夏の京都で宇治茶三昧!「フェアフィールド・バイ・マリオット・京都みなみやましろ」を拠点に!!
地域の特産品やご当地グルメが集結する「道の駅」は、旅行者はもちろん、地元の人びとが集う一大拠点になっています。「フェアフィールド・バイ・マリオット 道の駅ホテル」は、全国各地の道の駅に近接して2020年から順次オープンし、北海道から九州まで29ホテルを展開しています。今回は京都府でただひとつの“村”、相楽郡南山城村(みなみやましろむら)にある「フェアフィールド・バイ・マリオット・京都みなみやましろ」にチェックインして、この地に来ないと体験できない「お茶の京都」を満喫してきました。
酷暑にピッタリ! 摘みたての茶葉で淹れる水出し宇治茶
千年の都・京都といえば神社仏閣や町家、あるいは碁盤の目に整備された「まち」をイメージする人が多いだろう。けれども京都駅から車で30分も走ると、豊かな田園風景が現れる。京都府内で唯一の村、南山城村は、奈良県や三重県と接する府の最南端に位置。丘陵地に緑の茶畑が広がる、かの有名な宇治茶の主産地だ。
2017年にオープンした道の駅「お茶の京都みなみやましろ村」は、お茶をつかったスイーツや茶そば、茶がゆなどが味わえることで人気。施設内レストラン「つちのうぶ」では、この村で生まれたものを大切にしながら、地域に伝わる食を提供している。
さっそく“村名物”と謳われた「お茶づくし御膳」を注文。ほうじ茶を煮出して炊いた茶飯の上に、抹茶の衣をまとった天ぷらが載った天重をメイン料理に、抹茶そば、抹茶ドレッシングの野菜サラダ、抹茶の葛餅(くずもち)と、とにかくお茶づくし! ほろ苦いお茶の葉の佃煮や、揚げた大豆に甘いタレをまぶした「大豆南蛮」などの小鉢がつき、滋味深い素朴な味わいにホッコリさせられる。

抹茶天重の天ぷら衣には、この村が主産地という宇治茶「おくみどり」を使用。お茶の香りとサクサク感がたまらない
ボリューム満点のお茶づくし御膳で、大満足! のはずだったが、レストランを出たところでスイーツコーナー「村茶屋」に出くわしてしまった。むむむ、「抹茶の冷やしぜんざい」に「むらちゃパフェ」、「抹茶ソフト」、「抹茶だんご」だと……。こ、これは素通りできない。ついつい「村抹茶ソフトクリーム」を注文したところ、濃い緑が、見た目からして濃厚な味わいを約束していた。ひと口食べてみると、抹茶のさわやかな香りと渋みが、甘〜いクリームと一体になって口のなかで溶けていく。後味はさっぱりの、なんとも味わい深いソフトクリームだった。

使用されている抹茶の量は、よそで売られている抹茶ソフトの倍以上だそう。さすが宇治茶の本場!
さらに宇治茶の世界に浸ろうと、道の駅から「茶農家体験ツアー」に出発。車で茶畑に向かうと、車窓から日当たりのいい斜面に広がる茶畑が見えた。山がちで丘陵も多い南山城村は、約9割が森林で占められている。日中と朝晩の温度差が大きい盆地の気候は、甘みのあるお茶づくりに適しているのだという。

京都の市町村では2番目に山地が多い南山城村は、かつては琵琶湖の底だったとか。古琵琶湖層の土は肥沃で、宇治茶の2〜3割がこの村で生産されている
筆者が訪れたのはちょうど新茶の季節で、やわらかくみずみずしい新芽を摘む「茶摘み体験」からスタート。茶畑を案内してくれたのは、日本茶インストラクターの丸田義之さんだ。丸田さんは畑の脇で、摘んだばかりのお茶っ葉を急須にいれ、お湯を注ぎ始めた。宇治茶の里で野点(のだて=野外で湯を沸かしてお茶を淹れること)とは、なんとぜいたくな! 青々とした葉を湯に浸しただけの新茶ティーは、日本茶というよりハーブティーのようで、豆のような青っぽい香りがする。これが、どうやっておなじみの日本茶に変わるのだろう? などと考えていると、丸田さんが残りの茶葉をフライパンで炒めはじめた。
「煎茶をつくる際には蒸してから手で揉んで茶葉に傷をつけ、お茶の成分が出やすくするんですが、茶畑体験ツアーでは炒めて熱を入れ、茶葉をやわらかくしていきます。次に、50〜60℃のぬるめのお湯を注いで完成。お茶は高温で淹れると、苦みが出てしまうんですよ。さあ、できました! 飲んでみてください」
丸田さんが手渡してくれたコップからは、先ほどのハーブティーふうのものとはまったく違う、日本茶の豊かな香りが立ち上ってくる。口に含むと、ほんのり甘くてフレッシュな風味が広がった。日の光を受けてキラキラ輝く茶畑の真ん中で味わう、つくりたて、淹れたてのお茶。なんともぜいたくだ。

茶畑の脇で茶葉を熱し、揉んで即席煎茶をつくる。さわやかな風と鳥の声が、フレッシュなお茶の味わいをさらにアップさせる
茶摘み&野点の一服を満喫したあとは、茶畑のオーナー一家が営む製茶工場へ向かう。お茶のいい香りが漂う「辻本製茶工場」では、茶農家3代目の辻本豊さんが、蒸した茶葉の状態を丹念にチェックしていた。
「茶葉を機械に入れてからできあがるまで、だいたい4時間くらいかかるのですが、蒸している時間が一番長い。蒸す工程で、味の8割方が決まるんです。蒸し時間の短いものが浅蒸し、その2倍ほど時間をかけてしっかり蒸したものが深蒸しの煎茶。茶葉は蒸してから揉み込んで水分を均等にし、最後にまた揉んで乾燥させます」(辻本さん)

右側は30分間、水出しした深蒸しの煎茶。「京都のお茶は一般的に金色透明なんですが、ウチは緑色鮮やかな深蒸しのお茶をメインにつくっています」(辻本さん)
工場内で、深蒸しの水出し煎茶をいただく。まるで昆布ダシのような、濃厚な旨みにビックリ! 続いて辻本さんが、60〜70℃のお湯で淹れた浅蒸しの煎茶を手渡してくれた。こちらは、ほんのり甘くコクがあり、渋みのないやさしい味わい。深蒸しと浅蒸し、まったく違う風味で、日本茶の奥深さを再認識させられた。
「これまで、茶農家のかき入れどきは新茶の時期で、茶問屋の買付価格が評価のすべてでした。道の駅『お茶の京都 みなみやましろ村』ができたことで、通年、直接お客さんに販売できるようになった。『おいしかったよ』『また来年も買うからね』などと、ウチのお茶を飲んだ方の声がダイレクトに聞けてうれしいですね。見た目、形状、色、香りともに納得できるものがつくれたときはいつも、みなさんにお届けするのが楽しみでなりません」(辻本さん)
忍者のふるさと、伊賀に伝わる「豆腐田楽」
村人と訪れる人々をつなげる拠点として機能する道の駅、お茶の京都 みなみやましろ村に隣接するホテルが、「フェアフィールド・バイ・マリオット・京都みなみやましろ」だ。現在、全国に29あるフェアフィールド・バイ・マリオット 道の駅ホテルだが、一番の特徴は館内にレストランを設けていないこと。宿泊者が周辺のレストランや食堂、居酒屋などを利用することで、地域の人々と触れ合い、地元の味を堪能できるように、という狙いがあるそうだ。地元の飲食店がつくる予約制の「朝食ボックス」も好評で、各地域の名物がギッシリ詰まった手づくりの味が楽しめる。

ホテルと道の駅とは専用歩道でつながっている。周囲の丘には、青々と輝く茶畑が広がる
フェアフィールド・バイ・マリオット 道の駅ホテルでは、水族館でのバックヤードツアーや田植え体験、日本酒の試飲イベントにワイナリーツアー、和紙の紙すき体験など、それぞれの地域と連携したアクティビティを用意している。ここ京都みなみやましろでは、日本茶インストラクターによる日本茶イベントなどがおこなわれている。

シンプルながら設備が整った客室。フェアフィールド・バイ・マリオット 道の駅ホテルは全国で客室デザインが統一されており、どこかを利用した経験があれば、初めての地でも、わが家に帰ってきたようにくつろいで過ごせる
チェックインを済ませ、伊賀忍者の発祥地、三重県の伊賀エリアに向かう。じつは京都と三重県との県境は、このホテルから東400mほどのところにある。伊賀町は、まさにお隣さんなのだ。今日のお目当ては伊賀が誇る名店「田楽座 わかや」。創業200年以上の老舗で、地域の名物、炭火焼きの「豆腐田楽」が味わえる。

巧みな手つきで豆腐に味噌ダレを塗っていく女将の吉増知英子さん。「当店の創業は江戸末期、主人は11代目になります。時代は変わっても、大事な芯の部分は変えなかった当主たちのバランス感覚のおかげで、いままで続いてきたのでしょう」(知英子さん)

炭火でこんがり焼かれた豆腐田楽。豆腐も味噌ダレも、木製の器までもすべてオリジナルだ
有機栽培の大豆から手づくりしたふわふわの豆腐を、地元産の炭で焼いた田楽は、ごはんにも酒にも合う香ばしく深い味わい。吹き抜けのある店内で、豆腐田楽に伊賀米、伊賀牛のステーキ、地酒に地ビールと、名物を堪能できた。山に囲まれた伊賀では、豆腐が希少なたんぱく源として重宝されてきたという。そしてこの地形が、忍者の隠密行動にうってつけだったという話も。店の周辺には伊賀上野城や忍者博物館などのもあるので、ぜひ併せて訪問したい。
──次回、奈良編に続きます──
Text & Photo:萩原はるな
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