なぜ徳島は”もっとも女性が出世する県”なのか? 「あわわ」の女性会長が解説!
いまも大自然が残る徳島県は、住民、自治体、企業が一丸となって、人にも地球にもやさしくあるための知恵を出し合い未来に進んでいます。徳島の女性「阿波女(あわおんな)」は、伝統的に働き者で明るく、自立心旺盛といいます。そんな阿波女スピリットを胸に大活躍する地元生まれ、地元育ちの「あわわ」会長・坂田千代子さんを紹介します。
管理職の4割が女性。
そんな地域を目指す
23歳で徳島の出版社「あわわ」に就職してから、その道ひと筋。坂田千代子さんは現在、徳島市に本社を置く出版社・あわわの会長であり、徳島経済同友会初の女性代表幹事としても注目されている。
「高校では写真部で、出版社へのあこがれがありました。3年生のとき試験で悪い点数をとったのが悔しくて、将来は出版社で写真を活かして活躍するぞと心に決めたことをよく覚えています」
高校卒業後は東京の短大で写真を学び、フォトスタジオでアシスタントをしていた坂田さん。創刊2年目だったタウン誌『あわわ』で編集者を募集していると耳にし、Uターン就職した。しかしオフィスはオンボロアパートの一室で、月給は4万円だったという。
「就職先として考えたら、ふつうは絶対に選びませんよね(笑)。でも、私にとってはチャンスだと、編集者兼写真家としてがむしゃらに働きました。すごく楽しかったです」
仕事ぶりが認められ、入社3年目に編集長に就任。出産のため一度は退職するが、復職してからは制作部や営業部の仕事もこなし、社員として初の取締役部長も経験。その後、44歳で社長に抜擢された。
「ほかと比べれば性差が関係ない職業だったから、女であることで苦労した経験はないですね」
実際、坂田さんを節目節目で重要な役職に導いてくれたのは、いつも男性だった。
「阿波女の活躍には阿波男のサポートも必要だと思うんです。どれだけ女性が頑張っていても、それを認めてくれる人がいないと。阿波男は度量が大きい。県外に仕事で出るようになって、そのことを痛感しています」
2018年、徳島経済同友会の代表幹事に女性として初めて就任。坂田さんの役割は、阿波女というキーワードとともに、徳島がどれほど女性にとって働きやすい地域かを発信することだ。
「徳島が日本でも有数の女性社長が多い県であることは知られていますが、もっとうれしかったのが、女性の管理職比率が全国で初めて2割を超えて1位となったことです。女性社員が多いということはあっても、管理職は男性ばかりという企業がまだ大半というなかで、これはとても誇らしいです」
経済同友会の視察で訪れたフィンランドで、「ネウボラ」という子育て支援策に触れた。妊娠、出産、育児と、子どもの就学前までの間、ひとりの保健師が継続してサポートするという仕組みだ。
「子どもは社会で育てるという意識があるんですね。たとえ若くても、シングルマザーでも、出産をあきらめないでいられる。徳島もそうありたいんです。保育園も病院も多いですし、女性が安心して働ける土壌があると伝えていきたい」
経済同友会の「阿波女」活躍推進委員会として、目標は女性の管理職比率を4割にすること。阿波女代表、坂田さんの夢は尽きることがない。
PROFILE
坂田千代子 Chiyoko Sakata
1959年徳島市生まれ。1983年に徳島の出版社「あわわ」に入社後、同社の成長に貢献。2003年に代表取締役、2012年から現職の会長に。自費出版を手がける「アニバ出版」の代表も兼任している。2018年に徳島経済同友会で初の女性代表幹事に就任した。著書に『阿波おんな元気語録』(ANIVA BOOKS)。
●情報は、FRaU S-TRIP 2021年12月号発売時点のものです。
Photo:Hirotaka Hashimoto Text:Nobuko Sugawara
Composition:林愛子
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