Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

警報や注意報が出たら?気象予報士・斉田季実治に聞く「命を守る気象のこと」
警報や注意報が出たら?気象予報士・斉田季実治に聞く「命を守る気象のこと」
VOICE

警報や注意報が出たら?気象予報士・斉田季実治に聞く「命を守る気象のこと」

正しい気象の知識は、命を守るために欠かせません。知ってるようであやふやなアレコレを、気象予報士であり、防災士の資格も持つ斉田季実治さんに聞きました。

▼斉田季実治さんのインタビューはこちら

Q1 いま日本の気象はどうなっているの?

全国の猛暑日の年間日数は増加傾向にある(統計期間1910~2021年で100年あたり1.9日の増加)。最近30年(1992~2021年)の平均年間日数は統計期間の最初の30年間(1910~1939年)の平均年間日数と比べて約3.3倍に増加している。出典:気象庁「[全国13地点平均]日最高気温35℃以上の年間日数(猛暑日)」

簡潔に表現すると「気温が上昇して、大雨が降るリスクが高まっている」ということです。気象庁のデータによると、全国の日最高気温35℃以上(猛暑日)の年間日数も、全国の1時間降水量(50㎜以上)の発生回数も、年によって変動はあるものの過去より増加する傾向にあります。

気温が高いと空気中に含む水蒸気の割合が増え、雨雲が発生しやすくなります。すべてが温暖化の影響とは言い切れませんが、同じ場所に次々と積乱雲が発生して大雨を降らせる「線状降水帯」による災害が目立つことを考えても、気温の上昇は近年増えつつある大雨に密接に関係していると思います。

Q2 “大雨”って、どういう状態?

線状降水帯発生のメカニズム。次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなし、線上に伸びた地域に数時間にわたって大雨を降らせる

予報用語には「激しい雨」「猛烈な雨」などさまざまな表現があります。「猛烈な雨」とは1時間雨量が80㎜以上で、息苦しくなるような圧迫感のある状態。50~80㎜未満は「非常に激しい雨」で、滝のように降り続く状態です。雨量が50㎜を超えると災害の危険性が高まります。

また近年、大きな被害をもたらす「線状降水帯」は、そうした雨を数時間にわたって降らせる非常に発達した雨雲群のこと。気象庁は線状降水帯の発生が予想された場合に、半日程度前から「線状降水帯」というキーワードをつかって警戒を呼びかけます。

Q3 警報や警戒レベルなど情報が多すぎ!

従来、災害時には気象庁から警報、市区町村から避難指示など様々な情報が発信されてきましたが、受け手である住民に正しく危険度が理解されず、被害が出てしまったこともありました。こうしたことを受けて国は住民が災害発生の危険度を直感的に理解し、的確に避難行動がとれるよう、避難情報や防災気象情報などを5段階の「警戒レベル」を用いて伝えています。

また2022年には災害の危険度を地図上でリアルタイムに確認できる気象庁の「キキクル」も、「警戒レベル」の色分けに対応するよう統合されました。「黒(レベル5)=災害切迫/直ちに安全確保」「紫(レベル4)=危険/危険な場所から全員避難」といったふうに、警戒レベルの意味する状況と、とるべき行動を頭に入れておくと、情報を整理しやすくなります。

Q4 気象予報は進化しているの?

進化していますし精度も上がっています。現在、夕方の気象予報で翌日1㎜以上の雨が降るかどうかの予想は85%ほどは当たっています。気象庁では警報級の現象が5日先までに予想されるときには、その可能性を「早期注意情報(警報級の可能性)」として[高][中]の2段階で発表しています。

場合によっては命に危険が及ぶような災害が発生する可能性があります。数日先に起こるかもしれない災害についても情報が得られるようになったいま、ぜひそれを有効に活用して、自分で自分の命を守る行動につなげてください。

Q5 都市の大雨で命を落とすことはある?

冠水したアンダーパス。近くに川が流れていない場合でも、大量の雨に対して排水機能が追いつかず、処理しきれない雨水で土地や建物が浸水することも(内水氾濫)。浸水害とも呼ばれ、とくに市街地などで発生する傾向にある

アスファルトの多い都市部では、水が地面に吸い込まれず、低い場所に集まる傾向にあります。これまでにも地下街が浸水し、閉じ込められた人が亡くなるという事例もありました。道路や鉄道の下をくぐり抜けるように通っているアンダーパス部も雨水が集まりやすい場所。車で通行しようとして冠水すると、命に危険が及ぶこともあります。

Q6 山のない都会では土砂災害はない?

土砂崩れや崖崩れと聞くと、山や谷で起きるイメージを持ちがちですが、ちょっとした傾斜地でも土砂災害の危険性はあります。都市部でも傾斜地や、山を切り崩してつくった住宅街は意外と多く、ハザードマップで見ると土砂災害警戒区域に指定されている場合もあります。自分が住んでいる場所、その周辺の地形がどうなっているか、確認してみてください。

Q7 台風情報の読み解き方は?

白い円が「予報円」。赤い円が「暴風域」で、そこから伸びている赤い線の範囲が「暴風警戒域」、黄色の円が「強風域」をそれぞれ示している

気象情報などで目にする台風進路図は4つの要素で構成されています。「予報円」は台風の中心が12、24、48、72、96、120時間後に到達する可能性がある範囲を円で示したもので、台風の中心が70%の確率で入ると予想される範囲を示しています。これは台風の大きさを表しているわけではありません。

次に「暴風域」と「強風域」ですが、前者は平均風速25m/s以上の風が吹いている領域。この中では屋外での行動は極めて危険で、屋内でも停電の恐れがあります。後者は平均風速15m/s以上の風が吹いている領域です。

最後に「暴風警戒域」ですが、これは台風の中心が予報円の中に進んだとき、暴風域に入る恐れのある領域を指します。台風予測の精度は年々向上していますので、情報を正しく読み解いて、適切な備えをするように心がけてください。ベランダの鉢植えなど、風で飛ばされて窓ガラスを割ってしまうようなものは、台風が近づく前日には屋内に入れましょう。

Q8 雷や竜巻注意報が出たら、どうする?

雷注意報が出ただけで屋外での活動を控える必要はありませんが、もし雷鳴が聞こえたら要注意。雷が落ちる危険性があると思って、屋外での活動は控えましょう。雷は高い所に落ちる傾向がありますので、高層の建物がある都市部では人間に落ちる危険性は低いです。ただグラウンドなど開けた場所では人間に落ちることも。木に落雷し、それが人間に飛び移って感電することもあります。雷が鳴っているときは、絶対に木の下で雨宿りをしてはいけません。

竜巻は人に直撃しなくても危険です。風に巻き上げられたものや、飛散したガラスが当たってケガをしたり命を落としたりする可能性がありますので、頑丈な建物の中へ避難するようにしましょう。

PROFILE

斉田季実治 さいた・きみはる
1975年生まれ。テレビ局の報道記者を経て、気象の専門家の道へ。2006年からNHKで気象キャスターを務め、現在は「ニューウオッチ9」、「明日をまもるナビ」などに出演。著書に『空を見上げてわかること』(PHP研究所)など。

●情報は、『FRaU SDGs MOOK 話そう、気候危機のこと。』発売時点のものです(2022年10月)。
Photo :Yu Inohara Styling:Akane Kitsunai Hair & Make-Up:Rumiko Koike Text & Edit:Yuriko Kobayashi Cooperation:NHK Global Media Services
Composition:林愛子

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!