『マシンガンズ』滝沢率いる“ごみ&防災”芸人が指南!「災害に備えて、いますぐできること」
毎年9月は防災月間。“ごみ清掃芸人”こと『マシンガンズ』の滝沢秀一さんによると、災害にはごみが大きく関係しているといいます。9月のある日、滝沢さんは、防災士の資格をもつお笑い芸人のワタリ119さんと赤プルさん、お片づけブラザーズこと『六六三六』柴田賢佑さん&『ぐりんぴーす』落合隆治さんを集めて「防災芸人×ごみプロ芸人トークセッション」を開催。ごみと防災についてトークを繰り広げました。【後編】
なぜ「片づけ=防災」なのか?
東京・中野で開催されたイベント「防災芸人×ごみプロ芸人トークセッション」を主宰したのは、ごみ清掃人としてSNSやYouTubeでもさまざまな情報を発信しているお笑いコンビ『マシンガンズ』の滝沢秀一さん。元消防士で防災士のワタリ119さんによる“マイ防災バッグ”の紹介が終わったところで、同じく防災芸人の赤プルさんが登場した。
赤プル:(かなりの茨城なまりで)「チャイム」というコンビ名で夫婦漫才をやっている赤プルで〜す! 2017年に防災士という資格を取得して、出身地の茨城県を中心に防災活動アドバイザーもやっています。警察に追われるヤンキーだった私が、敵だった県警と一緒にイベントに出ちゃうとは、人生わかんないもんです!

茨城県出身の「防災芸人」赤プルさん。2017年に防災士を取得、2019年より整理収納アドバイザーの資格を活かして「お片づけサポート」をスタート。整理収納や防災についての講演なども担当している
滝沢:そっか〜、昔の赤プルはずいぶん悪かったんだよね〜。でも、そんな赤プルが、なんで防災士になろうと思ったの?
赤プル:ちょうど10年前に起きた関東東北豪雨で鬼怒川(きぬがわ)の堤防が決壊したときに、浸水した姉家族が家が取り残されて救助されるとか、地元が大変なことになったんですよ。ボランティアとしていろいろ手伝ったんですが、「被災地を支援するよりも、事前に防ぐ方がいんじゃね?」と思って防災士の資格を取りました。
滝沢:さっきオレが「災害時には大量の災害ごみが出る」っていう話をしたんだけど、片づけと防災ってすごく関係があるんだって?
赤プル:そうなんですよ! もともと私、お片づけが好きでそっちの資格も持ってるんですけど、片づけることは防災につながるんです。片づければ片づけるほど、家が安全になるんですよ!
ごみ屋敷問題もお任せ!の「お片づけブラザーズ」
滝沢:片づけの話が出たところで、最後のゲストを紹介しましょうか。お片づけブラザーズの、『ぐりんぴーす』落合と『六六三六』柴田です! そもそもお片づけブラザーズって、どんな活動をしているの?
落合:片づけやごみ屋敷の清掃、遺品整理などをやっている団体です。ごみ屋敷はね、なかなか壮絶ですよ。片づけていくうちに、ごみの山の中から扉が現れてきて、屋敷の住人もすっかり存在を忘れてた部屋が見つかることもあるんですから。「清掃前に『間取りは5Lです』って聞いてたけど、ホントは6Lなんじゃん!」みたいな。そこまでいかないケースでも、階段の半分が不要なもので埋めつくされていて危ないとか、よくあります。
ワタリ:あ〜、それはマズいな。階段にものが多いと、火災なんかのとき倒れた人の緊急搬送とかできないっすよ! 元消防士だから断言できます!
赤プル:ね。だから私が何回も言うように、片づけ=防災なんですよ。
柴田:僕たちは片づけで出てきた物品の、買い取りやリユースもやっています。それによって、処分するごみが減りますからね。ものの多い家って、存在すら住人に忘れられている未開封の商品がたくさんあるんですよ。ボク、ヤフオクの出品バイトで年間1000件ぐらい売ってた経験があるんで、黙ってはいられません。
落合:ごみの中から価値がありそうなものを見つけては、その家の住人に「これ、買い取っていいですか?」と提案するんです。住人にとっても、単なるごみが思いがけずおカネになるから、すごく喜んでもらえます。柴田って、すんごい目が利くんですよ。お片づけ中に出てきたヴィンテージのリカちゃん人形を買い取って、それが11万2580円で売れたこともあるんです!。

左から赤プルさん、柴田さん、落合さん、滝沢さん、ワタリさん。それぞれ防災やごみ清掃&処分のエキスパートとして、さまざまな活動をおこなっている
柴田:そんな細かい金額まで言わなくていいよ。お片づけブラザーズを立ち上げたのは去年の11月。さっそくボクたちにできることは何かと考えて、震災と大雨の被害にあった石川県の能登に入ったんですよ。実際に行ってみたら、めちゃめちゃ大変! 部屋のお片づけ以前に、側溝の泥や庭の泥を何とかしなくちゃならなかった。ぜんぜんマンパワーが足りてないんですよね。ボクらが行ったら「若い人がきた! ありがとう!」なんて大喜びされて、「何かすいません、今年40歳で、たいして若くないんですけど」って恐縮しちゃいました。
ワタリ:ボクも2人とは別に能登に行きましたけれど、ボランティア活動ではやはり力仕事が多かったですね。ライフラインが崩壊してたんで、井戸を掘りまくりました。あのへんって、掘ったらすぐ水が出るんスよ!

滝沢さんに無茶ブリされ、急きょネタを披露するお片づけブラザーズのふたり
滝沢:珠洲市(すずし)は一連の災害で、132年分のゴミが出たっていうよね。崩壊した家は、まるっとごみになっちゃう。
落合:倒壊した家の梁(はり)なんかの廃材を、薪(まき)ボイラーで燃やしてお湯を湧かしている銭湯があるんですよ。「あみだ湯」っていうんですけど、廃材をごちゃごちゃにせずに、どの家から出たものかちゃんと記録して分別しておいて、「今日のお湯は◯◯さん家(ち)の廃材で湧かしてます!」なんて掲示されてるんです。こんな緊急時でも、最後の最後まで、ものを大事につかっている。ものをどう弔(とむら)うのか、ということの大切さを痛感しました。
滝沢:そういう価値観を多くの人が持てば、ごみ問題の大部分は解決するような気がするなあ。じゃあ最後に、防災のプロの赤プルとワタリに質問! 南海トラフ地震が遠くない将来に起こるといわれているいま、われわれが最初にすべきことって何だと思う?
赤プル:大きい地震がおこったら、パニックになるのが一番ダメ。まずは「落ち着いて!」と自分に言い聞かせながら、深呼吸をするの。絶対に、あわてて外に出ないで! とりあえず、家の中でラジオなんかの速報を聴いて、震度や震源地をチェックしましょう! トイレは「柱に囲まれた狭い空間だから安全だ」なんていわれますが、出口が変形して扉や窓が開かなくなって閉じ込められる危険があるんです。だからトイレには逃げないで! 家の中で一番安全なのは、実は玄関と廊下なんです! 災害時は避難通路になるので、日ごろから廊下には何も置かないでね! 玄関に割れものを置くのもNGです!
ワタリ:災害時は、自分の身を守ることが最優先! 消防士時代に先輩によく言われたのは、「災害時に何が置きうるかを想定して、平時にチェックしておけ」と。たとえば通勤や買い物なんかで毎日歩く道。ボクは常々、まわりの建物や川の位置や状態をチェックしつつ、「いま、ここで大地震があったらどうなる?」とシミュレーションをしています。窓が多い建物から割れたガラスが降ってくるかもしれない。通勤ルートのどこに防火水槽、消火器があるか。その位置を確認して常に意識しておく。そうやって、不測の事態に対応するイメージトレーニングをしておくことが、何より防災だと思います。イチイチキュウ〜!!(119を大声で叫ぶのがワタリの持ちネタ)
Photo & Text:萩原はるな
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