名古屋に登場!「再エネ電力で焼きあげる」パン屋さん
東海地方をメインとする電気工事業者のフジサービスが、ベーカリーをスタート。2022年4月と12月に、名古屋市内に2軒の「脱炭素経営のパン屋さん」をオープンさせました。郊外にある1軒目は店舗の屋根にソーラー(太陽光)パネルを設置、市の中心部にある2軒目は再生可能エネルギー由来の電力を購入して運営しています。同社の脱炭素に向けての取り組みと、将来像について取材しました。
「まちの電気屋さん」が、なぜベーカリーを?
フジサービス代表の伊藤健太さんが地元・名古屋で電気工事業をはじめたのは約20年前。家庭や事業所の電気工事を請け負う「まちの電気屋さん」からスタートし、いまや太陽光など再生可能エネルギーの発電所を建設して販売などを行う電気事業者としての顔も持つ。そんな同社がベーカリー業への進出を考えはじめたのは、2020年のことだった。
「電気屋が、なぜパン屋さんを? とよく聞かれるのですが、経営多角化の一環として思いついただけなんです。まわりにパン好きの方が多かったり、メインバンクの担当者がパン好きだったりという巡り合わせで、動きはじめたのが正直なところです」(伊藤さん)
「電気事業者がパン屋をやるなら、何か特徴がなければ」と考えた伊藤さん。2022年4月に、太陽光で自家発電した電力でパンを焼く1号店「パン屋 SUN to F」(以下、サントエフ)をオープンさせた。キャッチコピーは「太陽からの焼き立てパン」。何と温かく、夢のある響きだろうか。
ソーラーパネルで発電、「溶岩石オーブン」でパンを焼く
サントエフでは、店舗の屋根にソーラーパネルを設置。そこで自家発電した電力の一部を店で消費することで、CO2削減に貢献している。
同店の発電量は年間約6万kw。年間100万円前後の電気代削減につながるという。店内に設置された約40インチのモニターに「本日の発電量」「本日の発電で焼けたパンの数」「今までの発電で減らしたCO2の量」を表示するなど、サステナブルな取り組みを可視化することで、着実にファンを増やしているようだ。
「開店当初、当店の取り組みについて興味をもってくださるお客さんが多かったため、モニターをつかって説明していました。開店から9ヵ月たったいまでは、『太陽光発電で焼いたパン』の物珍しさはだいぶなくなったようで、純粋に当店のパンが好きでリピーターとなってくださる方が増えています。喜ばしいことです」(同社ベーカリー事業部長・村瀬元紀さん)
同店では、一般的なガス燃料の石窯焼きパンに負けない焼きあがりを実現するために、蓄熱効率が非常に高い桜島の溶岩石をつかった特製のオーブンを使用。焼きあがりの時間を管理しながら毎日数回パンを焼き、常に焼き立てを店頭に並べられるように努力している。
「高品質な商品を日常の価格で提供することにもこだわっています。パンに入れるカスタードや餡などは、業務用のものを購入すると1㎏1000円するところ、店で手づくりすれば700円程度でつくれる。おいしさがアップするだけでなく、経費の削減にもなり、より安く、いいものを提供できるのです。焼き立てをその場で味わっていただけるよう、90坪の店内にはイートインスペースを設置、本格的なコーヒーマシンも導入しています」(村瀬さん)。
オープン9ヵ月で、月の売り上げは平均1500万円ほど。順調に地元のファンをつかんでいるようだ。
フジサービスは、2022年の12月14日に2店舗目「BOULANGERIE SUN(ブーランジェリー・サン)」をオープンさせた。立地は、名古屋市千種区のマンション1階。今度は屋根にソーラーパネルを設置できない。そこで同社が選んだ道は————。
――後編に続くーー
text:奥津圭介
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