辻山良雄が選ぶ「お金を疑うことを学べる3冊」
自分だけが心地よくなるためのお金ではなく、社会や環境、その先にある未来をも豊かにするお金へ。お金のつかい方やその流れを変えることは、世界のさまざまな課題解決を後押しする力になると多くの人が気づき始めています。今回は、お金の本当の姿を知れる本を、書店「Title」店主の辻山良雄さんに選んでいただきました。
「私たちはお金をつかっているようで、その実、つかわれているのかもしれません。お金だけでつながっている関係は、冷たく、孤独です。また、少しでもお得にという消費者の姿勢は、社会にも影響を与え、結果コストを最小限に抑えた粗悪品が出回ることに……。お金を疑ってみることで、自分らしい生き方が回復できるのだと思います」(辻山良雄)
『エンデの遺言-根源からお金を問うこと-』
河邑厚徳+グループ現代/著
『モモ』などで知られる、ミヒャエル・エンデの思想が語られる。エンデが物語に託したのは、人がお金の支配から脱し、自らの「生」を回復すること。自分自身を生きる勇気は、皆の心に棲んでいると思いたい。(講談社+α文庫)
『うしろめたさの人類学』
松村圭一郎/著
エチオピアから帰国した人類学者のみた日本論。現代の極端な自己責任論は、お金の持つ弊害なのかもしれません。エチオピアではまだ一般的である「贈与」という行為の豊かさに、行き詰まる社会へのヒントがある。(ミシマ社)
『ゆっくり、いそげ-カフェからはじめる人を手段化しない経済-』
影山知明/著
利用し合うのではなく支援し合う関係で、地元の経済を活性化させるという「理想」に挑む、著者の影山さん。お金至上主義の価値観に立ち向かう姿やその取り組みは、お金に囚われてしまった現代人の支えとなる。(大和書房)
PROFILE
辻山良雄 つじやま・よしお
書店「Title」店主。大手書店を退職し、東京・荻窪に新刊書店「Title」をオープン。カフェや美術館のブックセレクションを手がける。著書に『本屋、はじめました』(苦楽堂)がある。
●情報は、FRaU SDGs MOOK Money発売時点のものです(2020年11月)。
Text:Marie Takada Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子
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