3枚下ろしができる園児も! 鹿児島「ひより保育園」の自発力教育
私たちのふだんの行動軸をベースに、未来を変えるアクションを集めました。毎日の暮らしのなかでできることから新たな世界での体験まで、できそうなこと、やりたいことから探してみましょう。今回は、生きる力がつく教育についてご紹介します。
保育園での料理を通して、
「生きる力」を身につけていく
切り身の魚がもとはどんな形をしていたのか、知らない子どもは多い。鹿児島県の「ひより保育園」では、食を身近に感じられるよう、ガラス張りの給食室を園の中央に設け、日常的に園児が給食の下ごしらえを手伝う。卒園までに魚の3枚下ろしができるようになった子もいるという。園長の白水純平さんは、食を通じた教育の大切さについてこう話す。
「園では野菜を育て、調理して、食事をして、野菜くずを堆肥にするまでの過程をすべて経験します。そうした食の循環を体験し、全体像が見えると、自分がやっていることの意味がわかったり、取り組むうえでの目的意識が変わったりします」
必ずしも料理が得意な子にしたいわけではない。食べることは身近であり、題材として適しているからだ。
「子どもたちが社会に出るとき、いまの社会とは違っているはず。幼少期に大切なのは、知識や技術を学ぶことより、好きなことに没頭した経験です。自分たちでどう過ごすか考え、意見が食い違っても話し合うようにしてもらっています」
年間の行事も12~3月は空白にしており、年長の園児たちが園生活をどう過ごしたいかを自ら計画する。ある年には、年長児が年少・年中児たちを連れての「お別れ遠足」を企画し、バスのチャーター費を園児自身で稼ごうと、自分たちでランチ販売もおこなった。
「メニューや看板をつくるためにと、自発的に字の練習やお金の計算を覚える子がいました。実体験から学ぶと吸収のスピードも速いですし、得意な子が他の子に教えるようになります。大人は介入しすぎず、子どもたち自身で園活動を自治していくのが理想。それこそが、生きる力を育てることだと思います」
●情報は、FRaU2022年8月号発売時点のものです。
Text & Edit:Shiori Fujii
Composition:林愛子