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シカを「憎むべき害獣」から「町の財産」に変えたハンターの試み(前編)
シカを「憎むべき害獣」から「町の財産」に変えたハンターの試み(前編)
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シカを「憎むべき害獣」から「町の財産」に変えたハンターの試み(前編)

ニホンジカによる深刻な農作物被害に悩んできた岩手県・大槌町で、シカを駆除しながら、奪った命を利活用して町の財産にしようと挑戦する事業者がいます。食肉加工だけでなく、大槌町発の手仕事と融合させたシカ革アイテムを製作、販売。町内の飲食店や事業者を巻き込み、その活動は徐々に裾野を広げています。

ーーー後編はこちらーーー

岩手で突出する農作物のシカ被害

岩手県三陸沿岸の大槌町は、昔から漁業が盛んな港町だ。沿岸部でありながら町の大部分に山林が広がる、緑豊かな町でもある。そんな大槌町の広大な山林に生息し、農業従事者たちの悩みの種となっているのが増加したニホンジカの存在だ。

令和2年度の東北地域の野生鳥獣による農作物被害金額13.8億円を県別に見ると、山形県(4億8000万円)、岩手県(4億2000万円)、福島県(2億円)、宮城県(1億9000万円)、青森県(6000万円)、秋田県(3000万円)の順だが、シカだけでくらべてみると、岩手県(2億2749万円)、宮城県(1702万円)、福島県(717万円)、秋田県(49万円)、青森県(44万円)、山形県(3万円)と、岩手県の被害の深刻さが見えてくる。

※東北農政局「東北地域の農作物被害概況(令和2年度)」「野生鳥獣による農作物被害状況(令和2年度)」より

平成28年度以降、岩手県は毎年1万頭以上のシカを捕獲している。

もちろん大槌町も例外ではない。「『害獣』とされる動物は、シカのほかにツキノワグマやハクビシンがいますが、農作物の被害はシカが一番多いです」と語るのは、町内でシカ肉加工工場「MOMIJI」を営む兼澤幸男さん。自身が中心となって立ち上げた「大槌ジビエソーシャルプロジェクト」の一員として、害獣を町の財産に変えようと奮闘する現役のハンターだ。

「いま、岩手県全域に生息しているシカは、大船渡市の五葉山にいたシカが繁殖し、広がったものだといわれています。僕の肌感覚ですが、シカは年々増えているようです」

シカへの憎しみからハンターの道へ

兼澤さんは震災を機に地元の大槌町に戻り、ある思いからハンターを志した。

「シカへの恨みです。父方の実家が農家なので、以前はお米を買ったことはありませんでした。でもある年、シカの被害がひどくてお米が収穫できないと聞かされたんです。町ではシカに新芽を踏み荒らされたり、収穫前の野菜や果実を食べられたりしたことが原因で、農業をやめてしまう人もいるんですよ。そういう状況を何とかしたくて、有害鳥獣駆除をするために狩猟免許を取得しました」

ツキノワグマ、イノシシ、ハクビシンなどの場合、目撃者が役所に連絡→役所から猟友会に連絡→猟友会が捕獲に動くという流れが一般的で、狩猟期間が定められている獣も多い。しかし大槌町では、シカが増えすぎてしまったため、ハンターがいつでも捕獲できるよう常に狩猟許可が出ているという。

「有害鳥獣駆除に狩猟免許とは別の免許や届け出は必要ありませんが、役所から捕獲の委託を受けなければなりません。猟友会のなかに委託を受けた『鳥獣被害対策実施隊』メンバーがおり、駆除はその人たちが行っています」

令和2年度の大槌町のシカの捕獲実績は342頭。兼澤さんは同年260頭を捕獲した。

自身も鳥獣被害対策実施隊のメンバーとしてシカの捕獲をしていた兼澤さんだったが、キャリアを積むにつれ、奪った命について考えることが多くなったと語る。

ーー後編は、兼澤さんの思いを具現化したジビエ事業についてーー

photo: MOMIJI株式会社、大槌刺し子 text:阿部真奈美

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