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TOKYO商店街   再生ストーリー1                 「つながり」を生み出し続ける「ハッピーロード尾山台」のプロジェクト(前編)
TOKYO商店街   再生ストーリー1                 「つながり」を生み出し続ける「ハッピーロード尾山台」のプロジェクト(前編)
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TOKYO商店街 再生ストーリー1 「つながり」を生み出し続ける「ハッピーロード尾山台」のプロジェクト(前編)

東京・世田谷区の尾山台は、碁盤の目に整備された住宅街と、東急大井町線・尾山台駅を中心に南北に広がる商店街がある閑静な街です。そんな地域を盛り上げているのが「おやまちプロジェクト」。商店街「ハッピーロード尾山台」を中心に、地元住民、小・中学校、大学が垣根を越えてゆるくつながり、さまざまな活動に広がっています。「心地よく住み続けられる街づくり」を目指した取り組みの継続の秘訣は、課題解決より楽しさ、つながりを優先する姿勢でした。

後編はこちら

洋品店の3代目が抱いた街の将来への不安

石畳と街路樹が美しい商店街、ハッピーロード尾山台。ここで70年近く商売を続けている「タカノ洋品店」の3代目・高野雄太さんは、おやまちプロジェクトの代表理事だ。彼が、同じく理事を務める東京都市大学の坂倉杏介准教授と出会ったのは、2016年11月のことだった。

「そのころ、商店街から老舗の店がどんどん消えていって、全国チェーン店や美容院などサービス業の新規店ばかりが増えていました。地域を代表する商店街が没個性になって魅力が落ちてしまうと、街自体の魅力も消えてしまうのではないか。その危機感から私なりに取り組みを行っていましたが、ある日、『そうだ、街の将来を一緒に考えてくれる先生を探そう』と思い立ち、地元の東京都市大学を訪ねたのです」(高野さん、以下同)

そこで出会ったのが都市政策学部の坂倉准教授だった。2人は意気投合、翌年4月には「ホコ天ゼミ」をスタートさせた。

 

「ハッピーロードは毎日、夕方4〜6時は歩行者天国になります。坂倉先生のゼミもちょうどその時間帯に行われていましたので、『そうだ、ゼミ室を飛び出して、商店街で青空ゼミをやってみよう』と。ゼミの学生さんたちに商店街でフィールドワークをしてもらった後、私の店前に並べたパイプ椅子に座って、気づいたことを順々にマイクを持って話してもらう。すると、道行く人たちにも内容がよく聞こえるわけです。フィールドワークの結果を、みんなでシェアするようなホコ天ゼミになりました」

翌月には坂倉准教授がハッピーロードで「青空教室」を開催。地元の人たちを集めて「20年後、30年後の尾山台について考える」という内容だった。その話を聞きつけ、興味を持ったのが尾山台小学校の渡部理枝校長(当時)と、尾山台在住の神武直彦・慶應大大学院教授だ。2017年6月、2人は高野さん、坂倉准教授と尾山台小の校長室ではじめて顔を合わせ、その場で「おやまちプロジェクト」の発足が決まった。

街の子どもたちと大人が一緒になって街中でフィールドワークを行い、その歴史をリサーチする。これもプロジェクトの一環だ。
 

異なる属性の人たちを、とことん「つなげる」

「発起人となった坂倉先生、渡部先生、神武先生、私の4人とも尾山台が大好きで、街のために動きたいという想いは共通していました。ただ、それぞれにやりたいことが異なっていた。たとえば私は『商店街を中心とした地域活性化』、渡部さんは『キャリア教育の推進』を目指していた。そこで、それぞれのやりたいことを見据えながら、まずは『街のなかで人と人とがつながり、何かを学べる場をつくる』のを優先することにしたのです」

お金をかけて新しいものをつくるのではなく、歩行者天国と学生という「いま、あるもの」を活用して「ホコ天ゼミ」を生み出したように、各々がすでに持つリソースとネットワークを使って、新しい価値を生み出すことを意識したという。

2017年8月には尾山台の住民や学生を集めて「OYAMACHIデザインプロジェクト」という、尾山台の未来を考える勉強会を開催。翌年からは、酒を飲みながら街づくりやSDGsなどを学ぶ会「おやまちサロン」をスタートさせた。

「おやまちサロンは計4~5回はやったかな。この段階では発起人たちのネットワークやリソースを駆使して人を集め、なんとかイベントを開催していたという感じです」

「Barおやまち」の参加費はワンコイン。キャッシュオンで誰でも気軽に参加できる大人の仲間づくりの場だ。

これらのイベントを通じて、会社員と商店主、学生と高齢者など、ふだんはなかなか交流を持てない属性の異なる人たちの間に確実につながりができ、仲を深めていった。そしてその輪は、着実に広がっていく。

―後編に続くーー

text:奥津圭介

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