VACANCEという言葉は、VACANT（何もない状態）に由来しています。まさしく「何もしない」のがフランスで言う休暇です。日本人は短い休みを充実させようと、予定を立てたり、色々な場所に行ったりしますよね。一般的にフランスでは、一つの場所に数週間滞在します。そのため、レンタルアパートも週単位貸し。プール付きの家を借りて泳いだり、芝生で昼寝をしたり、読書をしたり、海辺を散歩したり、市場で買い物をして料理をしたり。「なんだかバカンスって週末みたい」と思った方、正解です。バカンスはゆったりとした長い週末のようなもの。何か特別なことをするでもなく、観光をするでもなく、別の家で暮らすのが休暇スタイルです。急かされることなく、いつもよりゆっくりと過ごせるのが最高の贅沢。忙しい人々にとって「時間」が何よりのご褒美なのです。もちろん、観光地を訪れたり移動したりするのが好きという人もいますが、フランス人が「バカンス」という言葉でイメージするのはこのような過ごし方です。ピクニックや散歩といった地球に負担をかけないシンプルな過ごし方で、自分の心と身体の健康を持続可能に保つ。こういったバカンスの在り方こそが、サステナブルな生き方なのではないでしょうか。

「お互い様」で長いバカンスを楽しく安く過ごす

バカンスは家族が一緒に時間を過ごす機会でもあります。典型的な例だと、夏に3週間、秋か春に1週間、クリスマスに1週間の休暇を取り、そのうちの半分は両親か祖父母の家や別荘で過ごします。 フランスは平均的に日本よりも物価は高く、年収は低い国です。そんな経済状況で、数週間の宿泊費を賄うことは容易ではありません。そのため、友達や親戚との家の交換も一般的に行われており、自分の旅行中に鍵を渡して丸ごと貸すということも。日本だとちょっと抵抗があるかもしれませんが、長期休暇が定着している国ならではのお互い様精神でしょうか。「今年は我が家が行ったから、来年はどうぞ」なんていうように北フランスと南フランスの友人同士が家を交換したり、別荘に呼び合ったりすることもあります。 このシステムだと、ペットシッターを雇う必要もなく、植物の水やりや郵便物の受け取りもしてもらえたり、人がいるので空き巣に遭う確率も減るなど貸主にもメリットがあります。家賃を払っているのだから使わないのはもったいない、というところでしょうか。これはフランス人の休暇スタイルが「暮らす」ことをメインにしているから成り立つのかもしれません。 また、家にこだわり休暇を大切にする国民性から別荘を買う人が多く、家族何世代かで受け継ぐことも。田舎の家だとそこまで値段が高くなく、貯金代わりの資産として買う場合もあります。そのため、両親または叔母さんの別荘に1週間行ってくる、なんていう話は頻繁に聞きます。

【後編】はフランスの子どもの夏休みの過ごし方や、近年人気のエコホテルについて紹介します。

Written by
川人わかな/ライター・コーディネイター

フランス・ニース在住。東京にて編集者として勤務後、2011年に渡仏。フランスを拠点に取材場所はヨーロッパ全域に亘る。主なテーマは、サステナビリティ、食、アートなどのライフスタイル。ウェブサイトや広告、TVの撮影コーディネイトも手がける。著書『世界の夢のパン屋さん』（エクスナレッジ）　

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